M.M 月に寄りそう乙女の作法2.1 E×S×PAR!!


 この「月に寄りそう乙女の作法2.1 E×S×PAR!!」は先に発売された「月に寄りそう乙女の作法2」の続編となっております。その為レビューには「月に寄りそう乙女の作法2」を含めたネタバレが含まれていますので、ネタバレを避けたい方は避難して下さい。

・「月に寄りそう乙女の作法2」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。前作と本作の両方をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。























































































シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 8 7 A 6〜7 2017/6/6
作品ページ(R-18注意) ブランドページ



<自分を信じ、才能を信じ、そして周りの人を信じる。そんな当たり前で尊い事の大切さを見る事が出来ました。>

 男の娘な主人公と服飾を題材に扱ったNavelのタイトルである「月に寄りそう乙女の作法」シリーズの第5段です。位置づけとしましては「月に寄りそう乙女の作法2」のファンディスクとなっており、ヒロインであるエスト・ギャラッハ・アーノッツと銀条春心の後日談、そしてシリーズ全体の重要人物である大蔵衣遠の過去談の計3つのエピソードで構成されております。Navelらしいテンポの良い会話とノリの良い雰囲気、そして男の娘という属性に負ける事のないカリスマ性あふれる主人公とヒロインたち、何よりも服飾やデザイナーというものに対する真摯な姿勢が印象的であり、私にとっても大変お気に入りのシリーズとなっております。

 ネット上の様々な記事を見ておりますと、どうやら世の中的には第1段である「月に寄りそう乙女の作法」が一番人気のようです。理由は割と想像つきまして、シリーズ第1作であるという事とメインヒロインである「桜小路ルナ」のカリスマ性が圧倒的だからかと思われます。その後もフルプライスタイトル並みの後日談である「乙女理論とその周辺 -Ecole de Paris-」と更に後日談である「乙女理論とその後の周辺 -Belle Epoque-」も発売されました。桜小路ルナのカリスマ性だけではなく、大蔵遊星を始めとした大蔵家の家族愛と服飾に対する真摯な姿勢評価されたのです。それでも私は別時間軸の内容である「月に寄りそう乙女の作法2」が一番好きだったりします。それは主人公である桜小路才華の存在感が大きかった事、BGMがどれもお気に入りだった事と、そして全ての登場人物を巻き込んだ服飾に対する接し方が好きだった事が理由です。いつかこちらの時間軸でもファンディスクが出て欲しいと思っていただけに、今回の新作は待望でした。

 内容としまして、全体の半分の時間をエストアフターに費やしておりました。恋人同士になり2年生に進級した後の1年弱の時間を使って、自分の服飾に対する気持ちとお互いの存在をどう捉えていくかをじっくりと描いておりました。桜小路才華は正直とても面倒くさい主人公です。非常に理性的であり気配りが出来ながら人に頼ることが苦手で、そのくせ服飾に対する野心は十分ですのでエストに甘え甘えられたりといつまでも関係性が定まりません。それでもコンクールで最高の成績を出すために、そしてパートナーと共闘する為に、またはパートナーに勝つために服飾と相手に全力でぶつかっていきました。時にはジャスティーヌという天才の前に自暴自棄になる事もありました。それでも自分の目指すものを見失いませんでした。最後、恋人として服飾するのか従者として服飾するのか、そのどちらも間違いではありませんでした。当然エストとの関係性は変わります。形は違えど、服飾に対する気持ちが消えた訳ではありませんでした。きっとこれからもつまらない事でぶつかる時もあるでしょう。それでも、この2人だったら道を見失わず前に進むことが出来ると思っております。

 春心アフターはエストアフターに対して半分程度のボリュームでした。天才的な才能を持つ春心に対して中々日の目を見ることが出来ないでいた才華。それでも大切な恋人を第一にしつつもぱるぱるしるばーの一員として新しい形でのデザインを模索していきました。こちらは正直2人の関係性という意味ではほとんど変化ありませんでしたね。強いて言えば、共依存であったところが少し緩んだというところでしょうか。朝になり誰もいないと不安になる春心、そんな彼女のトラウマを溶かしたのは確かに才華でした。逆に才華のデザイナーとしての幅を広げたのは春心の交友関係の広さでした。作中最後に才華は「細分化された趣味の世界の枝先まで追っていく手段」を持っていなかったと言います。美しいデザインと来てもらえるデザインの違い、それを感じる事が出来ました。今後才華がどういう方向性のデザインに向かうかは分かりません。それこそ今からデザインの方向性を決めるのは、衣遠が言うとおり「今の君には分不相応」です。きっと2人でゆるふわなテンションをキープしながら、少しずつ定まっていくのだろうと思います。

 そして地味に一番楽しみにしてたのは3つ目の「月に寄りそう乙女の作法0」でした。と言うよりも、このシリーズのファンであれば誰もがこれに期待していたのではないでしょうか。作中最もカリスマあふれる存在の大蔵衣遠、その過去談が見れるとなれば見逃す事は出来ません。加えて伝説の七人と称される偉大な服飾家が数多く登場し、新キャラであるアルタ・アルジェンタも初お披露目です。彼らの青春時代を垣間見れるだけで興奮するというものです。内容としては、やはり衣遠の覇道を進む強い瞳が印象的でした。圧倒的才能を持つスタンレー、彼に負けてはいけないと思いつつもチームの友情を大切にする様子は非常に好感が持てるものであり素直にかっこよかったです。そして衣遠を慕うラフォーレと八千代の言葉一つ一つに親しみが篭っており、いつまでも服飾して欲しいという思いがありました。そしてアルタ・アルジェンタ、彼女もまた自分の才能に絶対的なものを持ちつつも衣遠の瞳に魅せられた存在でした。服飾を通して、これ程までに沢山の仲間が揃っていたのです。何という密度の濃い時間!何という青春と友情!これならば伝説の七人になるのも頷けますね。「どれだけ尊厳を捨てようと、人としての感情は捨てられるものか!」あれだけお堅い孤高な衣遠にこれだけ言わせる仲間、これは永遠の繋がりになると思いました。

 今作は以上3つのエピソードで構成されておりました。どれもが自分の服飾に対する気持ちを向き合い、そして愛する人や親愛なる友と向き合うシナリオでした。上でも少し触れましたが、服飾というものはデザインであるセンスと才能という要素をどうしても外す事は出来ません。絶対的な基準というものが存在せず、言ってしまえば受け入れられればそれが全ての世界なのです。悩まない人などいません。それでも悩まない人こそが、本当の天才なのです。ですが、そんな天才達も悩んでましたね。今作で言えばジャスティーヌ・春心・スタンレー・そして衣遠です。自分と違う存在、違うセンス、それでもかかわり合いを持てば無視する事は出来ない。服飾は誰の為にあるのか、それは服を着てくれる人の為です。自分を信じ、才能を信じ、そして周りの人を信じる。そんな当たり前で尊い事の大切さを見る事が出来ました。楽しかったです。次回作も楽しみにしております!


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