M.M 鍵のない箱 The Migrant Send You Spring
シナリオ | BGM | 主題歌 | 総合 | プレイ時間 | 公開年月日 |
7 | 7 | 6 | A | 2〜3 | 2019/2/20 |
作品ページ | サークルページ |
この「鍵のない箱 The Migrant Send You Spring」は、現在頒布されている「渡り鳥の門は遠く sing again」に同梱されているアフターシナリオを描いたものとなっております。その為、レビューには「渡り鳥の門は遠く sing again」を含めたネタバレが含まれていますので、「渡り鳥の門は遠く sing again」のネタバレを避けたい方は注意して下さい。
・「渡り鳥の門は遠く sing again」のレビューはこちら
※このレビューにはネタバレしかありません。「鍵のない箱 The Migrant Send You Spring」をプレイされた方のみサポートしております。
以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
<大事なもの、くだらないもの、美しいもの、美しくないもの、いつの間にか詰め込まれていく。>
エウロとトッカルという架空の西洋を舞台とした世界で、理想と現実に悩みながらも決断し大人になっていく物語を描いた「渡り鳥の門は遠く sing again(以下渡り鳥)」の後日談です。オリジナルの世界観を、政治・経済・文化・思想といった様々な観点について丁寧に表現しており、そこで生きる人々を活き活きと見せてくれました。華やかな部分だけではなく負の部分も隠すことなぐ描いており、全ての人に人生があり生き方がある事を感じました。そんな渡り鳥の後日談という事で、波乱の人生を歩んだ彼らがその後どうなったのかを楽しみにプレイ始めました。
鍵のない箱の主人公は、渡り鳥での裏の主人公でもあったラフィータと同じく門の民であるトルドの2人でした。ロディスとユリウスの決断によって門の民の多くは命を失いました。それでも生き残ったトルドとラフィータ、そんな彼らがどのような人生を歩んだのかを描いておりました。タイトルになっている鍵のない箱、それは人生という名前でした。お金も人も、全てを失って何も入っていないはずの箱でした。それでも、自分が気付かないだけで様々な物が詰め込まれています。むしろ、空っぽの箱なんてきっと無いんだと思います。そんな事を思わせるシナリオでした。
トルドとラフィータの人生を変えたもの、それは家族であるファブリシオの存在でした。再会したトルドとラフィータですが特にやる事も夢もありませんでした。そんな彼らにとっての唯一の道しるべがファブリシオでした。彼の痕跡を求めて、2人はハミルトン公爵領にあるメジエールを目指しました。そこで出会った様々な人、そしてメジエール管弦楽団が彼らの第2の人生の出発点でした。ちゃんと、人生は繋がっておりました。失ったはずのハビやファブリシオが彼らを導いてくれました。箱の中に入っていたほんの少しの手掛かりが、彼らの人生を繋いでくれました。
確かに、元々ラフィータにはその中性的で美しい容姿と卓越したチェロの技術がありました。それを持っているのですから、トゥルーエンドの様な結末を迎えられるのは物語的に不思議ではないかも知れません。ですが、それは決して運によるものではなくなるようにしてなったと思ってしまいます。もしトルドがラフィータを見つけるのが少しでも遅かったら、どこかの貴族に買われて一生外に出る事のない人生を送る事になっていたのです。バッドエンドの幾つはそうした運命の在り方についても語っていると思います。トルドとラフィータがメジエール管弦楽団の一員として活躍し、そしてミミやミカエルと再会し彼らとの幸せを遂げる事が出来たのは、やはり2人の行動があったからと思っております。
物語最後、渡り鳥での主人公・ヒロインであったロディス・ユリウス・ジルの姿が描かれておりました。子供から大人への一歩を選択した彼らの、まだまだ続く人生の一幕です。離れて別々の道を歩み始めた彼ら、その道は進んでいくと思います。それでも、かつて共に過ごし想いを共有した日々は消える事はありませんでした。門の民であったラフィータのあまりにも輝いている姿、ジルだけではなく自分の泣いてしまいます。そして、そんなラフィータの姿を見てかつての友もきっと真っ直ぐに生きていると確信する、とても美しい友情だと思いました。気が付いたら様々な物が詰め込まれている箱、空っぽだと思っていたらいつの間にか色々な物が詰め込まれている箱、そのどれもが大切な思い出であり人生だと思います。そんな、全ての物を愛でて大切にしてこれからの人生を歩みたいと思いました。ありがとうございました。