M.M ゆびきり婚約ロリイタ




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
5 7 - 72 2〜3 2017/3/4
作品ページ(R-18注意) サークルページ(R-18注意)



<多彩なHシーンとBGMを用いて作られたユートピアは、だめなおとなになるための最速の手引き。>

 この「ゆびきり婚約ロリイタ」という作品は同人サークルである「夜のひつじ」で制作されたビジュアルノベルです。夜のひつじさんの作品はこれまで7作品程プレイさせて頂きました。様々なテーマやジャンルの18禁ゲームを制作されており、そのどれもが3〜4時間という手軽な時間でプレイできるものです。そして非常に手に取りやすいにも関わらずHシーンのボリュームは非常に多く、1タイトル10前後のシチュエーションが存在します。実用性とシナリオを両立した作品ばかりであり、多くの方に親しまれております。是非公式HPに足を運んで頂き、皆さんのお気に入りの一本を見つけて欲しいですね。

 今回レビューしている「ゆびきり婚約ロリイタ」は、最近夜のひつじさんで展開しているロリータシリーズの第2弾です。非常に直球なタイトルと小学生を連想させる少女のジャケットはそれだけで背徳的であり、コンセプトを前面に出したスタイルが潔いですね。私も過去にロリータシリーズ第1弾である「相思相愛ロリータ」の方をプレイさせて頂きました。少女のいたいけな姿と性的な姿の二面性が上手く表現されており、「だめなおとなに、なりましょう。」というキャッチコピーそのままに禁断の愛に溺れること間違いなしです。そんなロリータシリーズ第2弾ですので内容は7割方分かっているようなものですが、今回もどのように少女と大人が愛を育むのかそのシナリオを楽しみにプレイ始めました。

 この作品はあらすじを語ることすらネタバレになります。既に作品のコンセプトとして少女と主人公がHする事が決まっております。であるなら、何故この少女と主人公がHする事になったのか?そもそもこの少女と主人公は顔なじみなのか?といった出会いの部分やそこからの人間関係の構築の部分こそが醍醐味になってきます。この作品は純愛です。純愛という事は少なからず出会いのそこから心を通わせる時間があったという事であり、その部分を丁寧に読み解くことが大切です。その為あえてここではあらすじを伏せさせて頂き、逆にHシーンの感想やその他の要素のみピックアップしたいと思っております。

 Hシーンの数は今作も10以上収録されておりました。そしてそのシチュエーションも様々で、始めは性的な好奇心から恐る恐る男性器を触るところから始まり、一緒にお風呂、おはようH、おやすみH、お掃除フェラと展開していきます。これだけ書くと普通の抜きゲーの様に思えますが、大切なのはこれをまだ思春期を迎えたかどうかも分からない少女が行っているという事です。そしてこの作品のキャッチフレーズは「縁組み性愛ロリユートピア」です。ユートピアという事はそこに痛みが存在しないという事。どんなHシーンでも痛がらないんですね。現実では絶対にありえないシチュエーション。まさにだめなおとなになるための最速の手引きです。

 その他の特徴としてBGMが挙げられます。全体としてピアノを中心とした穏やかなBGMばかりであり、まるで喫茶店でコーヒーを飲んでいるかのような和やかな雰囲気です。そしてそのBGMが殆ど途切れることがなく、冒頭から最後まで全てが1つのユートピアとして仕上げている様子が伝わります。シナリオそのものには高低差があり平坦な展開のみではないのですが、それをBGMの力でユートピアにしているという印象ですね。まさにビジュアルノベルだからこそ作る事が出来る雰囲気であり、他の媒体では再現出来ない作品に仕上がっております。私自身もタイトル画面の曲を作業用BGMにしております。そんな優しいBGMもまた魅力です。

 プレイ時間は私で2時間20分でした。選択肢は無く、分岐などを気にせず純粋にシナリオを楽しむ事が出来ます。上でも書きましたが10以上のHシーンがあり実用性は十分ですので、急いでプレイしようとせず是非それぞれのシーンを堪能してのんびり進めてもらえればと思っております。時間をかければかけるほどだめな大人になる事ができます。現在ダウンロード版も発売しておりますので、社会の喧騒から少し距離を置いて至高のユートピアへ足を運んでみては如何でしょうか。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<ユートピアなんて存在しない。だからこそ2人は命ある限り愛の中に生きるんですね。>

 結婚を控えていたにも関わらず事故でその最愛の人を失ってしまった主人公。両親を失い身寄りのないところを引き取ってくれたたった1人の存在である大おばさんを認知症で失ってしまった鈴佳。この二人の中で「永遠」とか「ずっと」という言葉は存在してなかったんですね。だからこそ今存在する愛に生きる事を選択したのだと思っております。

 まずはヒロインである鈴佳の可愛さにやられました。しっかりしているようで年相応に無邪気であり、褒められるのが大好きな鈴佳は純粋な小学生でした。初めて出会ったときの虚勢術もそれっきりであり、一度仮面を取ればもう普通の小学生でした。性的な事もあまり理解しておりませんでしたが、幼い時から不遇な環境で育った事もあり人の愛に潜在的に飢えていたんですね。一度主人公のことを信頼してからは全く疑うことなく接しており、そこには確かに愛が存在しておりました。少女らしさと女らしさが見事に同居しており、主人公がこの気持ちが父親としてのものなのか恋人としてのものなのか迷うのも納得できました。

 主人公も不幸な境遇を歩んでおりました。結婚を約束した貴子という女性がいました。優しい主人公ですのできっと丁寧に関係を作り愛を育んできたのだと思います。だからこそそんな大切な存在を失った喪失感は大きく、それは年月がたってもまだ部屋の中の彼女がいた名残が残っている事からも明らかです。永遠に続くものなどない、それを突きつけられた主人公にとって鈴佳という自分を慕ってくれる存在を絶対に手放したくはないと思った事と思います。初めて出会ってから3年経過し、再会した2人が溺れるようにお互いを求めたのはこういった過去もあってのことだったと思っております。

 この作品にとって永遠という言葉を外す事は出来ません。思えばユートピアという言葉もまた永遠といった要素を多分に含んでおります。ユートピアとは理想郷の事であり、外界の何者にも侵されない領域です。ですがそれはあくまで理想、現実は常に変化し時間は止まることなく流れております。何者にも侵されない領域など決して存在しないのです。大切なのは、主人公も鈴佳もユートピアというものは存在しないという事をしっかりと認識しているという事です。作中でも「ずっと一緒にいよう、という事はいつか離れ離れになるという事」と言っておりました。そんな無責任な約束、2人にとって何も意味を成さなかったんですね。

 社会的に見ればダメな大人なのでしょう。エピローグで妊娠して結構な日数が立っている鈴佳を見ましたけど、あれはびっくりしましたよ。あの後2人はどうやって生きていくのでしょうね。でもそんな事を考えるのは無意味です。何故ならこの作品は「縁組み性愛ロリユートピア」なのですから。現実では絶対に存在しないユートピア、そして作中でもユートピアなんて絶対に存在しないと分かっている2人。であるならば、せめてこの命が続く限り愛の中で生きる事もまた一つの答えなのかも知れません。最後に語られた「命を借りて愛のなかに生きている」と言うセリフにはそんな意味も込められていると思いました。ありがとうございました。


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