M.M ゼロの使い魔 インプレッション
13、ゼロの使い魔12 〜妖精達の休日〜
2008/12/3更新
今回は短編集です。全ての物語が魔法学院の中だけで起こります。それだけに特別感動するところや考えさせられるところは少ないかもしれませんが、この短編集は間違いなく「ティファニア」の為に用意されたものでしょう。という訳で「妖精達の休日」の感想です。
ご存じの通りティファニアは人間とエルフのハーフです。そしてご存じの通りエルフの使う先住魔法の強力さは普通の四大系統の魔法の力を凌駕するものです。それが故に、エルフという存在はこのハルケギニアの中では非常に恐れられている存在になっています。だからこそ、ティファニアは人間達との交流を恐れてひっそりとアルビオンの小さな村で生活してきました。そんなティファニアがいよいよ街にやってきたのです。しかも、まだまだ若い学生ばかりいる魔法学院に入学してきたのです。当然様々なトラブルが起こります。
ですが、これらの短編集は全てそんなティファニアが何も違和感なく学園で過ごせるように用意した物語なのかもしれません。普通ならエルフの血が入っているだけで皆怖がります。そんなティファニアに対する態度は後半では全くもって無くなっています。そうです、いくらティファニアが特殊な存在だからと言って、いつまでも学園の人間がティファニア恐れていては進む物語も進む筈が無いのです。ティファニアが何も違和感なく学園に溶け込むことによって、新たな物語が紡がれるのです。そんな、ティファニア中心の三つの物語の感想です。
初めに「白の国(アルビオン)からの編入生」ですが、まさにこれがティファニアが学園に来て本当の意味で皆と打ち解ける為の物語ですね。ティファニアの美貌とその「胸のような何か」は男のみならず誰でも引き付ける魅力を持っています。ですが、それがエルフの血が入っていると知れた途端、今まで魅力と思っていたもの全てが恐怖に変わるのです。そんなものです。ですが、ティファニアは自分の血を呪っていた訳ではありませんでした。むしろ、自分の血を誇らしげに思っていたからこそ自分の正体を明かそうと決心したのでしょう。そして、その後に「異端審問」という迫害が待っていました。まあ、相手はハーフエルフであり女として欲しいもの全てを持っているティファニアですから、こういった事態になるのも仕方ないでしょう。それでもティファニアは自分の血に対する誇りを捨てませんでした。だからでしょう、最終的に皆と打ち解けられたのは。もちろん表面的には才人や水精霊騎士団やルイズなどの協力もありましたが、協力する気になったのも全てティファニアの信念があったからです。結果、ティファニアの優しさに感動して誰もが彼女を信頼するようになりました。ここから、ティファニアの本当の学園生活が始まったのです。
次に「水精霊騎士団、突撃せよ」ですが、まあこんなノリもゼロの使い魔の魅力ですよね。とりあえず言いたい事はそれだけですが、そんな中でティファニアやタバサに関するちょっと注目したい心理描写がありました。普通の時間に普通にお風呂に入っている以上、ティファニアは完全に学園の皆と誤解を回復出来たようですね。今まで真夜中にしかお風呂に入っていなかったというのはさすがに酷です。そしてタバサですが、前回から兆しがありましたがただ借りを返すとかそういった事ではなく気持ちの中で才人の事を信頼している様子が伺えました。ノゾキをした才人を救ってくれるなんて、よっぽど信頼していないと出来る事ではありません。と、そんなちょっとした心理描写が垣間見れた話でした。
最後に「サイトの一日使用権」ですが、うん!やっぱり百合は良いものですね。惚れ薬でドタバタするなんて典型的なギャグ物語ですが、これが百合メインとなれば話は違います。理屈じゃないんです。とりあえず百合は良いんです。結局サイトなんて蚊帳の外です。とりあえず百合を楽しめればそれで良いんです。それだけです。
とまあこんな感じの短編集でしたが、ほんと気軽に読めて良いですね。そして、最後の話を読んでいる段階で気づいているでしょうか、既に物語上だけでなく読み手である自分達もティファニアが学園にいる事に違和感を感じなくなっている事に。そうです、最初の「白の国(アルビオン)からの編入生」で多少シリアスな物語を持ってきてティファニアを学園に溶け込ませ、その後ギャグ的な物語を二つ持ってくる事で一気に違和感を消してしまったのです。まあ、そんなところまで計算して物語を描いたとは思ってませんが、読み終わってティファニアが自然に学園にいるようならそれで成功だと思います。さて、短編集はこれで終わりです。今後また物語が進行する訳です。ですが、今後はティファニアも十分レギュラーです。虚無が二人揃っている訳です。間違いなくティファニアが今後の鍵を握っているでしょう。どんな物語が紡がれるか、楽しみです。
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