M.M 誘惑なまいきロリータ




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 7 - 71 2〜3 2020/1/26
作品ページ(R-18注意) サークルページ(R-18注意)



<これまでのロリータシリーズの中で、ある意味今作が一番取っ掛かり易いかも知れません。>

 この「誘惑なまいきロリータ」という作品は同人サークルである「夜のひつじ」で制作されたビジュアルノベルです。夜のひつじさんの作品も随分なプレイ本数となってきました。様々なジャンルの18禁ビジュアルノベルを制作されているサークルさんです。どの作品も内容の半分はHシーンであり実用性十分ですが、Hシーンとは別にテーマがあり何か一つ持ち帰るものがあるシナリオも特徴です。是非自分に合ったジャンルの作品を選び、その中で語られているテーマを感じて頂ければ良いのではないかと思っております。

 今回レビューしている「誘惑なまいきロリータ」は、夜のひつじさんで定期的に発表しているロリータシリーズのC97での新作となります。ロリータシリーズも随分な作品数となっております。数えましたら今作で7作品目になるんですね。1年に1作以上のペースで発表しており、最近夜のひつじさんを知った方にとってはロリータシリーズを作るサークルさんという印象を持っているかも知れません。勿論、ただロリータ少女とイチャラブするだけの作品ではありません。どこか人生に疲れた主人公と何か理由を抱えたヒロインの組み合わせが、味のある雰囲気を作っております。どのロリータシリーズから始めても問題ありませんので、是非フィーリングで選んでみて下さい。過去のロリータシリーズは以下からどうぞ。

「相思相愛ロリータ」のレビューはこちら
「ゆびきり婚約ロリイタ」のレビューはこちら
「相思相愛ロリータの生活」のレビューはこちら
「おとまり恋人ロリータ」のレビューはこちら
「ハーレム双子ロリータ」のレビューはこちら
「愛欲姉妹ロリータ」のレビューはこちら

 今作のヒロインは小学生の友人同士2人組です。今まで姉妹だったり双子だったり特徴的な組み合わせでしたが、今回はある意味オーソドックスと言いますか普通の友人2人という組み合わせです。そういう意味で、2人は同年齢であり他人ですので始めから砕けていると言いますか軽いテンションで読む事が出来ます。勿論軽いテンションだけでは終わりませんが、シナリオの真相に入る事には十分作品の中にのめり込んでいると思います。ある意味これまでのシリーズの中で一番取っ掛かり易いかも知れません。2人が絡み合ったシチュエーションは勿論、個別のシチュエーションも十分ですのでここから始めてみるのはオススメですね。

 そして今作もピアノを中心とした柔らかいBGMが特徴です。日常のシーンでもHシーンでも、殆ど変わらないテンションを演出してくれております。流れる様にHシーンに移行し、そして流れる様に日常のシーンに移行しますので本当に自然にシナリオが進んでいきます。間違いなくこのヒロイン達は同じ人格なんだと、そう思わせてくれます。シナリオが進みお互いの関係が変わったりしても変わらず見守っていてくれる、BGMがそんな存在に思えてきます。このマッタリとしたテンションもまた、ロリータシリーズの特徴ですね。プレイ開始直後で、もう安心して最後までプレイ出来る確信を得ました。

 プレイ時間は私で2時間30分でした。選択肢はなく、エンディングまで1本道で読み終えることができます。冒頭でも書きましたが、シナリオの半分はHシーンであり今作でも10以上のシチュエーションを用意しております。短いプレイ時間でよくもまあこれだけのシチュエーションを詰め込んだなと、毎回感心しております。そして、Hシーンを積み上げていく中で確実に変わっていく3人の関係に是非注目して下さい。きっと、エンディングを迎えたその後も末永く幸せに過ごしてくれるだろうという気持ちにさせてくれると思います。今回も素敵なロリータをありがとうございました。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<目的を持って生きる、その為には1人でも良いから傍にいて欲しいですね。>

 日々の生活の中で、常に目的を持って生きる事は出来ません。目的を目指して進んでいるうちは良いのかも知れませんけど、それを顧みる瞬間は必ず立ち止まらなければいけないからです。そして、実は自分が目指してきた目的に意味があるのか無いのかを考え始めると、途端に不安になるというものです。そんな時は、1人でも傍に誰かがいてくれると嬉しいですね。

 祖父が死に両親のいないフリーの主人公は、まさにそんな生きる目的を見失ってしまった存在でした。自分がいつ食事をとったのか、そんな事すらも意識しなくなってしまう程憔悴していたのです。理由も何もなく何となく疲れている、こうなってしまうとそこから変化させるのは大変です。そんな時に、2人のロリータが主人公の傍にやってきてくれました。そして、実は彼女たちも目的を少し見失いかけておりました。勿論まだまだ若いですのでこれから次の目的を見つけていけば良いと思います。しかし、今回の出会いによって人生を掛けた目的を見つける事になりました。

 3人は「親いない同盟」を結びました。実際のところ、言葉通り両親が死んでいる訳ではありません。ですが両親が生きていても自分を子供として見てくれない、身近にいない、少なくとも自分の事をケア出来るのは自分自身しかいないという状況は「親がいない」と言い切っても良いのかも知れません。社会人である主人公ならともかく、まだまだ義務教育であり親の庇護が必要な2人にとって両親がいないという事は目的が持てないという事と同じではないでしょうか。エリクソンの心理社会的発達理論でも、学童期や青年期では誰かに認められる事が心理的課題であると言っております。そんな大事な時期に親がいない、この「親いない同盟」はある意味必然だったのかも知れません。

 ですけど、幸いな事に3人は目的を見つける事が出来ました。特に、ダブルヒロインですがメインヒロインだと思っているかやりは自分が書きたい絵を描き上げる事が出来ました。その作品名は「つらくない」、今まで暗中模索な日々を過ごしてきましたがそれもこれで終わりですね。目的を見失った中で生きるのは「つらい」ですからね。もう、3人は「つらくない」ですね。物語後半、主人公は「きっと社会のほうを向いた愛なんて無い」と言っておりました。社会を愛さないという事ではなく、自分の愛をわざわざ社会に認めてもらう必要は無いという意味だと思います。ロリータ少女とのセックスと妊娠、そして出産という行為は間違いなく世の中に認められ難いです。それならそれで別に構わない、どこかスッキリとした様子すら感じましたね。

 物語最後、かやりが書き上げた「つらくない」を見て主人公は涙を流しました。そしてもって生きていたいと心の底から思いました。人付き合いは疲れます、何故なら住む世界が違うからです。正しい事をしているからと言って、生きていられる訳ではありません。そんな生き難いこの世界の中で、もっと生きていたいという想いはある意味最も大切にしなければいけないのではないかと思いました。背徳でありエロシーンに注目されがちなタイトルとは裏腹に、全体を覆っていた寂しさとそれを克服するシナリオが印象的な夜のひつじさんのロリータシリーズ、その真骨頂を読めた気がしました。ありがとうございました。


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