M.M 半分の月がのぼる空 インプレッション


7、半分の月がのぼる空7 another side of the moon-first quarter

2009/6/28更新


 さて、前巻で半月の本編は終わりました、そしてここからは完全に本編の流れから外れて時系列もバラバラの短編集となります。一つ一つが約50ページ程度の長さの物語で手軽にさくさくと読む事が出来ました。ということで感想も各章ごとに書いていこうと思います。

 まずは「雨(前編)fandango」ですが、これはおそらく前巻からまた少し時間が経って秋の出来ごとです。季節は文化祭、やはりこういった季節には予期せぬ出来事やイベントがつきものですね。まだ前編ですので物語の導入部分しか話されてません。そういう訳でこの段階で感想を書くのは筋違いかも知れませんが、後編に向けて非常に興味深くなる部分で切ってますね。おそらく里香は演劇を行うのでしょう。亜希子や夏目も見に来るのでしょう。そして、裕一の古典ロシア映画上映会の真相はあっさり里香にばれるのでしょう。とりあえず後編に向けて色々と伏線を投げてますので、それらが上記の予想からいい意味で外れる事を期待してます。

 次に「気持ちの置き場所」ですが、これはまだ裕一が入院生活を始めたばかりの事の話です。多田さんもいるので本編での一巻辺りと同じ時系列ですかね。この物語の主役は亜希子です。本編でもほとんど語られなかった亜希子の故郷や家族、そして恋にまつわるエピソードの多くが含まれています。ここでポイントになるのはやはり亜希子は今でも過去の思い出を引きずっているという事ですかね。自分が過去に犯した失態、そんな事が見知らぬ男性と出会う事で思い出し心をときめかせるなんて、やはり亜希子さんも普通の女性ですね。まあ、この話はもはや恋心と言える段階ですらないところで終わってるので盛りあがりという意味では薄いのかも知れませんけど、どこかヤキモキさせるエピソードでした。

 次に「君は猫缶を食えるかい?」ですが、これは完全にコメディですね。内容はホントタイトル通りです。ていうか最後に作者自身がわざわざこの質問を読者に向かって投げています。ただこれだけです。ですが、ここでもまた過去の思い出が語られてました。今まで半月を読んできて思った事ですが、ホント多くの場面で登場人物の過去のエピソードを描いてますね。そして、それを踏まえて現在での心理描写を描いてます。この手法は橋本紡のやり方なんですかね、実に効果的だと思いました。これが一本入るから、こんなどうでも良いようなエピソードでも心に残るエピソードになるんですね。最後に一つ質問を。君は猫缶を食えるかい?

 最後に「金色の思い出」ですが、これは先の「気持ちの置き場所」の続きっぽいですね。ですが物語の主役は里香に写っています。話の流れは「高瀬舟」を読んでどう思ったか、そしてかつては自分の父親の本だったこれを今自分や裕一が読んでいるという事でやはりまた過去に思いを馳せる、といった感じですね。今までで一番シンミリと書かれてますが何故か一番印象が薄かったですね。まあ、このエピソードの内容は似てるだけですが全て本編で語られてますので、そういう意味で印象に残らなかったのかも知れません。まあ、最後に「まだなにも始まってなかったころの話ーーー。」とあえて書いているだけあって、それほど深く考えるものでもないのかも知れません。そんなエピソードでした。

 という訳で完全に短編集に移った半月ですが、今まで語られなかった部分まで細かく描かれてますので読んでいてなるほどと相槌を打つ場面が多いですね。もしかしたら、橋本紡は本編では各キャラクターの心理描写を全て表現しきれなくて、こういった短編集で補っているのかもしれませんね。そんな短編集も次で最後です。それは即ち次回が最終巻ということになります。何だかあっという間という感じですね。という訳で最後はちょっとペースを落としてゆっくり読んでみようと思います。とは言っても直ぐに終わるんでしょうけどね。


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