M.M Fermat2


 この「Fermat2」は前作である「Fermat」の続編となっております。その為レビューには「Fermat」を含めたネタバレが含まれていますので、ネタバレを避けたい方は避難して下さい。

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※このレビューにはネタバレしかありません。前作と本作の両方をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。





















































































<理科というアプローチで人間やその他生き物の心理を描くことが本質だったのかもしれません>

 科学部の部長でありぶっきらぼうのように見えてその実は友人をたいへん思いやるフェルマーと聡明な頭脳を持ちながら常識的な思考を持っている故にフェルマーに振り回されるマンジの2人を中心とした短編集である「Fermat」の続編です。フェルマーというタイトルの通り理科を題材にしたシナリオが多く研究者らしい行動力を持った登場人物達の掛け合いが魅力の前作でしたが、その魅力をそのままに今作はやや哲学的な要素が盛り込まれていたような気がしました。理科で真実を暴き出し、哲学で動機を暴き出すといったところでしょうか。考えれば考えるほど奥深いシナリオだと思いました。

 相変わらずのフェルマーとマンジの研究者的フィールドワークでした。体育倉庫の発火現象を解き明かすためにわざわざ学校中に罠を仕掛けてゴキブリを生け捕りにし、ましてやそれを解剖していくなど世界中のどの小学生もやらない事です。そしてその解剖で明らかになったホウ酸の真実から考え出したゴキブリの生存本能の予想、この思考はただ単に生物学に詳しいだけではたどり着けない結論でした。種を守るために身を犠牲にして敵を倒す、生物学的でありながら実に哲学的です。ゴキブリの気持ちに思いを馳せて一切妥協しない結論を導き出したフェルマーとマンジに感服です。

 後はやはりクロのエピソードは色々と考えさせられました。前科を持つおじさんは世間的には間違いなく認められない存在ではありますが、それだけでは割り切れない優しさをクロは持っておりました。恐らくクロが信じてあげたからこそおじさんは最後まで300万円を自分のために使わなかったのだと思います。2人にしか理解できない関係、それでも2人にとってはそれだけで十分だったんですね。理科では決して解明する事は出来ない人の心を描いたシナリオは私にとって驚きでしたが最後には温かい気持ちになるようでした。そして自分のエゴの為に猪を逃がしたクロの葛藤、これも理科では決して解明する事は出来ませんね。真実は明かされてもそれを正しいか間違っているかを判断するのは人間です。そこには永遠に答えは出ないのかも知れません。

 そしてコメディパートも相変わらずでした。何が面白いって、どんな状況になってもあくまで登場人物達のパーソナリティは変化しないという事です。魔法少女になろうとも他世界と交わろうともいつもと変わらない面々に安心して読み進めることが出来ました。どうしようもないオチが待っている事が約束されているからこそ面白かったのかもしれません。ルービックキューブについては正直どんな形で終わらせるか分かりませんでしたが、とりあえずマンジが慌てふためく様子が見れただけで満足です。後は地味にフェルマーがマンジをガチで応援していたところが好きです。

 という訳でやはり登場人物達のパーソナリティが魅力の本作でした。ひょっとしたら理科を題材にしてたことは本質ではなく理科というアプローチで人間やその他生き物の心理を描くことが本質だったのかもしれません。全ての行動には理由があり、その理由に理科的な裏付けは必要ありませんからね。何よりも相手に対して本気で向かい合う姿勢がそれぞれのシナリオから感じることが出来ました。頭脳は大人顔負けですがまだまだ小学生という事で自分にないものを相手に求めたり感情的になる部分はそのままですが、だからこそ温かい気持ちになるシナリオに仕上がったのかなと思っております。そろそろまとまらなくなりそうなのでこの辺りで失礼します。ありがとうございました。


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