M.M DAGGER 至福の姫君




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
8 8 8 86 6〜7 2024/2/11
作品ページ(なし) サークルページ



 この「DAGGER 至福の姫君」は先に発売された「DAGGER 戦場の最前点」「DAGGER 点を支えし者達」「DAGGER 有色の戦人」「DAGGER 銀環の誓い」「DAGGER 有色の姫巫女」「DAGGER 貴人の矜持」の続きとなっております。その為レビューにはこれら過去作品を含めたネタバレが含まれていますので、ネタバレを避けたい方は避難して下さい。

「DAGGER 戦場の最前点」のレビューはこちら
「DAGGER 点を支えし者達」のレビューはこちら
「DAGGER 有色の戦人」のレビューはこちら
「DAGGER 銀環の誓い」のレビューはこちら
「DAGGER 有色の姫巫女」のレビューはこちら
「DAGGER 貴人の矜持」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。前作と本作の両方をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。





















































































<完結おめでとうございます!最後まで信頼関係に包まれた、ストレートなファンタジー作品でした。>

 剣と魔法が存在し人間以外の様々な種族が存在するファンタジーな世界で展開される心温まるシナリオとキャラクターが印象的なDAGGERシリーズ、遂に完結しました!前作である第4章が発売されたから約5年半振りという事で、どれ程この時を楽しみにしていたのか言葉に出来ません!主人公ティストを中心とした成長物語も、遂にこれで見納めです。

 まずは、完結おめでとうございます。改めて自分のHPを見返してみて、第1章である「戦場の最前点」のレビューを書いたのは2013/7/15でした。もう10年以上もの付き合いになるんですね。時間の流れに驚かされます。それでも、こうしてちゃんと最後まで完結させる事が出来て素晴らしいと思います。同人ビジュアルノベルに長く関わらせて頂きましたが、こうしたシリーズ物をちゃんと最後まで完結させられるサークルさんは3割も無いと思います。皆さん制作の過程で色々と転機が訪れ、同じように創作が出来なくなるのだと思います。勿論人それぞれの人生ですし、そもそも同人活動ですので完結しなくても何ら問題はありません。ただ、物語の中にいる登場人物たちの結末を見たいというのがプレイヤーの願いです。DAGGERシリーズは元々原作があり完結しておりますのでこのリニューアルシリーズが完結しなくても最後まで物語は読める訳ですが、やはりリニューアルした以上同じテイストで最後まで読みたいと思うものです。それを達成してくれただけで、私達プレイヤーにとっては感謝しかありません。本当にありがとうございました。そしてお疲れさまでした。。

 そして内容ですが、正直なところ前作である「貴人の矜持」のエンディングを見た段階でもう私の中で何も心配事はありませんでした。心配事などと私が言うのはそもそもおこがましいのですが、もうどう転んでもティストとその周辺の登場人物たちにこれ以上の不幸は起こりえないと確信していたからです。ティストは当初戦場の最前点と呼ばれ、自分ひとりがどうなろうともどうでもよいと自暴自棄になっていました。ですがティストの周りには彼を支える沢山の人がいたのです。そして彼らの愛情を素直に受け止めそして自己研鑽を重ね真心を尽くした結果が、あのウェディングドレスに身を包んたアイシス・セレノア・ユイの嬉しそうな姿でした。誰もティストの事を裏切る事はありませんし、またティストも今の自分の境遇に慢心して自己研鑽を止める事はしません。そんな徹底的にストイックなティスト達の前に、心配事など起こるはずがないのです。

 敵らしい敵も、もう殆どいませんでした。唯一残っているのはロアイスの騎士団長であるヴォルグと、同じくロアイスの貴族であるイスク卿でした。彼らもまた、自分の欲望と歪んた願望に支配されもはや信頼感の欠片もありませんでした。今のティスト達にとって、もはや敵ですらありません。まあそんな背水の陣な2人だからこそ、何もかもを捨ててただティストの死のみを望んだ行動は脅威でしたね。後先考えず捨て身の行動をとる人は恐ろしいです。何しろ常識が通じないのですから。周りの評価や批判などお構いなし、ただティストが死ねばそれでいいと割り切られてはこちらも叶いません。イスク卿は自分の持てる全ての力と権限を使ってティストを殺そうとしました。それでも、最終的にはティストとその周辺の人たちの前に破れました。こうして、本当の意味でのティストたちに仇名す奴らはいなくなったのです。

 ティスト達は絶対の信頼関係で結ばれており、加えて敵らしい敵はもういない。では、この「至福の姫君」の見どころは果たして何なのでしょうか?それが、パッケージの表紙を飾っているリースとの関係でした。
 
 「俺は、リースが他の男と結婚する姿を見たくない」
 
今作で私が一番心に残ったセリフですね。これ、普通の男が言ったら何様だと非難轟轟ですよ。アイシス・セレノア・ユイという3人の妻を迎え入れて、それでこのセリフを吐いて非難されないのは、本当これまでのティストの行いの賜物です。全幅の信頼というのはこういう姿なんだろうなと感心しました。そして、4人目の妻としてリースを迎え入れる為にティストは魔族の王になりました。これだって、ティストのこれまでの行いと力による結果です。そして他国の王として同等の立場でロアイスの姫君に結婚を申し出る、こんな作戦思い付いても実行出来るのはティストしかありません。これまで培った信頼関係をフルに活用して、リースとの結婚を実現する事が出来ました。

 エンディング直前、そこには4人の妻と同じ髪色の女の子が4人登場しました。誰が誰の子供なのか一目で分かりますね。嬉しかったのは、ずっと戦いが日常で常に先頭に備えていたティスト達が、こうして子供を産み育てこの年まで健やかに育っている事実です。もしかしたら、妊娠や出産に大変な苦労があったのかも知れません。子育ても戦いとは違いますので並大抵の努力では務まらない苦労があった事でしょう。ひょっとしたら、第三勢力がやってきて大戦があったのかも知れません。それでも、結果として4人の娘たちがこのように自由奔放に生活している事実があるだけで十分です。あのティスト達ですからね。周りの人たちに頼り、そして自らん研鑽を怠らずにいれば幸せにならないはずが無いんですもの。そしてこの日、1人の男の子が生まれました。5人の子どもたちに囲まれた生活は、きっと刺激的で楽しく豊かな物になると信じております。

 こうしてDAGGERシリーズは終わりました。「戦場の最前点」から数えて、トータル30時間以上の大ボリュームな作品でした。これだけ長い作品でありながらも丁寧に作りあげた世界観だからこそ、ティストを中心とした登場人物に対する信頼感は私の中で消える事はありませんでした。前作である「貴人の矜持」から5年半経過していたにも拘らず、殆どの要素を覚えていましたからね。ああ、そういえばこんな関係だったなと懐かしく思いながら、約束されたハッピーエンドに向けてウィニングランを走っている気分でした。恐らく、起承転結の結としては「貴人の矜持」で終わっていたんだと思います。この「至福の姫君」の役割は、リースの結末をしっかりとプレイヤーに提示する事だったのかなと思っております。ここまで丁寧に制作して頂き、本当にありがとうございました。こういう良い意味でストレートで捻りの無いファンタジー作品って、たぶん今はそんなに無いんでしょうね。いやいやこれで良いんですよ、安心感ほど大切な物はありませんからね。私も、最後までレビューを書く事が出来てホッとしております。これをもって、新しい作品へと進んでいこうと思います。ティスト達の幸せが末永く続く事を祈念して、レビューの締めとしたいと思います。ここまで読んで頂き、ありがとうございました。


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