M.M ゼロの使い魔 インプレッション


7、ゼロの使い魔7 〜銀の降臨祭〜

2008/8/17更新


 いや、マジで才人カッコ良すぎでしょう。立場は違えど自分の信念に嘘をつかないために死に向かうなんて、そんじょそこらの主人公と比べても断然カッコ良いです。という訳で「銀の降臨祭」です。

 今回は前回から続いている戦争の後半です。ですが、その中で伝えようとしているテーマは全く別のものです。それは、以前から語られていた「貴族」と「平民」の間で根本的に違う価値観の対立、すなわち「名誉」と「命」とどちらに重きを置くかという事でした。前回も似たような内容でしたが、今回はそれが表面化したみたいですね。

 この「名誉」と「命」については既に前回の感想で粗方書いてしまったので新しく思う事は無いのですが、こういった自分が最も大事にしている思いを共有出来ないという事はその上に成り立っている人間関係も崩してしまうもんですね。まあこの事は私にもよく理解出来ます。世の中いろんな人と付きあってきて「こいつとはどうしても合わない」という人が一人二人はいると思います。そういう人が存在する理由、それは根本的に価値観が合わない事が原因だと思います。言葉使いや趣味が自分と結構違っていても、心の奥底で信じているものがそれほど対立しないでもない限り「絶対合わない」と言い切れる人間はそういないものです。逆に、表面上の振る舞いが似ていても価値観が絶対的に合わなければどうしてもどこかで限界が来てしまいます。

 まあ、この事はどちらが悪いとかそういった事ではないですね。こればっかりは仕方が無いとしか言う事が出来ません。なぜなら、自分が間違っていないと信じている事は決して捨てる事は出来ないからです。そしてそれが大きくズレていたら、もうその段階で終わりです。諦めるしかありませんね。ですが、このゼロの使い魔の中ではそう簡単に諦めることは出来ません。なぜなら「ルイズ」と「才人」は「主人」と「使い魔」の関係でありお互いが「好きあっている」関係だからです。

 さっき私は「自分と根本的に価値観が合わないなら諦めるしかない」と言いましたが、諦める訳にはいかない状況も存在する訳です。それは、例えば部活での先輩後輩の関係だったり、会社での上司部下の関係だったり、今回みたいに自分が好きな人だったりする場合です。もうこういう離れたくても離れられない状況だったらどうするんでしょうね。答えは「ぶつかりあう」事ぐらいしか無いんでしょうね。分かり合えない自分の思いを精一杯ぶつけて対立して喧嘩して、そうやって相手を理解するしかないんですね。

 ここで言う「理解」というのは、何も相手に合わせて自分の価値観を変えるという事ではありません。世の中には自分とこうも価値観の合わない人もいるものだなと認め、納得する事です。そうやって納得して、根本的に価値観が違ってもその部分を認めて人間関係を作っていく事が大切になると思います。まあ、そうやって見切りを付けないと今の世の中を生きていくのは難しいでしょうね。いわゆる「コミュニケーション能力」とは良く聞く言葉ですが、これはそういった相手の価値観を認めて人間関係を作っていく能力の事だと認識しています。価値観が合えば、コミュニケーションは取りやすいですからね。

 そして、そんな価値観の違う才人が好きなルイズの為にとった行動、それはルイズの代わりに自分が命を捨ててルイズの任務を全うする事でした。事実上国の為に死ねと言われたルイズ、それは才人が最も許せないセリフでもありました。ですが、自分の好きな人がそれを受け入れその人を失いたくないとなれば取る行動は一つしか無かったのかもしれませんね。この行動に踏み切るのにさぞかし才人は勇気を振り絞ったでしょうね。なにしろ死にに行くのですから。それも好きな人一人の為に。だからかもしれませんね、こうも才人をカッコいいと思うのは。そうやって才人は自分の命と引き換えに好きな人とその好きな人の名誉を守ったのです。

 と、何やらバッドエンドみたいな終わり方かと思えばエピローグで新しいキャラクターが登場しました。おそらくこのキャラクターが本文中にもちょくちょく登場した「妖精」なのでしょう。さて、今後ルイズと才人はどうなるのか。次回が楽しみですね。


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