M.M ぞでぃあーくりんぐ




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
10 9 9 92 15〜20 2019/5/25
作品ページ(R-18注意) サークルページ(R-18注意)



 この「ぞでぃあーくりんぐ」は、前作である「Zodiarc」の続編となっております。その為、レビューには「Zodiarc」を含めたネタバレが含まれていますので、「Zodiarc」のネタバレを避けたい方は注意して下さい。

「Zodiarc」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。「ぞでぃあーくりんぐ」をプレイされた方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。





















































































<幸せになる事は誰かが自分を認知してくれる事。たった1人でもそんな人に出会えたら、こんなに嬉しい事は無い。>


「それでも、誰かに見守られて死ねるなんて……こんなに嬉しいことは他に無い…。」


 魔法使いが恋をし、そして全ての人の幸せを願った物語を描いだ「Zodiarc」もようやくこれで締めくくりとなりました。本編から数えて最終的に55時間を超える非常に長いプレイ時間の中で、ほんの些細な願いの為に精一杯生きる人たちを見る事が出来ました。幸せの形は人それぞれ、たとえ恋の果てにその想いが報われなくても幸せになる事が出来る。そして、そんなあなたを見てくれる人がいる。それはとても素敵な事だと思います。

 そして、この作品を通して「幸せになる事=誰かが自分を認知してくれる事」なのかなと思いました。輪廻の輪から外れて誰にも見られず誰にも触れられない存在となってしまったシュガーレッド、そんなシュガーレッドに対してコノハは認知する事も出来ますし触れる事も出来ました。この時の喜びは、もう理屈とかではないのだと思います。もはや本能的な物、人間が人間である以上誰かに触れられるという事はそれだけで幸せな事なんだと思いました。過去の世界で確かにシュガーレッドはベロニカとの未来を約束しました。ですが、そのベロニカとは触れ合う事は出来ませんでした。私がこの作品の中で一番心に来たシーン、それは過去の世界からずっと渡そうと持ってきたプレゼントのヘアバンドが、言葉も心も通じ合ったのにも関わらずベロニカに渡せなかったシーンでした。もう、受け取れないんです。この時の2人の様子は、もう見ていられませんでしたね。

 例え触れられなくても相手を想い続ける事こそが真実の愛、そう思う人もいると思います。例え遠距離恋愛が何年続いても、その後ちゃんと結ばれる恋人もいます。それでも、やっぱり一人は寂しいんですね。何とかして自分は一人ではないという事を証明しようとする、それが人間なのかなと思っております。私がレビューを書くのも、HPを運営しているのも、Twitterで呟くのも、そんな原理が根本にあるのかも知れません。もしかしたら、結婚の目的は「死が分かつまで自分は一人ではない」という事を証明したい為なのかも知れませんね。家族という存在が大切にされるのも「例え離れていても絶対に信頼できる存在」が欲しいからなのかも知れません。

 自分が一人ではないという事に絶対の自信を持てる、これが愛の本質なんだと思います。恋愛・家族愛・自己愛、愛の形は様々ですがそのどれもが孤独ではないという事の証明です。人を愛する、作品を愛する、世界を愛する、その全てはその対象を絶対的に信頼している証拠です。そういった物を持てた人は、確かに幸せに見えますね。活き活きとしている様に見えますし、輝いて見えます。縋るのではなく信頼する、これが出来る事のなんと難しい事か。相手の見えない気持ちをどうやって信頼するのでしょうか。相手からどうやって信頼されるのでしょうか。こんなもの、答えなんてある筈がありませんね。だからこそ、自分が求める愛を手に入れる為に、足掻くのかも知れません。

 「Zodiarc」の中でも、どれだけ一人という言葉が出てきた事でしょうか。「どうして俺だけ一人なんだ」「アタシのこと……一人にしないでね…?」「お前は、俺を一人にしなかった」、みんなみんな自分が一人になる事を恐れてました。一人は怖いんですよ。強がっても仕方がないですね。恋人でも家族でも友達でも、それこそ他人でも誰かに認知してもらいたい。これが本当なんだと思います。シュガーレッドはそれを身を持って体験しました。ベロニカもコノハも、自分の気持ちに相手が応えてくれない寂しさを感じました。その気持ちを知っているから、誰かが見てくれる事を嬉しく思えますし、同じく寂しいと思っている人に対して優しく出来るのだと思います。

 レビューの冒頭、世界の終わりEDの中でシュガーレッドがリリーナに伝えた言葉です。ベロニカと結ばれ、子供が出来て、そんな愛しい2人が死んで、更に1,000年もの時間が経過して、人類が誰もいなくなった世界。そんな究極の孤独においても、シュガーレッドの傍にはリリーナがいました。どんなに孤独になっても誰かが見守ってくれる、こんなに嬉しい事はありませんね。しかも、シュガーレッドとリリーナは一心同体です。どちらかが取り残される事も無いのです。本当、この2人はなんて幸せなんでしょうね!あまりにも羨ましくて、涙が出てしまいます。多くを求めなければ人はこんなにも幸せになれる、たとえ人並みの生活が出来なくても誰か1人が見てくれればそれでいい、それをシュガーレッドから教えて貰いました。

 魔法使いは恋をしました。そしてその恋の殆どは報われませんでした。その代わりに、魔法使いは孤独の大切さを、幸せの形を知る事が出来ました。孤独を知ったから誰かを求めようとする、あれだけ嫌がっていた孤独に親愛すら向けたくなりそうです。あなたは、自分は孤独ではないと思えますか?例え自分を見てくれる人がいなくても、自分を見てくれる人がいると自信を持って言えなくても、少しでも頭をかすめる人がいますか?街を歩いていて、他人の笑顔が見えますか?そんな瞬間に、人は幸せを感じるのかも知れません。私も、仕事や趣味、作品を通して誰かの繋がりを感じられる人生を送りたいと思いました。素敵な作品を、ありがとうございました。


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