M.M ゼロの使い魔 インプレッション


11、ゼロの使い魔10 〜イーヴァルディの勇者〜

2008/12/3更新


 いや〜久しぶりにワクワクしながら読みました。いよいよ明かされてきたタバサの謎、いよいよ登場してきたエルフ、そしていよいよ潜入したハルケギニア最大の軍事力を持つガリア国、そしてそれらの魅力的な素材の元に奏でられるテーマが愛と友情と冒険でしたからね。という訳で、「イーヴァルディの勇者」です。

 今回の物語の主人公は間違いなく「タバサ」でした。何故なら、才人やルイズを始めとして登場人物全員がタバサの為に自らの身の危険を顧みず動いたのですから。そしてここで言う自らの身の危険とは、命の危険という意味だけではなく「名誉と立場」の危険という意味も含まれています。

 貴族にとって名誉は最も大事なものです。だからこそ男は戦争におもむき、女は自分の身を磨きます。そして、貴族は自分の住んでいる国に忠誠を誓う物です。つまり、トリステインの貴族であるルイズにとって「アンリエッタ女王」は本当に絶対的な存在なのです。なので、名誉を守るにあたってアンリエッタ女王の命令に背く事はある意味最もやってはいけない行為なのです。そして、今回ルイズ達はタバサを救うためにガリア国に乗り込もうと決心します。そしてそれはトリステインの貴族がガリア国に喧嘩を売る行為に等しいです。それはもちろんアンリエッタの許すところではありません。つまり、今回の行動は貴族として最も大事な物である「名誉と立場」を危険に晒す行動だった訳です。

 そして、前にも言った通りガリア国はハルケギニアの中で最大の軍事力を持つ国です。何しろアルビオンでの戦争を一瞬で終わらせた国ですからね。そんな国に潜入すること、ましてやタバサを助けようという行為は完全にガリア国を敵に回す行為です。いくらルイズ達に実力と作戦があるからといって、まともにやりあって勝てる相手ではありません。つまり、ガリア国に潜入する行為は間違いなく「命」を危険に晒す行為になる訳です。

 まあ、だからといって名誉の為にタバサを助けに動かなかったらそれは物語として失格な訳です。彼らも言ってました、「友の命一つ守れない奴に国を守れるはずがない」と。だからこそ、アンリエッタの命令で囚われの身になった後でも強行にガリア国へ潜入しようとする訳です。その結果アニエスらトリステインの騎士団と対立する事になった訳ですが、それでもコルベールの真摯な思いでなんとかガリア国への侵入を可能にしました。それにしても、やっぱりコルベールとアニエスはカッコいいですね。正直、このコルベールとアニエスの対峙はある意味この巻一番の見どころでしたからで。同じ軍人としての気持ちが分かると嘆いたアニエス、どれだけ無念でどれだけ切なかったでしょうね。一つ名言が出ました、「復讐は鎖だ、だれかが断ち切らねば永遠に繋がる鎖だ」と。彼等らしく自分の過去に清算を付ける事が出来ました。これで、アニエスもある意味復讐から解放された訳です。

 そして肝心のタバサ救出ですが、ヤマグチノボルは実に上手いですね。何が上手いって、各キャラクターの性質を理解して全員に見せ場と山場を用意してますからね。眠り薬を調合するモンモランシー、踊り子として活躍するキュルケ、遠見の呪文で城の様子を見るマリコルヌ、宮廷音楽を演奏するギーシュ、そして虚無とガンダールヴの力でエルフと戦うルイズと才人、誰一人欠けても成功しない作戦でしたからね。それにしても、いよいよ登場したエルフですが流石ですね。まさか全ての呪文をはね返すんですからね。これではスクウェアクラスのタバサでも勝てる筈が無かった訳です。今後こういった強力な力を持った人物も多く登場するんでしょうね。そして、相変わらずジョゼフの真の目的は分かりませんね。とりあえずビダーシャルの手駒にしているだけでとんでもない人物だという事が想像できます。今後ビダーシャルやジョゼフがどのように行動するのか、このあたりが物語の鍵になるんですね。

 そして、今回のメインであるタバサの心理描写についてですが。やっぱりタバサもどこにでもいる普通の女の子でしたね。普段から尋常じゃない任務をこなしているうちに何も感じない心になってしまったのかと思ってしまいそうですが、彼女も普通の女の子の様に「勇者」に憧れていたんですね。いつかは離れ離れになる、自分一人の問題だ、と言ってずっと誰にもたよらなかったタバサ、だからこそそんな自分の心が失われると悟った時、その冷たい心ですら愛しく感じたのでしょう。そして、そんなタバサを慕ってくれる「友人」と「勇者」がいると知った時、ようやく安心して涙を流せたのでしょうね。素直に感動しました。

 さて、物語はどう動くのでしょうね。とりあえずアンリエッタに刃向いガリア国を敵に回した事は紛れもない事実です。そしてここは貴族と平民の世界、馴れ合いでは済まない世界です。簡単にトリステインには帰らないでしょう。また一つ、大きな物語のうねりが待っているに違いありません。とりあえず、それを期待する事にしますか。


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