M.M イリヤの空、UFOの夏 インプレッション


2、イリヤの空、UFOの夏 その2

2009/8/22更新


 …相変わらず物語が進みませんが少しずつイリヤの過去や目的について顔を出して来た感じです。そして第一巻から続いている独特の言い回しと高揚感は相変わらず健在です。という訳で「イリヤの空、UFOの夏 その2」の感想です。

 なんだかこの物語の主人公は浅羽直之ではなく水前寺邦博な気がしてきましたね。いったい何なんですかねこのハイスペックなキャラクターは。お約束とは言えここまで論理的に物事を見極め正確な調査を行い真実とそう遠くもない結論を導き出す、読んでいる方もスカッとする程の頭の冴え具合ですね。前に感想で「日常が非日常にアプローチする様子が面白い」と書きましたが、これがここにきて一気に加速した感じですね。何しろ水前寺邦博の予想が全て的確に当たっているんですからね。文化祭でのシオラマや出し物の中で隠していたビデオカメラの件と言い、なんだか本気でこいつなら園原基地の全貌を明らかにするんじゃないかといった気になってしまいました。

 そんな中で少しずつ(というかようやく)イリヤの感情や過去が現れてきた感じですね。やはりイリヤはある種のパイロットでした。そしてその機密性は自分の存在の痕跡なんか跡形もなく消されてしまうほどでした。はたしてイリヤはどんな立場の存在なのか、そして園原基地とはそもそも何の為に存在しているのか、ようやく園原基地の手がかりが分かるかと思えば全く分からないばかりか謎ばかり増えてしまいました。全部で4巻構成ということもあり、もしかしたらこの点については触れず結果だけ残す物語になるかも知れませんね。

 そしてこの物語の特徴のもう一つとしてあるのがやはり「全てのキャラクターの魅力性」ですね。実際「十八時四十七分三十二秒・後編」の視点は主人公である浅羽直之だけどころか浅羽父・浅羽母・浅羽夕子・須藤晶穂・水前寺邦博とほぼ全てのキャラクターでしたからね。そして、それぞれの視点での物語を組み合わせる事で同じ時間軸での出来事の裏表が全て明らかになる様に作られています。この辺りも作者の狙いなのでしょうね。キャラクターの心理状態、表と裏で繰り広げられているイベントと思惑、どんどん盛り上がっていく旭日祭、普通にワクワクしました。この物語における非日常の部分はイリヤを取り囲む一般人には触れる事の出来ない部分ですが、この旭日祭の時間の間も普通の学校生活を行っている生徒にとっては十分「非日常」な訳ですし、第一巻程の謎は無いにせよ同じような高揚感を感じました。

 そして、そんな普通の非日常の中でいよいよ特殊な非日常の物語が動き出しました。ようやくですよ、イリヤ側の物語が動き出したのは。第一次待機というものがどういうものかは分かりませんが、明らかに基地関係者の言動や行動が異常です。イリヤの行動も異常です。そんな中でとりあえずこの「十八時四十七分三十二秒・後編」に関してはきれいに終わりました。浅羽直之が掴みたかったイリヤの内面に触れようともがいた結果が、おそらくはイリヤも乗っていると思われる飛行機の集団でした。昔みた憧れの景色に興奮する浅羽直之、確かに彼にとって旭日祭は終わりを迎えましたが、果たして非日常では何が起こっているのか。いよいよこの「イリヤの空、UFOの夏」も後半に突入です。そろそろ物語が進んでもおかしくないでしょう。楽しみにしましょう。


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