M.M WORLD END ECONOMiCA Episode.3


 この「WORLD END ECONOMiCA Episode.3」は前作である「WORLD END ECONOMiCA Episode.2」及び「WORLD END ECONOMiCA Episode.1」の続編となっております。その為レビューには「WORLD END ECONOMiCA Episode.1」「WORLD END ECONOMiCA Episode.2」のネタバレが含まれていますので、「WORLD END ECONOMiCA Episode.1」「WORLD END ECONOMiCA Episode.2」のネタバレを避けたい方は避難して下さい。

・「WORLD END ECONOMiCA Episode.1」のレビューはこちら
・「WORLD END ECONOMiCA Episode.2」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。全ての「WORLD END ECONOMiCA」をプレイされた方のみサポートしております。


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<全ては人の想いで成り立っている、それが月面の魅力であり月面の全てでした>

 お金の価値とは信頼の証であるとは金融界ではよく聞く言葉ですが、それが全ての世界がこの「WORLD END ECONOMiCA(以下WEE)」の世界でした。信頼するから人は商品を買うし投資を行う訳です。信頼を失えばその商品は買われませんし投資もされません。そして物の価格は信頼の証であり、価格の高いものが世界を掴む事が出来ます。月面はそうした人の根源的な欲求や想いが純粋に詰まった場所であり、そんな月面で生き残るためには全てにおいて信頼を得る必要があった訳ですね。

 ヨシハルはいつの間には「月面の英雄」と呼ばれておりました。それは不正を働いていたアバロンを時の大統領と共にうち滅ぼし、全てが自由である月面における最大の正義を取り戻した存在だからです。圧倒的な知名度と名誉を得たヨシハルですがその手法は「足の長いロバ」と呼ばれ、リスクを極力避ける慎重な姿勢は多くの信頼を得ておりますがどこか物足りなさを感じておりました。そんな中で過去に自分を頼っていたクリスは自身の編み出した手法であるABSで成功し自分の好きなように突っ走ってました。またエレノアは自分自身の思いに決着をつける事で一歩前に進んでおりました。圧倒的な知名度と名誉を得たヨシハルですが2人が自分よりも確実に前に踏み出している様子に少なからず羨ましさを感じておりました。

 しかしそれはヨシハルがお金を稼ぎ前人未到の地へたどり着く事を諦めた訳では決してありませんでした。むしろその思いは消えるどころはしっかりと心の奥底で燃え広がっており、最終的に不動産バブルの崩壊を見抜いて数百億ルームという利益を勝ち取りました。この姿こそが8年前にハガナと共にマネーゲームを行っていたヨシハルの姿そのものであり、一度は全てを失ってからも決して消える事が無かった思いでした。この姿こそが月面で最も称賛を受けるものであり、「足の長いロバ」でありながら多額の利益を手に入れた姿は間違いなく月面での成功者そのものでした。

 そしてそのヨシハルの思いは彼のもう1つの目的であったハガナとの再開にもつながりました。一度はやはりバートンの手のひらで踊らされている自分の無力感に潰されハガナと昔のように心を通わせる事を諦めておりましたが、最終的に自分が8年前から思っていた前人未到の地への夢を持ち続ける事が出来たからこそ持ち直す事が出来たのだと思います。結局のところヨシハルもハガナも8年前に2人肩を並べてPCの前で戦っていた時と何ら変わってはいなかったのですね。数学や経済の事に頭がいっぱいでそれ以外の部分については子供同然でした。そんな2人だからこそ月面最大の危機を乗り越えられたのだと思っております。

 最終的にヨシハルとハガナが選んだ手法は人の想いを信じる事、つまり人の想いに投資するという事でした。ヨシハルにとって最大の仮想的であるバートンですら信じ切って商談を成立させたのはそんな人の想いを信じ切る強さを持っていたからだと思っております。経済の流れはある程度は数学でシミュレートする事が出来ます。ですが最終的にお金の流れを決めるのは人の想いであり、それは時として数学では導き出せない結果を生み出します。それくらいの面白味が無ければ経済がここまで発展するはずがありませんものね。一度は目をそらした8年前に描いていた熱い思い、それが最高の形で実を結ぶ事となりました。

 この作品はとにかく金融への拘りが強く時として置いてけぼりを食らいかねない程の専門性の高い文章でした。ですがそれこそが同人だからこそ成し得た文章であり、シナリオライターの心意気を感じる事が出来ました。何よりも金融という一見人の心の入る余地のない世界の話に見えましたがその中に登場する全てのキャラクターに想いがあり信念がありました。そしてそんな人の想いと信念を存分にぶつける事が出来る世界がこの月面であり、それこそが月面の魅力でした。線も性の高い文章の中に見え隠れする人の想い、そしてそんな激動の世界の中で確実に成長していく主人公を始めとした登場人物の信念に触れる事が出来た作品でした。トータルプレイ時間は約20時間と非常に多くの時間を注いだWEEでしたが、このようなシナリオライターの想いを感じる事が出来る文章は同人だからこそ出来るものであり同人の魅力だと思いました。ありがとうございました。


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