M.M ゼロの使い魔 インプレッション


17、ゼロの使い魔15 〜忘却の夢迷宮〜

2008/12/3更新


 今回は怖いという感想が一番合いますね。何が怖いって、ジョゼフの心の闇の深さとヴィットーリオとジュリオの狡猾さの深さですね。という訳で「忘却の夢迷宮」の感想です。

 なるほど、まさかジョゼフの思惑がそんなところにあるとは思いませんでした。「地獄を見たい」、ただその為だけに今までとんでもない事をしてきたのですね。これはさすがにどんな聡明な人間を持ってしても読めるはずがありません。むしろ、聡明だからこそジョゼフの心理が読めないんでしょうね。虚無という力を持っていて、さらに世界最大の軍事国の王です。そんな立場の人間が普通に考えてありえない行動を起こしてまで手に入れたいものと言ったらそれは普通「世界全て」でしょう。それがまさか全く次元の違うベクトルを持っていたわけですからね。これは驚きでした。

 そして、今まで色々なファンタジーを見てきてここまで残忍な性格でありながら心が闇に覆われている人物を見た事がありませんでした。ジョゼフの心には何もないのです。世界が欲しいという欲求も、自分の力を見せつけたいという欲求も、そして他人を恨めしいと思う心も、それら全てを持ち合わせていなのです。これではどんな作戦も効くはずがありません。例えるなら、どんなに有効な協定や訴えを持ってきてもそれらに0をかければ全て0になってしまう、そんな感じです。0をかける、まさに虚無の心をもつジョゼフに相応しいですね。

 ですが、それ以上に心が読めない人物がいました。それがロマリアのヴィットーリオをジュリオの二人です。ジョゼフは心に何も無いためその行動が読めずまたジョゼフの進行を止める事も出来なかった訳ですが、こっちの二人は絶対に曲がらない信念を持っているためその進行が読めないパターンですね。そして、どちらも自分の心に従って手段を選ばないという点で共通です。ですが正直こっちの方があまりにも狡猾過ぎて恐怖すら覚えました。前巻でもそうですが、彼らは自分達の目的の達成の為にルイズと才人の心も利用した訳ですからね。

 そして今回彼らの野望の為に犠牲になったのはタバサでした。前々から徐々に膨らんでいった才人への思い、それの拠り所が分からなくて不安定なところを突かれた訳です。流石のタバサも自分に生まれたこの新しい気持ちまでは制御出来なかったみたいです。あっさりとジュリオに出し抜かれました。でもこれは、そんなタバサの弱い部分も全部見越してこの計画を立てたのでしょう。となると、もしかしたらこの二人は相手の心の中を見通すような能力を持っているのかも知れませんね。そうでもなければこれだけ彼らの思い通りにシナリオが進んでいる事に説明がつきません。

 正直言って、今のところこのハルケギニアにいる誰もがヴィットーリオとジュリオのシナリオ通りに動かされています。ルイズや才人をはじめ、全ての人間は自分自身の信念に則って行動しているように思っているかもしれませんか、それら全てを見越してるかのようなシナリオの進行っぷりです。何しろ心の中に何もないと思われていたあのジョゼフですら彼らにその心の奥底に眠っていた秘かな思いを突かれてあっさりと負けてしまいましたからね。いったい彼らは聖地を取り戻してどうするつもりなのでしょうね。こればっかりは誰も予測できませんね。

 ですがそんな中でもロマリアの思うようにはさせまいとルイズと才人、アンリエッタ、そしてタバサが画策しています。アンリエッタがやろうとしている事はおそらくあの二人は既に見抜いているでしょう。何となくアンリエッタとヴィットーリオは釣り合わない気がします。タバサの心の深さも相当のものなので彼女ならシナリオに切れ目くらいは入れる事がで黒と思いますが、ジョゼフへの復讐という「心の雪風の起源」が無くなったので最後でジリ貧になる気がします。となると、やはりこのシナリオに風穴を開けるのはやはしルイズち才人だと思います。そんな勝手な予想を付けつつ、どこまでこのシナリオ通りに動かせる事が出来るかも楽しみです。

 さて、とりあえずこれでガリアは終わりました。おそらくこれから本格的に聖地奪還へ向かうのでしょうけど、どうやって盛り上げていくのか楽しみです。そして、徐々に明かされてきた始祖ブリミルの謎、そして虚無の担い手とガンダールヴの本人達の理解を超えた繋がり、タバサの胸に秘めた怒りの炎、ヴィットーリオとジュリオのシナリオの裏でこれだけの要素が放り投げられています。今巻で8巻辺りから続いてきたジョゼフ関係が一区切り付きましたので、当面の新しいシナリオの軸が必要です。今度はどんな物語が紡がれるのか、どんな登場人物が現れるのか、楽しみです。


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