M.M 時空改札のフェアリーテイル CounterClockwise




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 5 7 83 6〜8 2018/10/9
作品ページ サークルページ
(作品ページと同様)



 この「時空改札のフェアリーテイル CounterClockwise」は、先に発売された「時空改札のフェアリーテイル」「時空改札のフェアリーテイル SpringPoint」の続編となっております。その為レビューには「時空改札のフェアリーテイル」「時空改札のフェアリーテイル SpringPoint」を含めたネタバレが含まれておりますので、ネタバレを避けたい方は避難して下さい。

「時空改札のフェアリーテイル」のレビューはこちら
「時空改札のフェアリーテイル SpringPoint」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。前作と本作の両方をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。





















































































<一人で解決出来なくても皆がいれば解決できる。そう、時空列車を通したセトの周りに集まった皆がいれば。>

 自分が根を下ろす事が出来る場所を見つける為に時空列車に乗ってきた登場人物達、そして彼らの中心にいたセトが覚悟を持って受け入れる温かいシナリオが印象的だった「時空改札のフェアリーテイル」、高校生らしい思春期特有の思考や行動がこそばゆく、また愛知県をプッシュしている舞台設定や背景などがとても印象的でした。そんな時空改札のフェアリーテイルのスピンオフと思われた「時空改札のフェアリーテイル SpringPoint」、ここから一気にファンタジーからSFへと変貌を遂げました。時空列車の意味、セトの果たすべき役割、特異点の正体、そういった伏線がどのように解決されるのが、それを楽しみにプレイし始めました。

 時空を行き来する物語において、ほぼ必ずと言っていい程の設定があります。それが因果律です。物事の結果には原因がある、そんな当たり前の全体を、時空列車は崩す事が出来るのです。ですがそれは必ずしも同じ時間軸であるとは限りませんでした。世界は選択の数だけ無数に広がります。つくでがとみかに襲われる世界or襲われない世界、セトが気胸で死ぬ世界or手術を行い死なない世界、あつみが一酸化炭素中毒で死ぬ世界or死なない世界、これらも全て原因を取り除けはいくらでも選択の幅は広がるのです。ですが、因果を変える事は非常に大変な事。慎重に考え行動し、数少ないチャンスをものにする事が必要でした。それを、セトはやり遂げたんですね。

 ですが、それでも2016年9月19日に発生する伊勢湾海底火山大災害を防ぐ事は出来ませんでした。未曾有の大災害です。とても人間一人の力でどうにか出来る物ではありません。セトが何度時空列車に乗っても、どれだけ手を尽くしても大切な人を守る事は出来ませんでした。これが本シリーズの特異点、この大災害を解決する事が時空列車の役割でした。この演出はゾクゾクしましたね。実際のNHKの生中継を模した背景や演出は鳥肌物でした。こういった映像の細かさや音声のリアルさは、流石みらいチューンのクオリティだと思いました。

 ではこの未曾有の大災害を防ぐことは出来ないのでしょうか。そんな事はありませんでした。セトは始め自分ひとりで解決しようとしました。彼なりに一生懸命考えて行動したのです。ですけど達成できませんでした。それならば、周りの人を頼ればいいんですね。セトの周りには沢山の人がいました。未来からやってきたころも・つくで・さおり・こまき、過去からやってきたサヤ、姉であるあつみやクラスメイトであるえな・とみか、担任の関先生、時空列車の運転士である時切、実の母親と父親もいました。セトの周りにはこれだけの人がいるんです。この信頼関係があれば、どんなに解決できない問題でも絶対に解決できますね。時空改札のフェアリーテイルのレビューでも書きましたが、セトは多くの人が根を下ろせる場所です。そんなセトなのですから、困ったら皆に助けを求めればいいんですね。それが出来た時、物語は解決しておりました。

 振り返れば、セトを巡る因果は2006年8月17日の触車事故から始まってました。苅安賀家の運命は、ある意味ここを起点として動き出したのかも知れません。想像以上に多くの想いと事象が絡み合ってました。そして、その事象のどれか一つが欠けただけで未曾有の大災害は解決出来ませんでした。時空列車によってマグマを西之島へ移動させる計画、これも時空指令からの時間稼ぎが出来たからこそ成功しました。一つ一つの小さな因果も、積み重なれば特異点を超える事が出来る。そんなSFの醍醐味に溢れた素敵なシナリオでした。

 みらいチューンさんによる徹底されたロケハン、そしてリアリティを持たせる映像技術、それらの拘りが列車という点と点を繋ぐものの存在感を表現しておりました。実際に鹿児島中央まで電車で行きたくなりましたからね。そしてやはり地元愛知を愛している雰囲気を感じました。思春期特有の言動や思考、そしてそこから大人になっていく成長の様子も見る事が出来ました。トータルで15時間くらいのプレイ時間でしたが、それら全てを使って時空列車の魅力を味わる事が出来ました。これからも、誰かが根を下ろせる場所を目指して時空列車は走り続けるのだと思います。自分が大切にしたいもの、それを胸に抱いて今度は乗ってみても良いかなと思いました。楽しかったです。ありがとうございました。


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