M.M WORLD END ECONOMiCA Episode.2


 この「WORLD END ECONOMiCA Episode.2」は前作である「WORLD END ECONOMiCA Episode.1」の続編となっております。なので、この「WORLD END ECONOMiCA Episode.2」のネタバレ有り・ネタバレ無し双方のレビューに「WORLD END ECONOMiCA Episode.1」のネタバレが含まれていますので、「WORLD END ECONOMiCA Episode.1」のネタバレを避けたい方は避難して下さい。

・「WORLD END ECONOMiCA Episode.1」のレビューはこちら

※「WORLD END ECONOMiCA Episode.2」を未プレイでもネタバレ無しのレビューはご覧になれます。


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<4年前に失ったものを取り戻すためのプロローグ>

 この「WORLD END ECONOMiCA Episode.2(以下WEE2)」という作品は同人サークルである「Spicy Tails」で制作されたサウンドノベルです。タイトルの通りこの作品は前作である「WORLD END ECONOMiCA Episode.1(以下WEE1)」の続編であり、発売されたのはC82でした。世界観などの詳しい紹介はWEE1のレビューで書いてますのでそちらをご覧になって頂きたいのですが、基本的な世界観はWEE1もWEE2も同じであり、WEE1が気に入った方であれば問題なくプレイ出来る作品だと思っております。というよりもWEE1のあんなエンディングを見てしまった以上WEE2をやらないという選択肢は無いと思いますけどね。感想ですけど、WEE1の続編として相応しいシナリオ展開であり、WEE1とは違ったテーマを持った作品だと思いました。

 OHPを見れば分かりますがWEE2はWEE1から4年後のエピソードです。WEE1は自分の夢の為に走り続け、それが故に決して手を放してはいけない者の手を話してしまったことで全てを失ってしまった物語でした。あれから4年経過した訳ですが、未だにヨシハルの体の不調は残り続け4年前に失った本当のものを見つけられずにいます。そんな中で新たに出会う少女との物語は幕を開け、その中でヨシハルは4年前に自分が失ったものを取り戻すために再び金融世界の中に飛び込んでいくわけです。

 正直あらすじとしてはこれ以上書きますとネタバレになりますので書くことは出来ませんが、WEE1をプレイされた方にとってWEE2は心待ちにしたのではないでしょうか。あれからヨシハルを突き動かしたものは何なのか、そもそもハガナはどうなってしまったのか、気になる数多くの伏線が投げっぱなしになっております。それらの伏線に対してWEE2では一定の答えを用意しておりますので全てのプレイヤーの期待に応えられると思っております。そしてこのシリーズは全部で3部作です。もちろんWEE2でも完結しませんので、WEE2をプレイすれば自ずとWEE3もプレイしたくなるでしょうね。

 そしてWEE1で表現された月の世界の近未来的SF、金融世界、そしてヨシハルの数字からその裏にある人間の考えを読む力は健在であります。これは間違いなくシナリオライターの拘りでしょうね。世界観に拘りをもって妥協することなく書き続けるポテンシャルは失われておりません。WEE1をプレイして難しいと思った方、WEE2でも難しいと思うでしょうね。ですが難しいのは金融世界の話であって近未来的SFはWEE1と同じですので幾分は和らぐのではないでしょうか。まあ、WEEはヨシハルが誰も辿り着いたことのない地へ向かう物語でありその為に月で一番の金持ちになる物語でもありますので、この金融部分が無くなったらそれはもはやWEEとは呼べなくなるとも言えますね。

 何れにしてもWEE1が気に入ったのであれば是非プレイして頂きたいですね。心半ばに自分の夢を打ち砕かれたヨシハルがその後どうなったのか、気になっている方はもうプレイするしか解決す方法はありません。プレイ時間もWEE1と同じくらいですので忙しい方でも片手間でプレイできると思います。おススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<自分が失ったもの、そして取り戻さなければいけない物はなかなか見つからない。>

 やっぱりヨシハルが負った傷は相当に深かったんですね。エレノアに誘われてクリスに励まされて理沙に叱咤されて再び金融世界へ飛び出していった訳ですが、それですら4年前に失ったものを誤魔化しているに過ぎなかった訳ですからね。それでも最後の最後で本当の意味で4年前に失ったもの、そしてそれを取り戻す方法を見つけたわけです。WEE2はそれを見つけるための長い長いプロローグだったと言えると思います。

 エレノアの誘いを受けてヨシハルは少なからず興奮していました。それは間違いなく自分の本当の気持ち、それは金融の世界で走り回る事が好きだという事の現れです。そしてヨシハルは再び自分が金融の世界へ飛び出すことでそれがかつてハガナの手を振り払ったことへの免罪符になると思ったんでしょうね。まあ実際ハガナがヨシハルが金融の世界とは程遠いお役所仕事をしている姿を見たら幻滅するでしょうしその考えは間違ってはいないと思います。ですが、その免罪符ですらヨシハルが本当に取り戻さなければいけない事の誤魔化しでしかありませんでした。

 最後の最後でヨシハルは何故エレノアの誘いを受けたのかを自問するわけです。エレノアと組んでアバロンを打つ、それはアバロンを不正を許さない事であり、エレノアとヨシハルの正義に叶っていると思いました。ですがある意味ここでもヨシハルは思考停止の状態だったんですね。アバロンを打つこと、それは自分たちの正義と引き換えに何千何万の人間を犠牲にする事だった訳ですからねかつてヨシハルが行ったことは自分の周りの人間を救う事でした。アバロンを打つことは、その人たちの生活を壊すことになる訳です。逆に言えば、こんな簡単なことにすら気づかない程にヨシハルが失ったものは大きかったという事が出来ると思います。

 そしてそれは皮肉にも宿敵であるバートンの言葉で気づかされるわけです。思考しているか?自分の中では答えが出ているはずのそんな当たり前の問いで改めて自分が行おうとしている事の本質を向き合えたわけです。そしてそれは自分の周りの人間の事を思い出させる事にもつながり、危うくクリスという大事なパートナーを失うところでした。これでヨシハルは初めて4年前に失ったもの、そして取り戻さなければいけないものに気が付くわけですね。それは何か?ずばりハガナだったわけですね。

 いや〜自分が失ったものって中々見つからないんですね。見つかったとしてもそれが本当に失ったものかを判断するのも難しいですね。人って、問題に対してその答えが見つかったかもと思うだけで安心してしまって、少なからず思考停止になってしまいますね。私も仕事をしていて課題にぶつかったときに、これさえ行えば解決できると思った瞬間その他のやり方が途端に見えなくなってしまいますからね。失ったものがあり、それの糸口が見つかっても最後まで思考し続ける。それが本当の意味で失ったものを取り戻す唯一の方法なのかも知れません。

 きっとこれからヨシハルを待っている現実は過酷なものかもしれません。アバロンを打つことも出来ず、ハガナも見つからず、仮に見つかっても最悪の形での再開かも知れません。バートンにもまた揺さぶられる事でしょうし、そのたびに自分が行ってきたことに対して疑問を抱くことになるでしょう。ですが、それはヨシハルが自分の周りにいる人を信じる事で何とか乗り越えられると思います。そして常に思考し自分の夢を失わなければ、きっとヨシハルが到達したかった前人未到の地へたどり着けると思います。そんな事を期待して、気長にWEE3を待とうと思います。


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