M.M クラウンワークス虚実概論 2章




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 8 - 77 4〜5 2018/4/25
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 この「クラウンワークス虚実概論 2章」は前作である「クラウンワークス虚実概論 0章そして1章」の続編となっております。その為レビューには「クラウンワークス虚実概論 0章そして1章」のネタバレが含まれておりますので、ネタバレを視たくない方はご遠慮下さい。

「クラウンワークス虚実概論 0章そして1章」のレビューはこちら

※このレビューには「クラウンワークス虚実概論 2章」のネタバレありしかありません。本作をプレイした方のみサポートしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。





















































































<自我同一性の獲得には裏も表も知る事が必要。それは正攻法だけではなく裏技も知っておく事に繋がりました。>

 心理学や脳科学の課題を「魔述」を駆使して解決するクラウンワークスシリーズ、独特の世界観の中で確かに生きている登場人物達の戦いの様子が印象的な作品です。今回レビューしているのは2章で、前作である0章そして1章の続編に当たります。そして今回の章でも1つの心理学的課題が付与されております。再び正宗はその課題解決の為に魔述を駆使した戦いに赴くのです。

 今回の章で与えられた課題、それは乖離性障害です。乖離性障害とは「自分が自分であるという感覚が失われている状態」の事を指します。思春期など人生の転換期では往々にして自己という物について考えてしまいます。自分は何なんだろうか、自分の存在価値ってあるんだろうか、他人から見たら何を言ってるんだろうと思うかもしれない悩みです。ですがそのような自分に対する問いかけを経て、人は自我同一性を獲得し次のステージへと進んでいきます。そんな自我同一性がうまく獲得できなかった時、人は乖離性障害を発症してしまうのです。ではどうやってそれを克服すればいいのでしょうか。その答えを今回の2章の中て書いておりました。

 7年ぶりに現れた殺人鬼であるチェーンソウ男、その恐ろしいところは凶悪さ以上に顔が見えないところでした。犯人が誰か分からない、そうであっては殺人事件が収束する事などありえません。刑事であり魔述師でもあるロンブローゾの登場により、チェーンソウ男の捜索とその前日に発生した学園での騒動の両面が「解体」されていきます。チェーンソウ男の正体として候補に挙がったのは、なんと正宗の友人であり御前の弟である御手座与一だったのです。

 与一はまさに今作においての乖離性障害の発症者でした。普段は気さくな態度で正宗をはじめクラスメイトに接している与一です。ですが彼には隠し切れない獣性を持っておりました。一度血の臭いを嗅いでしまったら止める事が出来ない獣性、ですが与一はそんな自分の獣性に気付いておりました。乖離性障害でありながら普段の自分とは違う自分に気付いている、それが逆に与一の事を苦しめる事になりました。もしかしたらチェーンソウ男は自分なのかもしれない。いや、むしろ自分がチェーンソウ男だと認めた方が早いのかも知れない。そんな衝動に何度もかられました。ですがそんな事はありませんでした。自分は自分である、その事の大切さをロンブローゾと正宗が教えてくれたのです。

 2章も1章同様、選択肢を間違えると簡単にバッドエンドに行ってしまいます。ですがそれはつまり自我同一性を獲得出来なかったからです。というよりも、獲得する事を諦めたからです。チェーンソウ男の正体を暴くためには、自分が自分を保っている事と相手の行動を見極める事が必要でした。1つでもその見極めがズレたら、それだけで乖離性障害の渦の中に戻ってしまうのです。ましてや、この作品には人間だけではなく魔述師や神やプシケイもいます。それも自分の中に何人もの存在を飼っているのです。そのような中で、自分が何者なのかを見極めるのは大人でも大変な事ですね。物語最後、ロンブローゾは自分が罪業の庭そのものである事を認識しました。乖離性障害の克服、いや自我同一性の獲得がなされた瞬間でした。

 今回のロンブローゾとの対峙を経て、御前も正宗も正攻法だけでは人を救う事は出来ない事を知りました。自我同一性の獲得の為には自分の表も裏も知っているという事が必要でした。それはまさに副題にもなっているヤヌスを超えるという事です。正攻法もあれば裏技もあります。たとえ実力で勝てなくても「参った」と言わせれば勝ち、その程度のとんちが当たり前に求められるんですね。さて、次の課題は何でしょうか?章を追う毎に増える登場人物と新たな魔述師の存在、どこまで追いかけられるか試してみようと思います。


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