M.M ゼロの使い魔 インプレッション


12、ゼロの使い魔11 〜追憶の二重奏〜

2008/12/3更新


 いや、家族って大事ですね。普段は特別意識しないでしょうけど、いざって時はやっぱり家族の顔が真っ先に思い浮かぶんでしょうね。一人暮らしを始めたばかりの時とか、家族の誰かが亡くなった時なんか時に意識するのではないでしょうか。そんな「家族」をテーマにしたのが今回の「追憶の二重奏」です。

 前回はガリア国を中心にとても大きな冒険がありました。それを無事に終えても、まだまだ困難が待っています。タバサ親子をどうするのかとか、トリステインへの裏切り行為にどういった罰が下るのかとか、今後ガリア国はどんな行動に出るのかとか、とりあえず簡単に挙げるだけでもこれだけ多くの大きな困難が待っている訳です。そんなルイズ達一行でしたが、事態は自分たちが思っていたほど最悪の状況でも無かったですね。

 まずはタバサ親子の件ですが、これはツェルプストの計らいで当分は問題無さそうです。そしてガリア国の動向ですが、ヨルムンガンドの実験台にされた事はありましたがどうやら最悪の事態である国同士の戦争になる事はありませんでした。そして最後にトリステインからの罰についてですが、これは完全にアンリエッタとヴァリエール家の優しさに救われたと言えるでしょう。

 ルイズの家系は侯爵家という事もあり基本的に非常に厳しいです。前回で長女であるエレオノールや父親であるラ・ヴァリエール侯爵の厳しさは分かったでしょうが、今回はそれに加えて母親であるカリーヌの恐怖が浮き彫りになりました。流石はかつて「烈風カリン」と恐れられただけの事はあります。その規律と規則を重んじる姿勢は何時になっても崩れないものです。とにかく、ヴァリエール家は基本的に厳しく怖い家系であります。

 ですが、この厳しさは全てルイズへの愛情があってこそです。本来ならルイズ達は王女であるアンリエッタの命令に背き勝手に国境を越えた訳です。ちょっとした罰では済まされません。そこで規律と規則を重んじるカリーヌは自分がルイズを躾ける事で許しを請いました。本当ならアンリエッタは許すと言っているのでそこまで厳しくする必要は無い筈です。ですがそこは道理が通らないとして、カリーヌはルイズを躾ける事と罰を受け流すことを同時に行った訳です。こうする事で、だれから見てもルイズを許してもらえるようにしました。多少手の込んだやり方ですが、これも大事なルイズが罰せられないようにする為の母親の愛情でしょう。

 さてここからが本題です。そんな風に、タバサ親子とヴァリエール家のいう二つの「家族」を見せられた才人は故郷の思いを膨らませる事になります。それはそうでしょう、何ともない普通の高校生がいきなり地球とは違う世界に飛ばされてしまった訳です。もちろん家族と会う事は叶いません。だから、カトレアに全てを話す気になったのだろうと思います。そしてある真実に気づく事になります。それは、自分がガンダールヴとして徐々に心が変化していることに。

 怖い話です。いくら家族に会いたい思いを忘れられるからといっても、それは自分が今まで持っていた大切な思いを失うことと同じです。確かに地球への思いを忘れてガンダールヴとしてルイズに仕えた方が本来の虚無への役割としては正しいです。ですが、才人はガンダールヴである前に一人の地球人です。今まで過ごしてきた記憶と思いがあります。それはいくら虚無の使い魔だからといっても忘れてはいけないものです。

 だからこそ才人はティファニアの忘却の魔法を受けたのでしょう。ハルケギニアに居なければいけない思いを捨てて、そこで残った思いに自分の信念を賭けた訳です。しかしそれは主人への思いが偽りかどうかもはっきりする訳です。もちろんルイズは気が気ではありません。これで才人が自分を見てくれなかったら、使い魔としても愛する人としても才人を失う事になるからです。でも、そんな不安も最終的には杞憂に終わった用ですね。

 やはり才人はルイズの事が好きみたいです。そして、今まで出会ってきた友人たちの事も忘れたくないみたいです。だからこそ、ヨルムンガンドとの戦いに赴いた訳です。そして、今までの才人と違う点がハッキリしました。第一に故郷への思いを一番大切にするようになった事、第二にそれを踏まえて好きな女の子であるルイズを守りたいと思うようになった事です。これで真の意味でルイズの使い魔として才人は戦えます。少なくとも、変な義務感や責任感で悩む事はなくなるでしょう。信念を確信して、本当の意味でガンダールヴとして力を発揮するでしょう。

 という訳で、今回のテーマは「家族」を大事に思う事でした。タバサ親子とヴァリエール家の家族の愛情、そしてそれらの愛情が才人が自分の思いを取り戻す切っ掛けになった訳です。やはり家族はハルケギニアでも地球でもどこでも同じですね。これには身分の何も関係ありません。物語としては大きく進まなかった「追憶の二重奏」でしたが、また一つ大事な事を教えてくれた今回のゼロの使い魔でした。


←ゼロの使い魔10 〜イーヴァルディの勇者〜へ   ゼロの使い魔12 〜妖精達の休日〜へ→




→雑記
→Main