M.M 涼宮ハルヒシリーズ インプレッション


6、涼宮ハルヒの動揺

2007/10/27更新


 …動揺した。誰がって、私が動揺した。何にって、余りにマッタリした展開に動揺した。という訳で、「涼宮ハルヒの動揺」の感想です。

 今回も「退屈」「暴走」同様のいくつかの短編集ということでしたが、冒頭でも書いたとおり実にマッタリした話、分かりやすく言うと「涼宮ハルヒによる超自然的世界があまりにも少ない」話ばかりでした。

 まずは「ライブアライブ」でしたが、まあこれが今回のタイトルである「動揺」を決定づけた話でしょうね。そして、超自然的な話ではないものの涼宮ハルヒが今まで感じた事がほとんどない気持ち、すなわち「人から感謝される」という事を題材にした今回の話は実に新鮮でした。結局のところ、涼宮ハルヒが中学時代に憂鬱だった原因、そして高校でも度々起こる巨人の暴走の原因は、涼宮ハルヒの心が満たされなかったからだと思います。そして涼宮ハルヒ自身、自分の気持ちを満たす方法は「自分の力でしかできない」と思っている節があったのでしょうね。だからこそ当初涼宮ハルヒは、メンバーがいなくて困っているのを見ているのは気の毒だからから手伝った、そしてそれがそれなりに面白そうな事ならばなおの事だ、位にしか思ってなかったんじゃないでしょうか。だからこそライブを終えた後日、その一緒にライブを行ったメンバーから感謝の言葉をかけられた時、ひどく動揺したのでしょう。そして、今まで感じたことのなかった心のザワツキを感じたのでしょう。最後に涼宮ハルヒが「来年はライブをやる!」なんて言っているあたりまだその心のザワツキには気づいていないようですが、いつかはそういった「人との関わり」の大切さを実感して、いつまでも「面白くない世界」なんて言わないでいて欲しいものだと思いました(あ、それは俺もか)。

 次に「朝比奈ミクルの冒険 Episode 00」ですが……以下略で。

 そして「ひとめぼれLOVER」ですが、これは私的にかなりヒットでしたね。全部読み終わってみれは何だこんなオチかって思ってしまうでしょうけど、実際読み進めている途中では結構楽しかったですね。長門有希を好きになる話なんて、キョンが直接メインの話じゃなくても期待しないなんて無理です。そして、そんな部分を含め今回の「ひとめぼれLOVER」は実にテンポが良かったと思いました。キョンの友人から電話が来る→長門有希に話す→ラグビーの試合を見に行く→事故が起こり病院に行く→その後種明かし…みたいな感じのシナリオ展開でしたが、最後の最後までオチが分からないために途中どこでも気を抜けずにワクワクしながら読めましたね。こういう日常の描写を退屈させないあたり、谷川流はすごいと思いました。そして、今回の話は次回以降の伏線になるのでしょうか。まあ、とりあえずまったく新しい勢力もあるという部分だけ覚えておくとしますか。

 次に「猫はどこに行った?」ですが、「雪山症候群」以降謎だった肝心の山荘での推理ゲームの内容をちゃんと話してくれてよかったです。そして、相変わらず鶴屋さんの活躍が光る話でしたね。やはり鶴屋さんは唯の賑やかな上級生って事ではなさそうですね。何よりも、涼宮ハルヒの周りに「自主的に」集まる人間に普通の人間なんているはずがありません。そんな鶴屋さんの動向にも注目しつつ今後読み進めていこうと思います。そして肝心の推理ゲームですが、まあこんなもんでしょ。

 最後に「朝比奈みくるの憂鬱」ですが、朝比奈みくるらしい優しい雰囲気全開の話でしたね。ちょっと未来の出来事にまつわるキーワードを垣間見れたのももちろん良かったのですが、なによりも朝比奈みくるがこれまでも時頼洩らしていた「未来人として信用されていない」という悩みをしっかりと一本のシナリオにしてくれた事が良かったです。それにしても、ここまで明確に指令を与えられていない朝比奈みくるという存在は何なんでしょうね。そこで、こんな予想をしてみました。

♯ 以前の「消失」で頻繁に出てきた「既定事項」という言葉をちょっと思い出して考えつきました。
♯ 今涼宮ハルヒの隣にいる朝比奈みくるは、本当はこの時代に来る予定は無かった。
♯ ですが、何らかの事情で過去に来てしまった。
♯ そしてその事実は「既定事項」になってしまったため、しかたなくこの朝比奈みくるを利用しつつ涼宮ハルヒを監視する方針に切り替えた。
♯ 大人版朝比奈みくるがやたら登場するのは、過去に実際朝比奈みくるを体験した唯一の人間だから。

…とまあこんな感じです。まあ、こんな自己満推理になんの根拠もないので華麗にスルーして下さい。

 で、全体を通して思ったことですが、やはり今回もキョンの洞察力は見事なものでした。特に「ライブアライブ」と「ひとめぼれLOVER」においては完全に人の心を読めてましたからね。キョン自身はもうこの非日常的日常に慣れたって言ってますけど、明らかに慣れだけでは済まされない部分ばかりだと思います。この辺にも相変わらず注目して読んでいこうと思います。それでは今回はこの辺で。


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