M.M ゼロの使い魔 インプレッション


18、ゼロの使い魔16 〜ド・オルニエールの安穏〜

2009/5/30更新


 穏やかですね。前巻であれだけ大きな戦争をしたばっかりなだけに今巻の穏やかさは今までのどれよりも穏やかに見えます。ですがこの穏やかさの真の理由は、戦いという目的がなくなったからというのが大きいでしょうね。という訳で「ド・オルニエールの安穏」の感想です。

 今回の戦争の終了は色々な意味を含んでいます。まず一つに虚無の担い手の一人であるジョセフ王とその使い魔ミョズニトニルンが死んだ事です。聖地奪還の為に聖戦の開始を宣言した訳ですが、その成功のカギを握る4人の虚無がもう揃わなくなりました。これでは聖戦を続ける事に意味はありません。そういう意味で、今後暫くエルフ絡みで戦争が起こる事はまずないと考えられます。次にジョセフ王が亡くなりタバサが王女になった事でガリア国が新しい一歩を踏み出したという事です。今まではジョセフ王の独断による悪政の為に国内だけでなくハルケギニア全体が安息の無い日常を送るはめになりました。ですが、そのジョセフ王が亡くなり本来ガリア国の王に相応しい血筋の王が誕生した事でようやく安息の日々が返ってきたのです。これで少なくともガリア国に起因する戦争は起こらなくなったと言えます。

 とまあこんな感じで今までの戦争の主要因であった二つの理由が無くなったので心の底から穏やかな日常が返ってきたのです。ここ最近まで厳しい戦いや辛い選択など常に緊張し時間ばかり過ぎていましたから、こういった安息はやっぱり安心しますね。ですが、安息と言ってもそれは単に戦争が無くなったという事だけです。戦争が無くなれば人はまた新しい目的を探そうとします。そして、それがやはり唯の安息では終わらせない日々を作り出すんですね。

 ついに才人も領地をもつ貴族の仲間入りですね。シュヴァリエになったのがつい最近のように思えますがそこから更に大出世です。ですが本来喜ぶべきところなんですけどそこはやはりいつも才人の事ばかり考えているルイズの心に新しい歪を生み出すんですね。

「私は才人と釣り合うのだろうか?」

今までは主人と使い魔という絶対的な関係がありました。その後才人がシュヴァリエになっても自分は虚無の担い手という意味もありまだまだ才人の眩しさに気付かなかったのだろうと思います。ですが、いよいよ自分の領地を持つところまで来てはたと気づいた訳ですね。才人がいよいよ自分の地位にまで近づいているという事に。別にルイズは嫉妬や対抗意識を持っている訳ではありません。ですがその代りに「つりあうか否か」という思いが生まれた訳です。そしてその事がまた自分と才人の繋がりを惑わす事に繋がる訳です。

 こういう展開はまあ予想された訳ですけど、さすがにアンリエッタが若干許せなくなってきましたね。この人は本質的な部分は5巻の町宿で接吻した時から全く変わっていませんね。いくら誰も見ていないからといってもこの相変わらずの展開は許されるものではありません。結局ルイズが一部始終を見ていて才人から離れてしまうというある種予定調和な展開になった訳です。ですがルイズは変わりましたね。普段だったら才人やアンリエッタを憎む気持が多少なりともあったはずですが、今回は全部自分に責任を押し付けています。まあ相変わらずの思いこみの激しさなのですが、こういった思考の変化は今までと違う展開を生み今後の話の流れが楽しみになりますね。

 さて、そんな中水面下ではまた新たな火種が生まれていました。その一つが「元素の兄弟」です。おそらくこの元素という意味は「4属性を極めたもの」という意味なのでしょうね。まだ二人しか出ていませんがお互いに役割が違う事とちょうど4人兄弟であることからおそらく当たりでしょう。ですが一つ気になるのは誰が「先住魔法」をかけたのがという事です。先住という事でエルフが絡んでいそうですが、今まで登場したエルフを見ても誰も絡んでそうではありません。ティファニアはあり得ないでしょうし、ビダーシャルはこんな俗な事に興味を示さないはずです。となるといったい誰なのか。この辺り新しい人物が登場しそうですね。そして元素の兄弟の新しいスポンサーは誰なのかという疑問もあります。今巻の情報だけだと私はどうしても「マザリーニ枢機卿」しか考えられません。アンリエッタの新しい改革にストップをかけ結婚を勧めたこと、今回の以来である才人を殺す事はアンリエッタの穢れを取り除き古き良き貴族の伝統を守るためであること、トリステイン魔法研究所の方針が変わり新しく作られた薬を元素の兄弟が持っていたこと、以上が理由です。まあそれにしてもちょっと強引で残忍なやり方なのでマザリーニとは思いたくはありませんけどね。いくら陰の存在である元素の兄弟を使うからといっても流石に唐突すぎます。これには別の何か理由があるかも知れません。

 そしてもう一つの火種は「ジョセフ王の代わり」です。虚無の性質を理解している訳ではありませんが、結果として修道院の「ジョセット」が新しい虚無になるんでしょうね(名前も似てますし)。ここで重要なのが再び虚無が4人になるという事です。それは聖戦の再開を意味します。そうなればハルケギニアはまたヴィットーリオの手の中で動くことになります。前巻の行動から、私はこいつの事は信用しない事にしましたのでこれはよくない方向の向かうものだと思っています。という訳でまだ水面下ではありますがすぐにでもまた嵐がやってきそうです。

 そして、陰に隠れてしまいそうですが「デルブ」は本当に死んだのでしょうか。確かに魔力の吸いすぎで砕け散ってしまいました。ですが、ガンダールヴの片腕として何千年も闘ってきたデルブがこんな突然の戦いで死ぬとは思いたくありませんでした。何とか復活を願っています。という訳で安息の日々はいつの間にか終わってしまいまた戦いの中に巻き込まれてしまうのでしょうね。結構色々と伏線が出ていますのでそのあたりを整理しつつ気長に待つとしましょう。


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