M.M 涼宮ハルヒシリーズ インプレッション


8、涼宮ハルヒの憤慨

2007/12/16更新


 …よし、ようやく一年部分も終わっていよいよ次号から二年部分に突入か。という訳で、「涼宮ハルヒの憤慨」の感想です。

 この憤慨も、前にいくつかあったような短編によって構成されているものでした。その内容も特別設定を大きく動かすものではなく、相変わらずの超自然的な内容でした。

 まずは「編集長★一直線!」ですが、もう本当に古泉一樹は神人を抑えるのに必死ですね。ここまで大掛かりに手を拱いてイベントを起こしたことは今まで無かったのではないでしょうか。本当に、涼宮ハルヒは愛されてますよね〜っと、普通に読めばこの程度の感想で十分なのですが、そんなに簡単にこのお話を終わらせる事は私には出来ませんでしたね。きっとこれも、「涼宮ハルヒ無関係で外野が頑張っている」訳ではなく「結局涼宮ハルヒの内部感情が引き起こした」事なのでしょう。その根拠は、キョンに過去の恋愛体験を書かせたことです。

 古泉一樹も言ってましたが、内心涼宮ハルヒはキョンの過去の恋愛体験を知りたがっていたのでしょう。で、そんな内部感情は決してそんなに表に出るものでは無かったにせよ、潜在意識としてずっと涼宮ハルヒの中にあったはずです。そうなれば、いずれその感情は何かしら外の世界に影響を与える事は必須です。という訳で、今回の一連の編集長事件が勃発したのではないかと思います。まあ、一般的な見方としては古泉一樹がただ純粋に涼宮ハルヒを退屈させたくなかったからという物が大きかったのだと思いますが、今まで涼宮ハルヒシリーズを読んでみてそんなにアッサリと片付ける気にはなりませんでした。むしろ、全ては涼宮ハルヒの思うがままというロジックの方がスッキリしてて分かりやすいのではないのでしょうか。

 次に「ワンダリング・シャドウ」ですが、これも先の「編集長★一直線!」と同様に「心霊現象に出会いたい」という涼宮ハルヒの内部感情が何らかの形で外部に影響した結果なのでしょう。もしかしたら、本当に「珪素構造生命体共生型情報生命素子」というものが存在して、たまたま涼宮ハルヒのクラスメイトである阪中のペットに寄生しただけなのかもしれません。ですが、これも古泉一樹が言っていた事ですが、そんな天文学的な内容を信じるよりも全部涼宮ハルヒが引き起こしたことだと解釈した方がずっとシンプルで分かりやすいです。

 それにしても、こうしてとりあえず涼宮ハルヒの一年部分の感想を書き終えましたが、全てのシナリオを解釈しようとすると全て次の二通りに分けられると思います。

# 一連の超自然的な存在や現象は、全て涼宮ハルヒが引き起こしたものであり、涼宮ハルヒの意思一つでどうにでもなる可能性がある。
# 一連の超自然的な存在や現象は、全て元々から存在していたものであり、偶然涼宮ハルヒの前に現れた。

の二つです。そしてこの涼宮ハルヒシリーズの面白いところは、この二つの解釈のどちらをとっても矛盾が出ないという事です。最後まで明確な答えを出さずに読者の思考の中に委ねる、その辺りのロジックの扱いは流石谷川流だと思いました。そして、この二通りの解釈のどちらに賛同するかによって、読んでいる読者がどのくらい涼宮ハルヒの世界にハマってしまっているかが分かるのではないかと思います。どこまでこの超自然的な世界観に順応できているか、もしくは反発しているか、それともそんなに興味が沸かないか、そんなところも分かるのではないかと思います。

 いずれにせよ、私もこんな物理的に妙にそそられる世界観に引かれてしまったので、ここまで読んでしまったのでしょう。一年部分で全八巻、いよいよここから二年部分に突入する訳ですが、一年部分で出た伏線はほとんど何も回収されていないようなものです。新たな登場人物にその彼らが織りなす新たな物語、楽しみにしましょう。


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