M.M 月に寄りそう乙女の作法2.2 A×L+SA!!
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
8 | 8 | 6 | A | 5〜6 | 2017/12/25 |
作品ページ(R-18注意) | ブランドページ | 通販 |
この「月に寄りそう乙女の作法2.2 A×L+SA!!」は先に発売された「月に寄りそう乙女の作法2」の続編となっております。その為レビューには「月に寄りそう乙女の作法2」を含めたネタバレが含まれていますので、ネタバレを避けたい方は避難して下さい。また、「月に寄りそう乙女の作法2.2 A×L+SA!!」の中には「月に寄りそう乙女の作法2」の続編の1つである「月に寄りそう乙女の作法2.1 E×S×PAR!!」のディスクを持っていないとプレイできないコンテンツが含まれております。「月に寄りそう乙女の作法2.1 E×S×PAR!!」のネタバレはありませんが、合わせてご確認ください。
・「月に寄りそう乙女の作法2」のレビューはこちら
・「月に寄りそう乙女の作法2.1 E×S×PAR!!」のレビューはこちら
※このレビューにはネタバレしかありません。前作と本作の両方をプレイした方のみサポートしております。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
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<目的を定めて堂々としていれば、存外どん底からでも立ち上がれる。>
男の娘な主人公と服飾を題材に扱ったNavelのタイトルである「月に寄りそう乙女の作法」シリーズも、今回のファンディスクで第六弾となりました。2012年10月に第一弾である「月に寄りそう乙女の作法」が発売されました。Navelらしいテンポの良い会話、Arte Refactの奏でる高級感溢れるBGM、そして主人公が女装している設定ととんでもないカリスマ性を持っているルナ様、何よりも服飾というものを丁寧に取り扱ったシナリオは多くの人の心を掴んだのではないでしょうか。第一弾が発売されてからもう5年が経過している事に驚いておりますが、それほど足の長いコンテンツになった事をむしろ喜ばしく思います。これからも「月に寄りそう乙女の作法」シリーズとNavel作品は注目していこうと思っております。
今回のファンディスクは全部で4つのコンテンツで構成されております。まずはメインヒロインである八日堂朔莉のアフターエピソード、大蔵ルミネのアフターエピソードです。表向きのメインコンテンツであり、第五弾である「月に寄りそう乙女の作法2.1 E×S×PAR!!」で取り扱ったのがその他のメインヒロインのアフターエピソードである事からも容易に想像できます。ですが、個人的にはこの2シナリオをプレイ後に解放される桜小路アトレをメインヒロインに据えたアトレルートが本当のメインコンテンツだと思っております。これは元になっている「月に寄りそう乙女の作法2」のBAD ENDからの続きのシナリオでした。つまり、完結だと思っていたシナリオは実は完結ではなく、このアトレルートをプレイする事で初めて完結するのです。この手法は「乙女理論とその周辺 -Ecole de Paris-」と同じですね。ボリューム的にもこのアトレルートで全体の半分を使っておりました。ズルいやり方だと思いつつも、どのような結末になるのか気になるのでプレイしない訳には行きませんでした。そして4つ目はNavelが2015年に行ったエイプリルフール企画である「月に寄りそう乙女の作法1.1」がビジュアルノベル化されたものでした。これは本当にオマケのオマケでしたね。軽い気持ちで読む事が出来ました。
始めに2つのアフターエピソードですが、これはそれぞれの気持ちが結び合った後に未来をどうするかを決断する物語でした。ルミネは将来ピアノを引き続けるのかどうかを迷っておりました。自分はプロにはなれない、でも社長業を辞めれば続ける事が出来る、そんな葛藤を抱えておりました。そんなルミネがたどり着いた結論が「できるだけ大勢の人に大好きなお姉ちゃんを自慢したい」と願う才華の気持ちに応えることでした。ピアノを弾く理由は自分で決める。そんな未来を向いたシナリオでした。朔莉はフィリア学院でやる事が終わったので学院を引退し本業である女優に戻るつもりでした。それはプロとしての当然の判断であり、そんな潔さが美しいからこそ才華は惚れました。だからこそ、そんな朔莉を説得できる作品が無ければ朔莉を止めることは出来ない。そんな妥協の無い関係が素敵でした。結局は2人のノロケに流された感じも無きにしも非ずですが、作品に対して真摯な姿とプロ意識が光る物語でした。
そしてメインコンテンツであるアトレルートです。実に容赦のないシナリオでしたね。男であることがバレて、多くの人の信頼を失った才華。それでも自分の近親者は皆才華を庇ってくれました。とりわけアトレの庇い方はもう盲目的とすら思え、個人的にも何故そこまで才華に拘るのかと疑問に思いました。私は全てを捨ててでもお兄様の味方でいる。私がお兄様の味方である事が終わるのは、お兄様が幸せになった時。こんな献身的な妹に対して、劣情など持ってはならないと才華が思うのは自然でした。ですが、才華は劣情を持ってしまいました。そしてその気持ちをぶつけました。そしたら「それはちょっと……難しいですねー……」ですからね。私も痺れました。震えました。ああ、人が地獄に落ちる瞬間ってこういう時なんだなと思いました。その後周りから更に辛辣な扱いを受ける訳ですが、そんな事は些細でした。自分は人として最低である、それでもアトレが好きだ。その気持ちは本物でした。
そうであるのなら、後はその気持ちに従って生きるしかありませんでした。そして、その形がやはり服飾というものでした。この作品において、服飾を切り離すことは出来ません。どうして服飾を続けるのか、それは作りたい服があるからです。そして作った服を着せたい相手が居るのです。それは、言葉で表せなくても分かる人には伝わるものでした。だからこそ、才華の衣装は最優秀賞を獲得出来たのだと思います。作りたいのは。僕とアトレが笑顔でいられる服。それを確信した才華のランウェイは美しいものでした。そして、アトレの中でも才華に対する想いは固まっておりました。恋情も、情欲も、奉仕の心も、今は全てが一つ。これで2人の人生は決まりました。きっと遊星とルナは反対するでしょう。でも、認めるのだと思います。誰もがこの2人の決断を揺るがせないと思います。それこそが、親譲りの頑固さですからね!
という訳でいつもの「月に寄りそう乙女の作法」シリーズらしいエピソードを楽しませて頂きました。どのシナリオもキャラクターと服飾に対してとても真摯であり、まさにキャラだけではないシナリオのファンの為のファンディスクでした。正直言えば、このボリュームに対してフルプライスは高い印象もあります。何しろ私で5時間20分でしたからね。まあ、ここまで買っているファンであればもう値段など気にしないのだと思いますね。そしてついにNavelから完全新作の告知がなされました。もしかしたらこれで「月に寄りそう乙女の作法」シリーズも終わりなのかも知れませんね。逆に、これからもちょくちょく作品が出るかも知れませんね。それでも、いつまでも服飾に真摯な姿が見られると思っております。ちなみに「月に寄りそう乙女の作法1.1」は、時代を越えたキャラクターのコラボレーションです。頭空っぽにしてお楽しみください!