M.M 非実在系カノジョと過ごす日常
| シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
| 6 | 5 | - | 71 | 1〜2 | 2018/5/18 |
| 作品ページ（無し） | サークルページ | ||||
この「非実在系カノジョと過ごす日常」は前作である「君と歩んだ最後の一歩」のスピンオフ作品となっております。その為レビューには「君と歩んだ最後の一歩」のネタバレが含まれておりますので、ネタバレを視たくない方はご遠慮下さい。
・「君と歩んだ最後の一歩」のレビューはこちら
※このレビューには「非実在系カノジョと過ごす日常」のネタバレありしかありません。本作をプレイした方のみサポートしております。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
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＜先の物語が描かれていないのであれば、後はプレイヤーの皆さんの想像次第ですね。＞
今回「非実在系カノジョと過ごす日常」については、スピンオフ作品という事もありネタバレ無しとネタバレ有りの2段構えでレビューを書こうと思ってました。ですが、最後までプレイしてあとがきを読み終わって、気が変わってネタバレ有りのみにしようと思いました。この作品のテーマをサークルさんが目指したかったものを考えたとき、ネタバレ無しを書いては魅力が半減すると思ったからです。それをこれから書いていこうと思います。
最後のあとがきにて、今作のメインヒロインである「夏樹柚子」の立ち位置について書かれておりました。本作「君と歩んだ最後の一歩」において、柚子は元々メインヒロインと同じ扱いだったそうです。シナリオも他のメインヒロインに負けず劣らずのボリュームが用意されておりました。ですが、ここで描かれている柚子に納得がいかなかったサークルさんはこの柚子ルートを丸々カットする形で作品をリリースしました。柚子がメインヒロインからサブヒロインに立ち位置が変わった瞬間でした。サークルさん自身、柚子というキャラクターについての愛情はかなりものだったそうです。金髪ツインテールが好きとか、宣伝の多くに柚子を使用したとか、非常にリアルな発言もありました。それでも立ち位置がサブヒロインになってしまう、何か運命的な物を感じました。
「非実在系カノジョと過ごす日常」において、柚子は自分がサブヒロインである事を自覚しておりました。自分は最終的には主人公と結ばれる事は無い、それはしっかりと理解しておりました。ですが、柚子は望んでしましました。自分がメインヒロインとして主人公と結ばれる事を。だからこそ、柚子は美羽という架空のヒロインを借りて主人公と繋がろうとしました。それはサブヒロインである柚子が主人公と結ばれる唯一の方法かもしれません。まるで、私達プレイヤーが現実の女の子と結ばれない代わりにゲームのヒロインと結ばれるみたいですね！そういう意味て、柚子の気持ちは痛いほど分かりましたし、美羽を利用してでも自分が主人公と結ばれたいという気持ちも分かりました。
そして、これはまるでサークルさんの望みのようにも思えました。本来であればメインヒロインとして世の中に登場するはずだった柚子。ですがどうしても自分の理想通りに描く事が出来ないジレンマからサブヒロインにする決意をしました。もしかしたら悔しさもあったのかも知れません。これだけ可愛くて好きなキャラクターの魅力を十二分に発揮させてあげる事が出来ない。これもまた、手を伸ばしても手に入れる事が出来ない運命的な物を印象させました。だからこそ、こういうスピンオフという形で復活した柚子です。その手法も、ある意味「君と歩んだ最後の一歩」という作品を利用してメインヒロインにのし上がったと見ればまさに美羽と柚子の関係と同じに見えました。ジレンマに苦しんでいたのは、柚子もサークルさんも私達プレイヤーも同じなのかも知れません。
だからこそ、柚子は最後に全てをリセットして自分の力だけで主人公と結ばれたいと思うようになりました。嘘を付くのも人を利用するのも悪い事だとは思いませんし、そんな人はごまんといます。ですが、それでも柚子は正々堂々自分の運命と立ち向かう事を選択しました。もしかしたら、この先の道は行き止まりかも知れません。サブヒロインとして、自然とフェードアウトしていきいつしか忘れ去られる存在かも知れません。その可能性がある事を分かっていながら、柚子はその先の見えない未来を選択しました。美しいですし尊いと思いましたね。頭の良し悪しとか、効率が良い悪いとかではない、とても人間的なキャラクターに思えました。
物語最後、柚子は主人公をデートに誘いました。この先の物語は描かれておりません。後は、プレイヤーの皆さんで自由に想像し彼らの未来を描いてみて下さい。描かれていないのであれば、想像するのは自由ですからね。サブヒロインとして運命付けられ、主人公と結ばれない事が約束された柚子、そして美羽の力すらも断り丸裸になった柚子、彼女の運命を決めるのは、プレイヤーの皆さん次第ですね。メタ的要素を取り入れながら、ラベリングされた属性とそれに対するアンチテーゼを感じるサークルさんの想いが込められた印象的な作品でした。ありがとうございました。