M.M ふたしかなところ ~the world of resonating~ (後編)




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
8 6 - 82 1〜2 2017/7/2
作品ページ サークルページ



 この「ふたしかなところ ~the world of resonating~ (後編)」は、先に発売された「ふたしかなところ -the start chapter-」「ふたしかなところ ~the world of resonating~ (後編)」の続編となっております。その為レビューには「ふたしかなところ -the start chapter-」「ふたしかなところ ~the world of resonating~ (前編)」のネタバレが含まれておりますのでご注意願います。

「ふたしかなところ -the start chapter-」のレビューはこちら
「ふたしかなところ ~the world of resonating~ (前編)」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。本作をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。





















































































<人は人と会わずにはいられない。それがきっと人間の本質なんだろうなと思います。>

 全ては繋がっておりました。2002年6月30日に起きた一つの交通事故、ここから健・美弥妃・キルシーの運命は絡み合っていたんですね。自分のせいで健が下半身不随になってしまったと後悔したキルシー。そんな健を救う為に日記の力を利用し、健はIBに招かれたのですね。そして自分のせいで美弥妃の右腕が無くなってしまったと後悔した健。そんな美弥妃を救う為にIBを駆けずり回り、最後には全身麻痺になってしまったんですね。最後、キルシーは日記に何を書いたのでしょうか、何を願ったのでしょうか。願わくばまた、3人が笑顔で楽しく過ごす姿を見たいものです。

 美弥妃と過ごす日常を壊したくない。そう決意した健の行動は傍から見たら狂ってるとしか言えないものでした。オカ研のムードメーカーでありクラスメイトのカオリが行方不明になって、健は彼女をそもそも居ないものとして消し去る事を提案しました。健の体に不調が出始めている事に気づきそんな健の力になろうとした如、それでも健は無情に如を切り捨て結果退部する事になりました。表には出さないもののオカ研の事を大切に思っていた飯塚先生もまた、退職届を出し姿を消してしまいました。それもこれも全て美弥妃の為。美弥妃さえいれば、オカ研なんていらない。そんな孤独な戦いは、実を結ぶことはありませんでした。

 結局のところ、IBについてもキルシーについても本当のところは何も分かりませんでした。現実世界と何らかの干渉がある不思議な世界、そしてそんな世界で一人生きている女の子。人知を超えた存在に、人間が関われる要素はありませんでした。彼女はただそこにいるだけ。そこにたまたま健が現れただけであり、健が居ても居なくても彼女の生活が変わるものではありませんでした。それでも、健がIBに来て他愛のない会話をする時間は実はとても大切なものであり、それがIBでの日常となり掛け替えのないものとなっていきました。いつの間にか、キルシーは不器用ながらも誠実な健の事が好きになっていたんですね。彼女が健の事を外に出したくないと思ったのは間違いなく本心から出た言葉。一人だった彼女にとって、健の存在は無くてはならないものに変わっていたんですね。

 そうであるなら、どうして2002年6月30日のあの日にキルシーは現実世界に出てしまったんでしょうかね。全ての不幸はここから始まり、全ての物語はここから始まりました。この時キルシーが現実世界に出なければ、健は下半身不随にならなかですしそもそも美弥妃は怪我すらしませんでした。ただ、現実世界で健と美弥妃が当たり前の日常を過ごし、IBでキルシーが当たり前の日常を過ごすだけでした。思うに、これもまたキルシーが望んた事なんだと思います。もしかしたら、最後の日記でキルシーが書いたことはこういう事だったのかも知れませんね。「向こうの世界でも、逢えるといいね」「ーー願わくばまた、あの頃の君に」。口癖のように呟いていたそのセリフに、キルシーの全てが詰まっていたのかもしれません。だとすれば余りにも悲しい運命。出会うことを望んだのに出会ったら不幸しか待っていない。それでも人は人と会うことを求める。それがきっと人間の本質なんだろうなと思います。

 そろそろまとめようと思います。前半の和やかな日常と好奇心そそられる雰囲気からは一転、重々しい空気と悲劇しか待っていないシナリオ展開は後編らしくよく演出されておりました。徹底的に暗いBGM。変化のない表情差分。一人また一人と消えていくオカ研のメンバー。徐々に体が蝕まれていく健。それでも美弥妃との生活を夢見て足掻いた結果、自らそれを放棄する結果となりました。余りにも悲しい結末ですし余りにも報われない結末。それでもせめて自分の気持ちは伝えたい。そんな儚い思いは達成されました。日記に書かれたことは他人に見ることは許されません。であるならば想像するしかありませんね。彼ら3人の、幸せになる結末を。ありがとうございました。


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