M.M ゼロの使い魔 インプレッション


9、ゼロの使い魔9 〜双月の舞踏会〜

2008/12/3更新


 なるほどね、これは面白くなってきましたね。なにしろあの才人が平民から貴族になったのですからね。この展開は正直予想外でした。なぜなら、このハルケギニアの世界は平民は平民の誇りを、貴族は貴族の誇りを重んじる世界だからです。その均衡がここにきて崩れてしまった訳です。という訳で「双月の舞踏会」です。

 さすがにこの状況にはルイズも落ち付いてはいられないようですね。今まで自分の好きという気持ちを「使い魔だから」という事でうまく誤魔化してきた訳ですからね。しかし、この事は自分の気持ちの問題だけでは収まりません。平民から貴族になるということは周りからの見方もガラリと変わるということです。自分が自分の気持ちに整理をつけるだけでは収まらない問題なのです。そのせいだからですかね、相変わらずルイズの疑心暗鬼は無くならない…どころかむしろ強くなってる気がします。

 そして、平民から貴族になった張本人の才人はルイズ以上に穏やかではありませんでした。最初は何となしに喜んでましたが、徐々に貴族になったという事が心の中に染み込んで来て、何かしなければいけないと思いつつも何をすればいいか分からなくなってしまいました。だからなのでしょう、水精霊騎士団を作って闇雲に訓練しても全然満たされた気持ちにならなかったのは。満たされた気持ちにならなかったからこそ、才人はさらにガムシャラに訓練をします。それこそ、自分の守るべき存在のルイズが視界に入らなくなる位に。

 とまあ、こんな感じでお互いがお互いの気持ちを理解出来ない状況がずっと続いている中で開かれたスレイプニィルの舞踏会です。それまではどこかギスギスした空気の中でうまくやってきた二人ですが、ついにルイズの疑心暗鬼が爆発してしまいました。まあ、そうですよね。才人が貴族になって一番不安定になっているルイズ、そして才人を貴族にした張本人であるアンリエッタとのキス、気持ちが爆発するのも仕方がありません。これを読んでる私もさすがに「あ、これヤバ…」って思ってしまいました。そして、そんなルイズの心の隙間をミョズニトニルンが狙ってきた訳です。

 前巻あたりからボチボチとその実態を見せてきたミョズニトニルンですが、これは今まで出てきたどの敵よりも策士でやっかいな存在かもしれませんね。何よりも頭がいいです。自分は基本手を出さずに相手の心の隙間をつく事で確実にダメージを与える戦法は、今のルイズや才人にとって厄介以外の何物でもありません。そして、今回何よりも厄介だったのはそのミョズニトニルンの差し金がタバサだったことでしょう。

 ただでさえルイズの心の乱れだけで物語は佳境に入って来たと思っていたのにいつの間にか才人とタバサの戦いですよ。本当に、タバサは自分の母親を救う為とはいえいったいどんなに深いところまで手を出しているのでしょうね。そして、最終的には才人の味方になったとはいえ一時は命令に従い本気で才人を殺そうとしましたからね。これに関しては今後メイン級で話が出てくること必至です。どう考えても説明不足ですからね。

 そして極めつけはコルベール先生の復活ですよ。もうこの辺りになって正直ルイズの気持ちなんてどうでもよくなってしまいましたね。もう超展開に続く超展開ですからね、ドキドキしっぱなしですね。そして、肝心のルイズと才人はキス一つで収まるのです。この辺りの展開は相変わらずですね。まあ、この方がゼロの使い魔っぽくて良いのかもしれませんね。

 という訳で後半は結構グダグダになってしまいましたが、今後に繋がる伏線が幾つも出てきましたね。才人が貴族になった事、ミョズニトニルンの目的、ミョズニトニルンと束さの関係、ロマリア帝国の目的、今後どういう展開になっていくか楽しみです。それにしても、結局この第9巻のテーマって何だったのでしょうね。物語は確かに進みましたが色んな要素が混ざりすぎて言いたいことがボヤけてしまったような印象を持ってしまいました。それでも、一巻一巻終わる度にうまく収めてくる辺りは流石作者の力量って感じですかね。とりあえず、色々分からない点を回収する意味でも早く次が読みたいですね。


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