M.M 鳥籠のアストライア




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 5 6 71 1〜2 2019/11/7
作品ページ サークルページ



<前作と比べて大幅にアップグレードされ、より世界観や登場人物に愛着を持つ事が出来ました。>

 この「鳥籠のアストライア」という作品は、同人ゲームサークルである「ぶるぅむそふと」で制作されたビジュアルノベルです。ぶるぅむそふとさんの作品では、過去に「囚われのアストライア」という作品をプレイさせて頂きました。今回レビューしている作品のタイトルは「鳥籠のアストライア」です。似ていると思いませんか?そうです、鳥籠のアストライアは、過去にプレイした囚われのアストライアの完全版という位置付けとなっております。

「囚われのアストライア」のレビューはこちら

 私は正直、この完全版の発売がとても嬉しかったです。何故なら、過去にプレイした囚われのアストライアはプレイ時間がとても短かったからです。囚われのアストライアと鳥籠のアストライアであらすじは共通ですので、ご覧になりたい方は囚われのアストライアのレビューを参照頂ければと思います。ファンタジー設定であり、主人公やヒロインの抱えている物は大きく、もっと長い時間この雰囲気に触れていたいと思いました。それが今回鳥籠のアストライアという完全版という形で帰ってきました。様々な要素が追加され、とても満足できる内容になっておりました。

 追加要素ですが、まずは女性フルボイスとなっております。ヒロインであるアストレアを始め、共に行動するパートナーのエイレネやアストレアの姉であるエウノミアと、全ての主要キャラクターに声が充てられております。それぞれが全く違う個性を持ったキャラクターなのですが、それぞれの良さを引き出したボイスとなっておりました。続いて選択肢があります。囚われのアストライアは一本道でしたが、鳥籠のアストライアは選択肢が幾つかありそれによってエンディングも分岐します。元々囚われのアストライアのエンディングには納得しつつもどこか腹落ち出来ない印象を持っておりましたので、他のエンディングを見る事で素直に満足出来ました。続いてOP曲とED曲があります。それぞれジャンルや雰囲気は全く違いますが、ある意味作品の雰囲気を良く表したサウンドになっており耳に残りました。

 そして個人的に一番印象的だったのは立ち絵とスチルでした。イラストをほぼ一新したとパッケージに書いておりましたが、個人的には囚われのアストライアの絵柄も十分好きであり一新するしないに拘りはありませんでした。ですが、実際にプレイしてみてやはり一新して良かったと思いました。とにかく表情がとても豊かなのです。笑う姿、泣く姿、狂気な姿などがストレートに表現されており、ここまでやるかと思うほどでした。この豊かな表情が登場人物のキャラクターを印象づけ、作品に没頭出来る切っ掛けになると思っております。そして、スチルは全てのエンディングにたどり着かないと全て埋まりません。是非選択肢を検証し全てのスチルを確認して欲しいですね。

 プレイ時間ですが私で1時間30分程度でした。囚われのアストライアは35分でしたので、大凡3倍のボリュームとなります。実際は選択肢の検証でそれなりの時間を費やしましたので単純に3倍ではありませんが、それでも2倍以上のテキストがあるのは間違いありません。テキストのボリュームの分だけ世界観や登場人物にのめり込む事が出来たと思っております。それでも1時間30分ですので、特別に長くなったという訳ではありません。半日程度で十分堪能する事が出来ます。是非、主人公アルクトゥルスとヒロイン達が選ぶ結末を見届けて下さい。きっと、幸せなエンディングが待っている事と思います。楽しかったです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<家族とはお互いを信頼している存在、そんな人が1人でも見つかればそれが幸せ。>

 ネタバレ無しでも書きましたが、今回エンディングが複数ありそれぞれのキャラクターに注目できるシナリオになっておりました。囚われのアストライアのエンディングはHAPPY END?という形であり、やはりサークルさんとしてもあの結末をハッピーエンドとしている訳ではありませんでした。3人で生き残るHAPPY ENDとTRUE END、それを見届ける事が出来て良かったです。

 この作品のテーマは家族です。愛人の娘として生まれたアストレアは、何不自由ない生活を送りながらも誰からも愛されておりませんでした。血が繋がっている筈なのに家族に思えない、これ程寂しく辛い事も無いかも知れません。町を歩けば無数の人とすれ違います。ですがその殆どの人は他人であり自分と関りがありません。アストレアもそんな気持ちだったのかも知れません。アルクトゥルスもエイレネも、幼い時に実の両親を失っております。クロノスという箱庭に不満を持ち続ける人生は、決して明るいものではなかったに違いありません。自分が感じている事を素直に話せる人がいるという事、心置きなく信頼を置ける人がいるという事、そんな人が家族なんだなと思いました。

 クロノスの外に出ようと決意し行動を共にしてからの3人は、本当に楽しそうでした。追われる恐怖はあったと思いますが、それ以上にすぐ隣にいる2人は少なくとも信頼出来ますので安心できたと思います。信頼できるからこそ、アストレアはこれまで自分がチャレンジしようとしなかった家事や剣術を学ぼうと思ったのでしょう。何故なら、自分が頼んだことをきっと叶えてくれるという信頼があったからです。お嬢様の立ち絵から剣士としての立ち絵に変わったアストレアを見て、成長したなと思いました。どちらも可愛らしいですけどね、可愛さに加えて自信の表れも感じました。

 そして、そんな魅力的な2人ですからそれが恋愛に発展するのは必然でした。アストレアもエイレネもどちらも魅力的な女性です。3人で逃げている途中にあるハプニングもまた、お互いを意識させるものでした。それでも、お互いを信頼しているからそんなアルクトゥルスを嫌う事はありませんね。むしろ、アルクトゥルスからたとえ選ばれなくても2人を祝福しようという気持ちが尊いと思いました。HAPPY ENDとTRUE END、どちらも3人生き残って幸せに生活するエンディングでした。唯一の違いは、結ばれる相手がそれぞれアストレアとエイレネという違いでした。そして、結ばれなかった方もまた結ばれた2人を応援しているという点も共通でした。尊いですね。こんな気持ち、なかなか持てないと思います。これが家族というものなのでしょうか?

 今回テキスト量が大幅に増えた事で、より登場人物に愛着を持つ事が出来ました。だからこそ、結ばれた事を素直に喜びたいと思いますし結ばれなかった方にも強く思うものがありました。それでも3人仲良く生活している、これだけで十分幸せなのかも知れません。クロノスの中にいたら絶対に気付く事が出来なった感情です。それが見つけられれば、この物語も無事にエンディングを迎えられるというものですね。家族というものの意味、幸せの在り方、そんな掛け替えのない物を考える切っ掛けになりました。鳥籠から抜け出した3人が、このまま末永く幸せにいて欲しいと願うばかりです。ありがとうございました。


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