M.M イリヤの空、UFOの夏 インプレッション


3、イリヤの空、UFOの夏 その3

2009/8/22更新


 …動いた。唐突に物語は動いた。そう、何時でもリアルは一瞬で来るんだ。そして今まで非日常だったのが日常になり、日常だったのが非日常になるんだ。という訳で「イリヤの空、UFOの夏 その3」の感想です。

 とその前に、無銭飲食列伝は面白かったですね。普通にありそうな大食いメニューの描写をよくもまあここまでリアルに文章で表現したものですよ。それだけでも十分に面白かったのに、ここにきてやっとイリヤの人間性を見る事が出来たのもまた良かったです。ちなみに私が思うに、この鉄人定食はおそらく一つ一つのメニューが一般の大食いメニューの分類になるんでしょうね。そう考えると、正直この二人は異常ですよ(そして水前寺も異常)。もし私だったら、鉄人餃子を食い終わったあたりで心折れてたでしょうね。そんな内容でした。

 そして、ここから先がこの「イリヤの空、UFOの夏」における起承転結の転に当たる部分だと思います。いきなりでしたね。殿山での爆発、そして始まった非常事態宣言、そしてそんな中での日常な学校生活。少なくとも今までの生活とは一変してしまった訳ですね。そんな中でもまさかイリヤが学校に来ているとは思いませんでした。ですがやはりイリヤは特殊な立場の人間、榎本に連れていかれて翌日には真っ白な髪ですよ。

 ここでも凄いのが、非常事態宣言が出されてもなお学校生活が普通だった事ですね。もっと言いますと、イリヤをはじめ園原基地関係者がまったく慌てふためく様子もなく普段通りを装った形で行動していた事です。むしろその中で唯一おかしかったのは、それこそイリヤの外見と体調くらいでした。真っ白になり全く機能を失った髪、そして翌日には盲目、そしてかつてない程の吐血。この時点で特殊な事情がある事は誰の目にも明らかですけどね。

 きっとこのまま浅羽も目をつぶって一般人と同じように振る舞っていれば、今の非常事態も程なく終わって今まで通りの日常が戻ってくるのでしょう。そしてそもそも園原基地の内情に関して浅羽は確実に外野の存在、たまたまプールでイリヤと出会っただけでそれ以上は本当は何もなかったはずなんです。そしてそんな事は浅羽自身が誰よりも分かっていたんです。それでも、浅羽はイリヤを浅羽の日常の生活に連れて行く選択をしました。そしてそれはイリヤも心の底で思っていた事です。前にイリヤが話していた同僚の死亡事故、この時点でイリヤは軍に忠誠を誓う事の空しさを悟ったのかも知れませんね。なんかこうして振り返ると、今までが壮大なプロローグでこれからようやく本編が始まるといった気がします。ようやく形ばかりの自由を手にしたイリヤ、UFOの夏はこれからが本番です。

 そしてその裏で姿すら現わさなかった英雄がいました。その名も水前寺邦博で、彼こそ一般人で殿山の墜落現場を目撃できたのでしょうね。このとき私は興奮というよりもうれしかったですね。なぜなら、水前寺が追い求めていた非日常の世界にようやくたどり着くことが出来たんですから。ただ、そのとき水前寺が見たものが何だったのか、そしてその後水前寺がどうなったのか、これに関してはさすがに分かりません。まあ、彼の事だから何とかなるだろうと信じてみます。

 とにかくあらゆる面で一気に場面転換しました。次回で最終巻みたいですが、はたして二人の物語はどこへ向かうのか。今から楽しみです。


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