M.M 黄昏コントラスト 〜去るものは日々に疎し〜


 この「黄昏コントラスト 〜去るものは日々に疎し〜」は前作である「黄昏コントラスト」の続編となっております。その為レビューには「黄昏コントラスト」を含めたネタバレが含まれていますので、「黄昏コントラスト」のネタバレを避けたい方は避難して下さい。

・「黄昏コントラスト」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。前作と本作の両方をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。





















































































<死者に対して生者が出来る事は何か、それを問いかけた物語>

 短いながらも夏の田舎を舞台にした爽やかな伝奇物ということで印象に残っている「黄昏コントラスト」の追加シナリオという事で、私の中で非常に楽しみでありました。夕と愛姫が成就されながらもどこか煮え切れない思いを抱えている主人公ですが、そんな思いが「八津ヶ谷の秘宝」という男心をくすぐる言葉と「姫」と呼ばれる新ヒロインであるネルヴァの登場によって動き出すことになります。何が主人公の中で煮え切れていないのか、そして八津ヶ谷の秘宝とネルヴァの目的は何か、色々と注目するべき点を持ちながら軽快なテンポで物語は進んでいきました。

 前作の出来事を経験して全ての登場人物が自分自身を変えようとしておりました。それは表向きには花凛が髪を切り美紅が自分の力をコントロールする訓練を積み始めるといった部分に現れておりますが、その根底には「好きな人を好きな自分を嫌いになりたくない」という純粋な想いがありました。どこか諦めて自分の境遇を捉えていた登場人物たちがそれを超えようとする様子は実に爽やかで、それだけで物語は動いてしまいそうでした。そしれそれはネルヴァや江里にも垣間見る事が出来ました。誰もが現状に満足しておらずそれを変えていきたいという気持ちを持っており、それを実行できる心の強さを持っておりました。

 そしてそんな中で主人公の「愛しいお姫様を守る」という想いに変化はありませんでした。全ての物語はここから始まった訳ですので、やはりこの想いが変化する事は考えられませんね。ですが、今作で注目するべきは「どうやって愛しいお姫様を守るか?」というところでした。初めはネルヴァが姫と呼ばれていた事や秘宝というものに対する好奇心で動いておりましたが、後半で夕と真凪と再開しながら再び2人を失う場面で改めてお姫様を守るという事がどういう事のなかという点について向き合う事になりました。

 そしてその答えが今作のテーマでもある「死者に対して生者が出来る事は何か?」という問いかけになる訳です。夕は言ってました、「死を恐れ生に執着するからこそ人間である。」と。死んだ人が蘇るのは生きている人にとっては夢の様な話です。ですがそれは同時に生と死の持つ意味が曖昧になり、人は人として限られた生を全うしようという人間らしさを失う事にもなります。だから死者は蘇らなくても良いんです。寂しい事ですけど、寂しいからこそその人の事を忘れまいと生きている人は強く心に刻む事が出来るのだと思います。

 「死者に対して生者が出来る事は何か?」、今作での答えは「忘れない事」でした。その人と生きた思い出を大切にする、大切に出来るような思い出を生きている時に作る、その為に人は生きているのかも知れません。そして主人公もその事を決意したからこそ姫ノ宮の力を使い神を殺す決意が出来たのだと思います。ここで主人公が夕との永遠の別れを受け止められなかったら、恐らく神を殺す事が出来なかったでしょうね。非常に苦しい決断だったと思いますけど、それが出来たのは紛れもなく「愛しいお姫様を守る」という自分の想いを貫き通した結果だと思っております。

 人は時の中で変化していくものに対して適応して変化し続けなければいけない生き物なのだと思います。ですがそんな中でも絶対に変えてはいけない想いというものもあります。この「黄昏コントラスト」という物語を通して、私自身でも変えていかなければいけない部分と変えてはいけない部分を考え、今後悔いのない人生にしなければいけないのかなと思いました。ありがとうございました。


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