M.M 涼宮ハルヒシリーズ インプレッション


7、涼宮ハルヒの陰謀

2007/11/11更新


 なんて…なんて心温まる陰謀なんだ!ベタと言えばベタかもしれませんが、これは素直にホンワカした。という訳で、「涼宮ハルヒの陰謀」の感想です。

 久しぶりの長編ということで、あらゆるところに散りばめられた伏線の数々が光った内容だったと思いました。設定としては、ただ「8日後から来た朝比奈みくると織りなすエピソード」という物でしたが、その中身は「宇宙人」「未来人」「超能力者」同士の派閥の争いと、最近よく出てくる既定事項についての部分がメインに思えましたね。あと、プロローグでしっかりと「消失」の後始末もしてくれてよかったです。まあ、私の予想は外れてたみたいですが。

 今回も朝比奈みくるは既定事項に巻き込まれる形になりました。もう本当に朝比奈みくる(大)の操り人形です。ですが、これに関してキョンはこう思っていました。

♯ 既定事項に反する行動をとったとしても、その時点で新しい既定事項が生まれ、今までの既定事項の記憶が上書きされる。

と。この時は確かにそう思いましたが、現実はそんな単純じゃありませんでした。例えば、亀を川に流すという指令がありましたが、結果として亀は川に少しだけ浸かっただけで、直ぐに少年の手に渡りました。そして、朝比奈みくる(大)が言う事には、

♯ この時の一連の出来事全て(亀の存在、波紋)が将来時空転移の基礎理論に繋がる

でした。この時私は思いました。どうして朝比奈みくる(大)は、この時の命令を「亀を川に放す」ではなく「亀を一旦川に放して、その後直ぐに少年にあげる」としなかったのかと言う事です。亀を川に放すという命令だけでは、キョンが少年に亀を渡すことは既定事項にならなかった可能性は十分にあったと思います。そしてその瞬間未時空転移に関する技術歴史に多大なる支障をきたすことでしょう。

 ですが、結果として朝比奈みくる(大)が命令しなくても、結果として朝比奈みくる(大)の思惑通り亀は少年の手に渡りました。これはたまたまキョンの気持ちと既定事項が合っただけかもしれませんが、そんな都合よく話が進むはずがありません。つまり何が言いたいかといいますと、私の結論はこうです。

♯ 過去の人間の行動が全て未来の既定事項になるのだから、正しい既定事項や間違った既定事項は存在せず、ただただ一つの時間軸が存在するだけ。

キョンはもう一つの可能性の未来を無くしてしまったと言ってますが、実際そんなものは存在せず、ただただ一つの歴史のみが存在すると言う事です。

 ですが、この事は確認のしようがありません。何故なら、仮にもう一つ時間軸が存在したとしても、それを確認する方法が無いからです。つまり、他の時間軸が存在しないという証拠がないのです。なので、もしかしたらキョンの考えている事と私が考えている事は、どっちも正しいのかもしれないしどっちも間違っているかもしれない訳です。とまあ、この既定事項に関してはこれ以上考えても意味がないのでこの辺りで留めておきます。

 そして、もう一つの重要事項である「宇宙人」「未来人」「超能力者」同士の派閥の争いについてです。今回「宇宙人」に関する出来事は起こってませんが、「暴走」の雪山症候群の犯人はこの宇宙人系の別派閥のようです。これで、各派閥のキャラクターが一応姿を現したという事になりますね。

 結局のところ、彼らの目的は何なのでしょうか。涼宮ハルヒがある種の「神」的な存在である以上、何か仕出かしたいと思っても何もできないはずです。なぜなら、涼宮ハルヒの匙加減一つで世界は自由に変わってしまうからです。明らかに、今回の朝比奈みくるの誘拐は無謀で意味のない行為だと思われます。そんなに既定事項に拘る事が大切なのでしょうか?

 思うに、未来人はとにかく既定事項に「踊らされている」のだと思います。明らかに非効率な行動をとっているとしか思えません。たとえ既定事項通りの行動を行わなかったとしてもそれが新しい既定事項になる、もしくは既定事項にそぐわない行動そのものが既定事項になるのだから、無理をして朝比奈みくるを操ったり、敵対組織も無題に衝突しなければいいのになと思いました。まあ、この敵対組織との衝突はまだ始まったばかりですし、これからも何度かお世話になるみたいな事を話していましたので、この辺のちゃんとした答えはしっかり返ってくると思いたいですね。

 う〜ん、見返してみると本当にまとまりのないレビューになってしまいました。きっと、こんな風に大真面目に考えるからこんなややこしい文章になるんでしょうね。もっと気楽に読めば、涼宮ハルヒの可愛らしい陰謀に心温まるだけで終わっただろうに。まあ、それはそれこれはこれで2重の「陰謀」を楽しめれば一番良かったのではないでしょうか。と言う訳で、今回はこの辺で。


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