M.M 単調に散る花 第一話・残酷な花




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 9 - 76 1〜2 2014/9/7
作品ページ サークルページ



<透き通ったBGMで演出される穏やかな田舎の雰囲気が覆い隠している不気味さを味わって欲しいですね>

 この「単調に散る花 第一話・残酷な花」という作品は同人サークルである「ZipKreis」で制作されたビジュアルノベルです。ZipKreisさんの作品をプレイするのは今作が初めてでして、C86で島サークルを回っている時偶然目に止まったのが切っ掛けでした。穏やかな田舎の描写の中に表れている隠しようのないホラーな雰囲気のジャケットはそれだけで魅力的でして、まだ夏の空気が残っているうちにプレイしようと思っておりました。感想ですが、美しい田舎の描写とその間に垣間見る不気味な描写の対比が象徴的でドキドキしながらテキストを読むことが出来ました。

 主人公である石張真也は父親と2人で奈切村(なぎりむら)という田舎に引っ越してきます。それは主人公にとって人生のリスタートを意味しており、これまでの都会での生活を捨ててこの田舎で新しく自分の人生をやり直そうという意味を持っておりました。引っ越し初日にクラスメイトである白樺ひのき(しらかばひのき)と出会い、街を案内してもらいながら少しずつ田舎暮らしに慣れていきます。その後樫里美野瑠(かしのさとみのる)や樫里芽倶夢(かしのさとめぐむ)という友達もでき、穏やかで慎ましくも楽しい生活を送っておりました。そして村で毎年行われている夏祭りに4人で遊びに行ったとき、突然としてこの穏やかな生活の幕が落とされる事となります。果たしてこの幕引きは唐突なのかそれとも予兆はあったのか、穏やかな田舎の雰囲気に見え隠れする崩壊の足音を是非プレイヤーの方に聞いて欲しいですね。

 最大の魅力はやはり田舎の穏やかな雰囲気です。そしてその田舎の雰囲気を最大限に演出しているのは間違いなくBGMです。ピアノと弦楽器を中心としたサウンドは大変透き通っており、田舎の空気や水のように心を洗ってくれます。何よりも私の琴線に触れる曲ばかりですので、途中プレイする手を止めてずっと楽曲を聴いておりました。曲を聞きながら寝落ちしてしまった事もあります。間違いなくリラックスする事ができますので、仕事などで追われているような状況の時に聴く事をオススメします。一番のお気に入り曲はタイトル画面で流れる「散り咲く物語」という曲ですね。公式HPでも試聴できますので是非訪れて見て下さい。

 しかし物語はそのような穏やかな雰囲気で終わるほど優しくはありませんでした。この作品はあくまでホラーノベルです。穏やかな田舎の描写は何かとてつもない不気味な設定を覆い隠すためのカモフラージュです。透き通ったBGMが突然途切れ、同じ村では無いかのように雰囲気が一変する瞬間が随所にあります。第一話でもその片鱗は見えておりましたが、真実は何一つ語られません。果たしてこの田舎にはどのような風習が残っているのか、ヒロイン達の時折見せる不気味な表情は何なのか、その辺を想像しながら読んで頂ければと思います。まだ第一話です。これから第二話第三話と続いていきますので、私も早く続きを読もうと思っております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<タンチョウ鶴の伝説を読み解く事がこの村の真実を暴くことになると信じておりますが・・・>

 正直、怖かったです。主人公を含めこの物語に登場している人物全員が何かおぞましい物を隠しているとしか思えません。私は一体何を疑って何を信じれば良いのでしょうか。余りにも宙ぶらりんな心境な訳ですが、もしかしらたこれこそがこの作品のホラーとしての魅力なのかも知れません。

 田舎の村という設定で欠かす事が出来ない要素に伝承・風習といったものがあると思います。これは田舎という土地が都会と違い人の流動が少ないという事で、そういった昔からの物語を語り継ぎ引き継ぐ事が上手くいっているから残っているのだと思います。そして時にそうした伝承・風習はよその土地から来た人にとっては余りに受け入れがたい物であり、このギャップが恐ろしいものに思わせる事もあると思います。何が言いたいのかと言いますと、この奈切村全体に漂っている不気味な雰囲気を解き明かすには昔からの伝承であるタンチョウ鶴の伝説を読み解かなければいけないという事です。

 村の住人が時折口にしていた「頭を砕く」という言葉、そしてどのヒロインも両親の話になると突然豹変する様、明らかに村の中で人を殺すという行為が日常的に行われているとしか思われません。ですがそのような行為をするには必ず理由があるはずです。そしてその理由を明らかにするには必ず昔からの風習が関係しております。村の住人にとって当たり前の風習でも主人公にしてみれば当たり前のはずがありません。この村の真実を暴けるのは主人公しかいないんです。果たして暴いた先に待っているのは何なのか、正直怖いですが私も登場人物たちと一緒にこの謎に挑もうと思います。

 と思ってましたがどうやらその主人公も普通ではないみたいですね。これは主人公の人格が普通ではないという意味ではありません、主人公とこの村には少なからず因縁があるという事です。花火大会の後の唐突な村人の虐殺、主人公はそれを予期している様な発言をしておりました。もうこうなってきますと何を信じて何を疑えばいいか分からなくなりますね。この奈切村という場所そのものが嘘なのではないかと思わせる程です。まずは主人公が奈切村にやってきてそして崩壊するまで一週こなしました。第二話では再びこの奈切村での生活が繰り返されるみたいです。私は本当に幸せの花を咲かせることが出来るのでしょうか。単調に散る花というタイトルの意味も探りながら、そして同じ音であるタンチョウ鶴の伝説を探りながら続きを読もうと思います。


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