M.M 半分の月がのぼる空 インプレッション


3、半分の月がのぼる空3 wishing upon the half-moon

2009/6/28更新


 今回もシナリオはほとんど進まなかったですね。ですがそんなことよりも気になった事があったのですが、文章を読んでいてどうにもこうにも地に足がつかないと言いますか、どこか現実とは違う視点で見てると言いますが、全く「半月」の世界に入っている感覚がしなかったんですね。で、その原因は最後に明らかになりました。そうです、月が出てなかったからです。

 月は裕一と里香の象徴です。その月は2巻の途中からずっと隠れたままになっています。だからなんですかね、どこかフワフワした感覚が漂っていたのは。ですがまあ原因はそれだけではありません、今回の感想を書く「半分の月がのぼる空3」の2/3は裕一を中心としたキャラクターの深層心理で構成されているからです。

 死というもの直視できていなかった裕一はその事で里香に壁を作ってしまいました。なので、とにかく上辺だけでも取り繕って里香を喜ばせようとします。だから、カメラを取りに行ったり学校に潜入したりと無茶な事でも必死にやる事が出来たのです。裕一の心は里香の事でいっぱいいっぱいです。なので、幼馴染のみゆきと久し振りに会ってもどこか上の空です。まあ、そんなバレバレの態度だからみゆきもずっとむつかしい顔をしていた訳ですけどね。

 それでもやっぱり裕一は無理していたんですね。里香の事が心配だ、でも自分は何もしてやれない、そんな自分が悔しい、こんな思いが重なってつい美沙子さんの誘いに乗ってしまったんですね。もうね、男は一回これにはまってしまうともうどうしようもなくなるんですね。そんな自分の深層心理に気付いてしまいさらに自己嫌悪する裕一です。自己嫌悪するからこそさらに明るく振舞おうとします。今までの不甲斐ない自分を許してもらうかのように、里香と本当の意味で心を通わせられるようになるために。

 そんな中でも発作と手術です。もしかしたらこれで里香の命運が決まるかも知れないのです。里香に借りた本「チボー家の人々」とカメラを持ってただひたすら待つ裕一、そんな中で裕一は里香の心を知る事になります。裕一の写真をお守りにした里香、里香だって怖いに決まってます。そんな里香が裕一の写真をお守りにしたのです。そして里香に借りた本「チボー家の人々」に込められた里香からのメッセージ


#『きみの精神状態は、無感覚か、肉欲か、恋愛か、そのいずれにありや?ぼくをして言わせると、むしろ第三の状態にありと思う。前二者にくらべて、ずっときみらしいから』
#『このごろのぼくの陰気さをゆるしてほしい。ぼくはたしかに、生成途上にあるにちがいないのだ』
#『友よ、きみは苦しいのか?』
#『ぼくらはあまりにも考えすぎる』
#『卑怯な振舞はぜったいにやめよう!嵐に向かって突進するのだ!むしろ進んで死をえらぼう!
# われらの愛は、誹謗、威嚇の上にある!
# ふたりでそれを証明しよう!』


そして…


#『命をかけてきみのものになる』by R


ここに来てからようやく現実に帰って来た感じがしました。ようやく裕一は気づけたんです、自分の行動が決して贖罪なんかじゃない、ただ里香と一緒にいたい、里香に生きてもらいたい、里香が居なければ自分は何も出来ない、そんな素直な自分の気持ちに気づけたんです。

 だからこそ「半分の月が」帰って来たんですね。これで本当の気持ちで里香を待つ事が出来るようになった訳です。ですが、夏目に言われた事はそんな気持ちを無にしてしまうような残酷なものでした。


#「おまえにとっちゃ、たぶん最悪の結末だ」


果たしてこれからどうシナリオが進むのか。次の4巻が待ち遠しいです。


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