M.M 単調に散る花 第二話・冷酷な花




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 9 - 78 2〜3 2014/9/23
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 この「単調に散る花 第二話・冷酷な花」は前作である「単調に散る花 第一話・残酷な花」の続編となっております。その為レビューには「単調に散る花 第一話・残酷な花」を含めたネタバレが含まれていますので、ネタバレを避けたい方は避難して下さい。

「単調に散る花 第一話・残酷な花」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。前作と本作の両方をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。





















































































<不都合な現実は削除しましょう。それでも田舎の穏やかな雰囲気だけは削除出来ませんね。>

 奈切村(なぎりむら)という田舎に引っ越して新たな人生をスタートさせた主人公である石張真也、クラスメイトである白樺ひのき(しらかばひのき)・後樫里美野瑠(かしのさとみのる)とその妹である樫里芽倶夢(かしのさとめぐむ)と出会い穏やかな生活を送っておりました。ですが花火大会での唐突な村人の虐殺によってその穏やかな生活も壊されてしまいますが、壊される以前に真也を始め村人の価値観や奈切村の風習はとっくに壊れていたのかも知れません。数々の妄想を働かせてくれる第一話での幕引きの後、再び奈切村に引っ越してからの生活が繰り返されるのが第二話です。第一話とは違った展開に少しずつ奈切村の真実が見えてきますが、まだまだ肝心な部分は隠されたままですね。

 第一話のレビューの中で私は「タンチョウ鶴の伝説を読み解く事がこの村の真実を暴くことになる」と書きました。案の定タンチョウ鶴の伝説は不老不死の女性の存在や魂火上げの風習に繋がっており、それが奈切村の閉じられた価値観を示しておりました。特に魂火上げの為に亡骸を保存しておくという行為は明らかに世間の常識とズレております。そして後半になるにつれ愛する村人たちが相次いで人を殺し始めます。それはクラスメイトである白樺ひのきや第二話で初登場した彩芽奈々(あやめなな)も同様であり、全てを信じられなくなった真也はそうした不都合な過去を「削除」する事にしました。

 この「削除」するという言葉は今作で最も登場した言葉かも知れません。母親が憎いから削除しよう、都会での出来事は辛かったから削除しよう、村人が殺されるなんて悲しいから削除しよう、彩芽奈々が人を殺していたなんて信じられないから削除しよう、そのようにして真也は心の平穏を保っていたのでしょうね。ですがこの「削除」という行為がある意味この作品の真実を覆い隠してしまっているとも言えます。それはこの作品が主人公視点で語られているからです。不都合な真実は削除されるのなら、真也が目を背けたい事柄は削除され語られる事がありません。真也は本当に何も知らなくて唯の被害者なのか、おそらくそうではないのだと思います。ですが具体的にどうこの奈切村に関わっていたのかを知る必要があります。そしてこれは間違いなく真也の過去と関係しており、全ての登場人物が何らかの形で影響を与えているはずです。

 とりわけ第二話で登場した彩芽奈々は大変重要な人物である気がします。真也の過去を知っている風の言葉は恐らく嘘ではないでしょうし、彼女が監禁していた男性や少女の正体も謎のままです。何よりも主人公の過去の一コマを撮影した写真を知っておりました。ここに写っている人物の1人は奈々ではないでしょうか。となると彼女は真也にとって血縁である可能性すら出てきました。果たして父親が言いたいと思っている真也が思い出せない過去とは何なのでしょうか。そしてそれを真也の口から語ることはあるのでしょうか。まだまだ謎が尽きませんね。

 という訳で第二話を終えて謎が解決するどころか何を信じればいいのかすら分からなくなっております。明かされる真実とそれによって生まれる新たな謎、そして未だに正体がわからない人物の数々、この物語はまだ何も真実を語っていないのかも知れません。それでも唯一変わらないものはありました。それは奈切村の穏やか雰囲気です。どんなに辛辣な状況でも田舎のゆったりとした時間の流れは変わりませんでした。それは夕焼けの背景描写や透き通ったBGMが否応なく気持ちを落ち着けてくれます。真也がどれだけ不都合な現実を削除しても、この穏やかな田舎の雰囲気だけは削除出来ませんね。どれだけ世界が崩壊しても、この奈切村の穏やかな雰囲気だけは消えて欲しくないと思い、続きを読もうと思います。


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