M.M ゼロの使い魔 インプレッション


10、ゼロの使い魔外伝 〜タバサの冒険〜

2008/12/3更新


 うん、タバサかわいいです。でも、それ以上にシルフィードがかわいいです。これは、タバサ一人の物語ではなくて間違いなくタバサとシルフィードの二人セットの物語ですね。という訳で、「タバサの冒険」の感想です。

 この「タバサの冒険」は文字通りゼロの使い魔の外伝に当たるもので、タバサが普段学園で見せないところでどんな任務をやっているかを書いた物です。具体的なエピソードとして4つの物語がありました。そしてそのどれもか、いくらタバサがシュヴァリエとはいえ一人で行うには難しい仕事ばかりでした。それでもタバサは、自分の悲願である「母を救い母を殺そうとした奴らへの復讐を果たす」ために、どんな辛い任務でも頑張るのです。しかも、辛そうな様子を一切外に見せずに頑張るのです。いくらイザベラから苛められても自分の気持ちを押し殺して、ただただ任務をこなす事だけを考えて頑張るのです。その当たりの心構え、間違いなく普通の15歳の神経ではありませんね。それも全て、タバサの持つ強力な魔力に裏打ちされたものですね。

 ですが、そんなタバサでも実際一人で任務を行っていた訳ではありませんでした。タバサの傍にはいつも「シルフィード」がいました。しかも、シルフィードは唯の竜ではありません。人の言葉を操り先住魔法をあやつる韻竜です。ですがこのシルフィード、寿命が長いだけに相対的にまだまだ精神的に子供のようです。無口なタバサとは対照的にとても賑やかで喧しいです。まあ、だからこそこの二人の性格が絶妙なバランスを伴っており、物語が上手く進むのでしょうね。

 そして大事な事は、お互いがお互いを非常に信頼し合っているという事です。確かにタバサは無口で多く物事を語りませんし、シルフィードもいつも我儘ばかり言って一見タバサの事を大切に思っているようには見えません。ですが、そんな風に表に見える部分では見えなくてもちゃんと目では見えない心の深い部分でちゃんと二人は繋がっています。それは、任務を行う時の二人の役割や行動を見ていれば一目瞭然です。この二人が確実に任務を遂行できるのは、ただ単に連携がいいとか能力が高いとかそういう点だけではありません。お互いがお互いを信頼しているからこそ、多少無理に思える難題でも果敢に挑戦して解決していけるのです。まさに理想の主人と使い魔といった感じでしょうか。これ程までに気持ちが繋がっているのですから。

 それではここで各シナリオについて軽く感想を書いていこうと思います。まずは「タバサと翼竜人」ですが、タバサはただ冷徹に任務をこなして居る訳ではないんですね。いくら任務とはいえ、無役は争いはするべきではありません。その点をタバサはしっかりと見抜き、シルフィードと画策して見事人間と翼竜人を和解させました。それにしても、任務とは言えシルフィードと芸をするなんて、本当に二人は信頼し合っているのですね。

 次に「タバサと吸血鬼」ですが、ここでも頭からタバサの作戦が始まりました。しかも、シルフィードを人間して敵を欺くという大胆な作戦です。一歩間違えたら両者共々死んでしまいかねない作戦です。このあたりにも二人の信頼関係が見えますね。そして最後に絶体絶命に陥ったタバサ、そこに駆けつけるシルフィード、さすがです。ここで一つ分かった事は、ハルケギニアでは「吸血鬼」は相当の恐怖に値する事ですね。今後ルイズの前にも現れるのでしょうか。

 次に「タバサと暗殺者」ですが、これは珍しくタバサ単独の実力勝負でした。実質スクウェアクラスの魔力を持つタバサでさえ苦戦する地下水との戦い、多少興奮しましたね。どうやらハルケギニアにはこのような「インテリジェンス・ソード」のような敵も存在する様ですね。一見見分けのつかないナイフが的だなんて、タバサでなかったら実際死んでいたでしょうね。

 最後に「タバサと魔法人形」ですが、これは結構寂しい話ですね。人を信じ自分を信じる事の大切さを感じました。やはり人は大切な人の為になると本気になるんですね。むしろそういう経験をする事で成長していくんですね。今回の依頼主であるオリヴァンも、今回の一軒を切っ掛けに本当の意味で成長できたでしょう。そして、そんなシナリオを15歳のタバサが考え付くなんて、やはり普通の少女ではありませんね。

 とまあ、こんな感じでタバサとシルフィードの魅力がふんだんに詰まった一冊でした。普段のルイズや才人の視点では絶対見れない物語でしたね。確かにこんな任務ばかりこなしていれば、間違いなく強くなる訳です。どこか寂しいですがそれらも含め全てが魅力であるタバサ、そしてそんなタバサを持前の無邪気さでサポートするシルフィード、この二人ならよっぽどの事がない限り負けはないでしょうね。そんな事を再認識させる一冊でした。


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