M.M 乙女理論とその後の周辺 -Belle Epoque-


 この「乙女理論とその後の周辺 -Belle Epoque-」は先に発売された「乙女理論とその周辺 -Ecole de Paris-」の続編となっております。その為レビューには「乙女理論とその周辺 -Ecole de Paris-」を含めたネタバレが含まれていますので、ネタバレを避けたい方は避難して下さい。

・「乙女理論とその周辺 -Ecole de Paris-」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。前作と本作の両方をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。























































































シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 10 7 A 10〜11 2016/6/25
作品ページ(R-18注意) ブランドページ



<家族は大切にしなければいけない。この言葉を噛み締めなければいけない時が、自分達にもきっとやってきますね。>

 …本当にこの大蔵家という一家は面倒くさいですよね!どうして誰も素直になる事ができないの!一番大切なものに気づいているのに、つまらない見栄やプライドばかり振りかざしてどうして見てない振りをするの!本当はみんな仲良くしたいのに!兄弟というものは本当に難儀だ!…でもだからこそお互いを愛し合えるんですよね。

 私はこれまで「月に寄り添う乙女の作法」「乙女理論とその周辺」とプレイしてきましたが、この一連のシリーズの根幹にあるのは家族愛なのかなと今更ながら思っております。優秀な兄を持ち常にその対比で悩み続けた主人公大蔵遊星。そしてそれ以上に才能を持たず引きこもっていた大蔵りそな。大蔵家の歴史を顧みれば明らかに劣っている存在。彼らは常に自分の大蔵家としての立場に悩み続けました。ですが結果としてその大蔵家をまとめ上げたのはこの大蔵遊星と大蔵りそなの2人の兄妹でした。では何故それが実現できたのでしょうか?それは常に2人がこだわり続けた「全員が家族になる方法」を模索する信念を曲げなかったからだと思っております。

 大蔵総裁はいつも口癖のように「家族愛は最も大切にするもの」と言っておりました。この発言は実際のところ極端であり、現在のように変化していく時代においては錯誤なものと思われても仕方がありません。大蔵衣遠は「大蔵家の総裁になるべく覇道を進む」と言っておりました。結果としてそれが大蔵家の存在力や資産を増やすことになり、対外的には正しいのだと思います。ですがそれでは普通の企業と何も変わりませんね。大蔵家は血の繋がった唯一の関係なのです。誰かが簡単に代わりになるなんて出来ないのです。家族は大切にしなければいけない。そんな時代錯誤な言葉の本質にようやく全員がたどり着く事が出来ました。

 大蔵アンソニーは「弟同士だからこそ分かり合えるものがある」と言っておりました。大蔵家の中で立場の弱い存在。それでも血の繋がった家族を愛せずにはいられない。そんな想いが最終的に全員の気持ちを動かしました。別に大蔵遊星と大蔵りそなの心が寛大だったから訳ではないのです。大蔵りそなは見た通りの面倒くさい正確ですが、大蔵遊星もまた自分の能力と見た目にだいぶ屈折した優しさを持っておりました。誰に対しても感謝し誰に対しても裏切れない。それはこの現代を生きていく上であまりにも危険。ですが考えてみて下さい。この大蔵遊星と大蔵りそな、2人が組み合わされば全てを補った最高の存在になるとは思いませんか?虐げられても家族としての繋がりを信じ続けた2人。その想いがいよいよ報われました。この作品は大蔵遊星と大蔵りそなの成長物語であることと同時に、家族の大切さを描いた愛情あふれる物語だったと思っております。

 後はやはりブリュエットについては書かなければいけませんね。このシナリオにおいて彼女の役割はとても大きなものでした。ブリュエット家という立場もそうですが、彼女の正義感と何に対してもありのままの姿で突き進む行動力が大蔵遊星と大蔵りそなを支える手助けとなりました。もう彼女が登場すると本当に安心しましたね。彼女なら何とかしてくれる。この作品のジョーカー的な立ち位置だったのではないかと思っております。そしてそれ以上に大蔵遊星の事を大切に思ってくれました。家柄とか立場とかそういった部分もありますが、それ以上に「どうやってこの人を守っていくか」」を本当に真剣に考えてくれました。ANOTHER最後、大蔵遊星とブリュエットがそれぞれの立場で歩行する姿の何と凛々しいことか!この人とならちょっとしたいざこざを交えながら末永く幸せに暮らせるのだと思いましたね。

 そろそろ締めようと思います。始めは女装主人公という奇をてらった作品なのかなと思いましたが、その実は服飾というものに真剣に取り組み自分の立場に悩む人間模様を描いた作品でした。そしてその奥に隠された本質は家族を大切にするという事でした。様々なシチュエーションや設定が入り混じった内容はいよいよ服飾の本場であるパリにまで発展し、振り返れば非常に壮大なスケールなシリーズとなっておりました。それでも大蔵遊星と大蔵りそなを中心とした物語は芯が通っていて、非常に読後感の良いシナリオでした。演出や音楽も力が入っていて、特にこの乙りろその後で追加された4曲のBGMは本作のどの曲よりも印象に残りましたね。アントワーヌでの一連の楽曲や日本校でのフィリア・クリスマス・コレクションでのりそなが登場したシーンはとても印象的で気分が高揚しました。最後までつり乙及び乙りろの世界を堪能させていただき、まだまだ終わってほしくないと思いましたね。願わくば、また何らかの形で同シリーズが展開してくれることも望みます。ありがとうございました。


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