M.M ゼロの使い魔 インプレッション


15、ゼロの使い魔13 〜聖国の世界扉〜

2008/12/3更新


 …泣いた。まさかゼロの使い魔で泣かされるとは思ってませんでした。なんという切ない運命なんでしょうね、このルイズと才人の二人は。そしてなんという強さを身につけたのでしょうね、このルイズという少女は。という訳で「聖国の世界扉」の感想です。

 今回の物語の主人公は完全にルイズです。いや、主人公というよりも才人と出会って少しずつ変わっていったルイズが初めて他人の為に真剣に考え抜いた物語です。今までのルイズのイメージは、とにかく意思が強く自分の信念を曲げない事でした。そしてこの世界は貴族と平民という身分が存在するハルケギニアです。そんな強い気持ちを持ったルイズは貴族としての常識とか価値観とか国への忠誠とかそういった部分にとことんこだわってそれが全てだと思っていました。だからこそ、そんなハルケギニアの世界とは無縁だった才人の登場に色々と悩まされることになるのです。

 もちろんルイズは才人の考えを否定していました。そしてこの気持ちは、使い魔だとか恋愛だとか命の貸し借りだとかそんな事は全く関係ありませんでした。才人を愛おしく思う気持ちはもちろんあります。ですが、だからといって自分の信念まで曲げる事は無かったのです。傍から見たら「ああ、またいつものツンデレかよ」見たいに思ってしまうでしょう。ですが、そんな仕草はこの自分の信念を貫く姿勢が隠されていたのです。

 ですが、才人と出会った事を始めとしてルイズは普通の貴族とは違う運命を背負ってしまいました。幾つかあるのですが大きな要素として、まず一つが「虚無」の担い手としての存在、あと一つが「戦争」です。唯の貴族ならば自分の名誉を考え国に忠誠を誓っていればいい訳です。ですがルイズは誰も持っていない伝説の系統である虚無、その存在は一国の女王ですら頼りにする物となりました。そんなルイズだからこそ見る事が出来たのです、絶対的な存在だと思っていた女王の「弱さ」を。自分にとっての絶対の前提の一つが崩れた訳です。そしてそんな虚無の力を頼りにされて「戦争」に赴きます。戦争は貴族の名を挙げる絶好の機会、普通の貴族ならばそれだけの存在です。ですがルイズは虚無の担い手、普通の貴族とは扱いが違いました。そしてなにより、ルイズは戦争で一度最愛の人を失っています。自分の名を挙げる為に身を犠牲にした才人、戦争が終わった結果残ったのは大きな虚無の心だけでした。

 そんな体験を何度も重ねて、ルイズは「考える」事を始めました。自分の信念は本当に正しいのか、貴族の常識では無い生き方にも意味はあるのではないか、そんな風に貴族という立場を言い訳にして「考える」事を放棄していたルイズが考えだしたのです。その事が表立った事の一つが「タバサの救出」に向かう事でした。今まで絶対だった女王に歯向い、自分の意志で貴族の名を捨てたのです。これは今までのルイズでは絶対出来なかった行動でした。確実に、ルイズは様々な経験を経て変わってきたのです。

 そしてそんな中ロマリアに召集されたルイズ等一向、目的は虚無の集合と聖地の奪回でした。女王アンリエッタの頼みという事もあり今までのルイズなら二つ返事で協力していたでしょう。ですが自分で考える事を始めたルイズはこれをよしとしませんでした。才人みたいに色んな人間がいる、それはエルフでも同じ事、こんな風に考える事が出来るようになったのです。

 そして、そんな中で覚醒したヴィットーリオの虚無である「世界扉」の完成。この事でルイズは最大の選択を迫られました。それは自分の最愛の人物である才人との関係です。地球に帰る方法が見つかった今、ルイズは決断しなければいけませんでした。今まで何となしに「帰る方法を一緒に探してあげる」と言っていたルイズ、その答えを出す時が来たのです。今までのルイズならどうしたでしょうね、考える事を市知らないルイズだったら間違いなく決断から逃げたでしょうね。ですが、母親からのメールに涙する才人を見て、初めてルイズは才人について本気で考えました。これは今まで無かった事です。今まで「使い魔」という立場に甘えて才人の事をまじめに考えてませんでした。そんなルイズがついに真剣に考え抜いたのです。

 そしてその答えは「才人を地球に返すこと」でした。自分は才人が好き、離れたくない、そんな気持ちを押し殺し、真剣に考え抜いて「才人の本当の幸せ」を選んだのです。私が泣いたのはルイズのあまりに可哀そうな運命に同情したからではありません、真剣に才人の事を考えて答えを出せたからです。最後のデート、笑顔に溢れたデート、その思いの何と一途で真剣で切ない事か。

 私だって二人には離れ離れになって欲しくはありません。でも、これはルイズが真剣に考え抜いた結果です。その覚悟を大きさを考えると、誰も何も言えるはずがないのです。才人を失う事になるルイズ、でもその思いの強さは決して揺るぐ事はないでしょう。果たして次回どんな展開が待っているのか。二人の運命はどうなるのか。今までのゼロの使い魔の中で一番楽しみです。


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