M.M ひぐらしのなく頃に解 皆殺し編


 この「ひぐらしのなく頃に解 皆殺し編」は、先に発売された「ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編」「ひぐらしのなく頃に 綿流し編」「ひぐらしのなく頃に 祟殺し編」「ひぐらしのなく頃に 暇潰し編」「ひぐらしのなく頃に解 目明し編」「ひぐらしのなく頃に解 罪滅し編」の続編となっております。その為レビューには「ひぐらしのなく頃に 鬼隠し編」「ひぐらしのなく頃に 綿流し編」「ひぐらしのなく頃に 祟殺し編」「ひぐらしのなく頃に 暇潰し編」「ひぐらしのなく頃に解 目明し編」「ひぐらしのなく頃に解 罪滅し編」のネタバレが含まれておりますのでご注意願います。

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※このレビューにはネタバレしかありません。本作をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。























































































シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
10 9 - 90 10〜11 2017/7/25
作品ページ サークルページ



<「信じる心が奇跡を生む。」それは幾つもの苦難を超えてきた部活動メンバーだからこそ言える魔法の言葉。>

 「鬼隠し編」からここまで7作連続でプレイしてきましたが、今回の「皆殺し編」で初めて涙が出てしまいました。物語の最後、真の黒幕が鷹野三四である事を突き止め彼女による終末作戦が実行されてしまいました。山狗の圧倒的な戦力に為すすべもなく殺されるはずの梨花を助けたのはやはり部活動のメンバーでした。それでも鷹野の高笑いと共に一人また一人とその命を散らしてしまい、最後梨花は意識があるままに綿流しされてしまいました。ですが、それでも部活動のメンバーは離れ離れになった訳ではありませんでした。死んでもなお一緒にいようとお互いを求めあった様子を見て、自然と涙腺が緩んでしまいました。それまで歩んできた軌跡の果てに待っていた皆殺しの結末。それでも部活動メンバーの信頼関係まで殺す事は出来ませんでしたね。これでもう迷う事はなくなりました。最後の「祭囃し編」に向かうだけです。

 正直内容が濃すぎて書きたい事が沢山あるのですけど、取り留めもなく書くと全然まとまらなくなりそうですのである程度焦点を絞って行こうと思います。この「皆殺し編」はこれまでの6つの編の総括にあたる内容でした。冒頭、いきなり梨花という存在が何度も何度もこの雛見沢の時間を繰り返しているという事が語られました。話していたことは因果律、つまり物事の結果には必ず原因があるという事です。ここで大切なのは結果と原因を正確に読み取る事、それぞれの編の情報を全て俯瞰することで見えてくるという事です。作中ではそれをルールX、ルールY、ルールZと分類しておりました。ルールXは疑心暗鬼、ルールYは強い意志によって必ず死ぬ存在、ルールZは園崎家による憂慮です。これらの環境が適合していてばそれ以外は関係ない、冒頭からこのひぐらしのなく頃にという作品の歩き方を教えてくれました。

 そしてそれらの因果を見届けながら何とかして自分が死なない道を見つけようと奮闘していた梨花。ですが何度挑戦しても目指すべきゴールにはたどり着けず、いつしか期待する事を諦めておりました。結局は五年目の祟りが起こってしまう、そして誰かが疑心暗鬼になってしまう、そして最終的には自分が死んでしまう。その繰り返しに生き抜く事を投げ出そうとしておりました。ですが、そんな運命を打ち破る存在がおりました。それが前原圭一です。切っ掛けはホンの些細なこと、玩具屋での部活動で、圭一は自分が行うゲームの内容をいとも簡単に変えてしまいました。こんな小さなことでも、梨花にとってはこれまで無かった大きな事でした。圭一なら、運命の袋小路を破ってくれるかも知れない。「罪滅し編」の様な誰も疑心暗鬼にならない結末を届けてくれるかも知れない。ここから梨花の静かな戦いが始まったのです。

 運命を変えてくれるかも知れない出来事は圭一だけに起こったわけではありませんでした。「罪滅し編」で狂気に駆られた竜宮レナ、その切っ掛けは父親のリナに対する妄信とレナと父親のコミュニケーション不足でした。ですがこの時のレナはきちんと父親と話し合い、2人自立して生きていこうと誓いました。レナが狂気に駆られる事は無くなったのです。「目明し編」で見せた園崎詩音の一方的な思い上がりもありませんでした。そして悟史との約束の通り、沙都子のお姉さん代わりとして仲良くする姿が見れました。何よりも詩音が部活動のメンバーにいるのです。これもこれまでになかった事でした。他にも「鬼隠し編」では言えなかったレナと魅音へのおはぎに対するお礼、「綿流し編」で出来なかった魅音への人形の手渡し、「暇潰し編」で達成できなかった赤坂との再会、これまで歩んできた全ての編の反省が活かされ、今度こそ運命の袋小路から逃れられると思いました。

 だからこそ、「祟殺し編」の再来のような北条鉄平の帰宅にはやりきれない思いになりました。どうしてここで沙都子が不幸にならなければいけないのか、また「祟殺し編」の再来になってしまうのか、そう思いました。ですがそうはなりませんでした。短絡的に鉄平を殺す、そうではなく正攻法で沙都子を救い出そうと動き始めました。ここからの流れは少年漫画のような爽快感で楽しかったですね。始めは部活動メンバーだけの戦いでした。それがクラスメイト全員を巻き込んでいきました。そしてその輪は野球チームや身近な大人にまで広がり、しまいには鬼ヶ淵死守同盟をも巻き込んで行きました。極めつけは園崎本家のトップであるお魎の確約を貰った事、これで勝負は決まったようなものでした。それでも沙都子を動かしたのは最終的に部活動のメンバーみんなが沙都子を助けたいと思ったからでした。鬼ヶ淵死守同盟やお魎の力だけでは出来ない事です。あの鉄平を前にして初めて沙都子が戦ったのです。これは自分の事のように嬉しかったですね。やっと全員笑顔で揃う綿流し祭りを迎える事が出来ました。

 この時点で気づいているでしょうか?この世界の雛見沢では既にルールXとルールZが破られているのです。ルールXは誰かが疑心暗鬼になるという事、ルールZは園崎本家による憂慮です。ルールXはこれまでの編の記憶を朧げながら持っていたメンバー一人一人の努力で達成できました。ルールZは沙都子の騒動を切っ掛けに雛見沢村が本当の意味でダム戦争から抜け出した事で達成できました。明らかにこれまでとは違う流れ、これでルールYを突破できれば、今度こそ梨花は死なずに部活動のみんなで慎ましくも楽しい日常を送れるはずでした。だからこそ、そんな未来に向かって梨花は綿流し祭りの日も奮闘し続けます。富竹にも鷹野にも入江にも全て話しました。大石にも協力を求めました。もう自分がどう思われようが関係ない、出来る事は全て行う、そんなやる気を感じました。

 だからこそ、後半の怒涛の手のひら返しにはビックリしました。まさか鷹野が黒幕だとは思いませんでした。富竹が唯のフリーカメラマンではなく東京の連絡員であった事で十分驚きましたが、それ以上に鷹野がこの雛見沢症候群の機密保持と進捗管理を司る存在だとは思いませんでした。富竹殺しは鷹野の手によるもの、もっと言えば五年前のダム戦争から起きた連続怪死事件も鷹野の手によるものでした。ルールYは全て鷹野の意志によるもの、もっと言えば戦後から伝わる東京という組織の意志によるものでした。その事に気づいたときにはもう袋小路、梨花の命の灯火は消えかけていました。

 それでも諦めないのが部活動のメンバーでした。戦闘のプロである山狗に対して果敢に挑み、何とか脱走してやろうと試みました。ですがそれも鷹野の銃弾によって潰えてしまいました。悔しかったですね。これまでの6つの編を乗り越えてそれぞれのメンバーが皆を信頼し乗り越えてきたルールX、沙都子を助けるためにダム戦争からの亡霊を乗り越えてきたルールZ、これ以上ないという状況にも関わらず、全てが鷹野の手によって覆ってしまいました。私、少し思ったのです。この神を気取る鷹野こそ、本当の狂気なのではないかと。誰も信じていない、自分しか信じていない様はまるでルールXのよう。彼女の意思で自由に動く山狗はまるでルールZのよう。オヤシロさまの祟りを乗り越え、みんなが幸せに過ごす未来を迎えるには、鷹野を始め東京の思惑を覆すことと「緊急マニュアル第34号」を発動させない事が大切なのですね。

 いよいよ次が最後の編である「祭囃し編」です。これだけみんながお互いを信じて行動してきてそれでも迎えてしまった雛見沢大災害、いや意図的に起こされてしまった減菌作戦。後はこれを起こさせない方法を見つけるだけです。いや、そういえばもう一人キーパーソンがいましたね。梨花に寄り添い常に話し相手になってくれた羽入です。彼女の存在については、未だにハッキリとした事は書かれておりません。それでも常に梨花と部活動メンバーの傍に寄り添い見守っていた存在です。彼女が固く信じる事によって起こる奇跡とはなんでしょうか。レナは「信じる心が奇跡を生む」と言ってましたが、私はそうは思っておりません、「信じる心が何かしら形になって奇跡を生む」のだと思います。現実世界に干渉できない羽入が起こす奇跡とは?ここに答えがある気がします。

 「皆殺し編」で殆どの答えが丸裸にされました。そしてやるべき事も明確になりました。後はそのやるべき事に向かって、皆を信じて奇跡を起こすだけです。正直に言えば、細かい部分で分からない謎が残っております。圭一・レナ・富竹に起きた背後の足跡の正体は何なのか?、「祟殺し編」で何故圭一がクロスオーバーしたのか?、まあこれも雛見沢症候群の症状で説明できない訳ではありませんし、物語の本質ではないので良いでしょう。これ以外の疑問は全て解決しました。最後である「祭囃し編」で、殺された部活動メンバーの無念は晴らされるのでしょうか。いや絶対に晴らされますね。決して不可能だと思っていた事を全てやり遂げてきた彼らなのですから。ひと呼吸置いたら、いよいよ最後の編に進もうと思います。


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