M.M 涼宮ハルヒシリーズ インプレッション


4、涼宮ハルヒの消失

2007/9/26更新


 …なるほど、これなら長門有希好きが多数表れるのも頷けるわ。という訳で、「涼宮ハルヒの消失」の感想です。

 いや〜これは私にとって久々にドキドキしながら読みましたね。まさか今まで当たり前に存在していた世界がガラリと変わってしまうんですからね。そんな中で差し伸べられる数少ないヒント、それを手がかりに何とかして元の世界に返ろうとするキョン、何だか昔のアドベンチャーを読んでいるような感覚でした。そして、そんな中に隠されたテーマはなお私を惹きつける物でした。

 今回の消失を通して、キョンは最大の選択をしなければならなくなりました。それはずばり、「宇宙人や未来人や超能力者がいるような本来ならありえないような世界」か「宇宙人も未来人も超能力者もいない普通の世界」かです。ここでポイントになるであろうところは、どちらの世界でもキョンの周りを取り囲んでいた人間はそのままの性格で(長門有希は別)存在しているということです。つまり、キョンはやっぱり現実にはありえない存在がいる世界を望んでいました。そしてそれは、結局のところ涼宮ハルヒの思考と何一つ変わるところはありません。今までの涼宮ハルヒシリーズを読んできて思ったことがここまで的確に当たっていたのはちょっと嬉しかったですね。

 ですが、話が進んでいくに連れでキョンの目的も少しずつ変化していったような印象も受けました。それは、「元の世界に返ろう」という事から「本来あるべき時系列を保とう」という事への変化です。前に朝比奈みくるが行ってましたが、他の時空とはパラパラマンガの様に似ているが連続性を持たないという事がありました。つまり、長門有希によって変化した世界から「笹の葉ラプソディ」の世界へ脱出するプログラムを起動した段階で、本来ならば今までいた世界を元あるべき姿に戻すことは出来ないはずです。この事は、終盤でキョンが朝倉涼子に刺された事実はあるのに、その後病院で目が覚めた世界でその時の傷が無いこととも一致すると思います。つまり、あの後キョンが朝倉涼子に刺される世界でそのキョンを助けて(助けたかどうかは不明)変わりにプログラム銃を長門有希に撃ったとしても、その後階段で足を踏み外して病院に行く事は確証ではないという訳です。もっと言ってしまえば、最終的に長門有希が行った世界の改変はその後直ぐに修正されたはずなのに、キョンは確かに改変された世界を体感しています。果たしてこの「消失」の中にはいくつの時空が存在していたのが。そして、涼宮ハルヒシリーズでの時空はどのように取り扱えば良いのか。若干悩ましいところです。そんな中でもこの時空の問題に私が出した結論は以下の通りです。

♯ 3年前の笹の葉ラプソディの段階での世界を基準とする。
♯ 長門有希の世界改変により笹の葉ラプソディから2年後でその基準世界が2つに分かれてしまった(これのうち1つがキョンが体験した風邪の蔓延している世界)。
♯ もう1つは世界改変を受けていない世界だが、それから1年後に長門が世界改変を行う。
♯ その直後長門有希にプログラムを打ち込もうとするキョンを朝倉涼子が刺す。
♯ この時点でさらに未来から来たキョンが長門有希にプログラムを打ち込む(この時点でなんと3人のキョンが同時系列に)。
♯ その後世界は元通りになり、翌日何も知らず寝ていたキョンが階段で足を踏み外す。
♯ つまり、朝倉涼子に刺されて死んだキョンの埋め合わせは、改変した世界で緊急脱出プログラムを起動したキョンが消えたということで埋め合わせをする。

 というシナリオです。まあ、意外な事実を見落としていたりするかもしれないですし、結構勝手な事ばかり言ってますので、気に入らない方は忘れてください。

 そして最後に、この「消失」での主人公とも言える長門有希について少し話したいと思います。結局のところ、長門有希には感情はあったのでしょうか。長門有希に生じたノイズは明らかに涼宮ハルヒによるものです。ですが、長門有希はそれをただ消去するだけでなくキョンに元に戻すかどうかという選択肢を残しました。これは、再び長門有希が蓄積されたノイズを開放しなければならなくなる可能性を残しています。それでもキョンの選択に従った長門有希、いつまでも謎めいた存在ですが、若干人間らしさを感じ取れたあたり、「消失」を呼んだ多くの読者の心を掴んだのではないかと思います。そして、改変された世界での長門有希は普通に可愛かったです。


←退屈へ   暴走へ→




→雑記
→Main