M.M ALLiWs 2 導かれる者たち




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
8 8 - 82 6〜7 2017/9/3
作品ページ サークルページ



 この「ALLiWs 2 導かれる者たち」は、先に発売された「ALLiWs 1 奪われた未来へ」の続編となっております。その為レビューには「ALLiWs 1 奪われた未来へ」のネタバレが含まれておりますのでご注意願います。

「ALLiWs 1 奪われた未来へ」のレビューはこちら

※このレビューにはネタバレしかありません。本作をプレイした方のみサポートしております。


→Game Review
→Main

以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。





















































































<自分の本質を見失わず、出会った人との縁を大切にする。それがきっとALLiWsが示す意味なんだなと思いました。>

 振り返ってみれば非常に壮大なシナリオでした。10年前に起きた航空機事故の真実は国を飛び越え歴史をひも解き、そして数多くの人の人生と生き様を巻き込んだものでした。全ての人に物語があり信念がある。大切なのは自分が何のために行動しているのか、一番大切なものは何か、自分の本質を見失わない事の大切さなのかなと思いました。

 「ALLiWs 1 奪われた未来へ」をプレイし終わって思いました。雨宮家のみんながまた一緒にひとつ屋根の下で生活する日は、恐らく二度と来ないのだろうと。真実はともかく雨宮誠二は飛行機事故の当事者の1人です。もう日本で誰からも後ろ指を指されない生き方は決して送れません。かと言ってかつての植民地であるエイリスでは反日感情が未だに根強く、純粋な日本人は歩くだけで忌み嫌われます。ではもう雨宮誠二と雨宮智美に出来る事は何もないのでしょうか。そうではありませんでした。もう家族4人で生活する事が叶わないのなら、せめて未来ある雨宮冬莉と雨宮千春だけは過去からの因果から解き放ってあげよう。そう決意しました。

 第六章で雨宮智美は雨宮誠二に言いました。「本質を見失わないでください」と。そしてこの言葉は2人だけでなく全ての登場人物に当てはまるものでした。雨宮家の4人、妻と弟を失った大釜芸予、父親を理不尽な理由で殺された長門咲大、エイリス国に殺されながらも長門正一の意思を継いだ長門秀至、愛する妻と子供に会えなくても自分の想いを未来に託した長門正一、腹違いで忌み嫌われたセレスト・ネザーブ、他にもかつて雨宮誠二と長門秀至が会合した食事店の店長、雨宮家をサポートしてくれたエイリス軍の軍人、月彦と冬莉を案じた学園長、そして主人公桐生月彦、全ての人が自分の本質を見失わず行動したからこそ、エイリスと日本の100年に渡る歪んだ歴史に風穴を開ける事が出来ました。

 雨宮誠二は決してエイリスの反日感情を無くしたい為に行動した訳ではありませんでした。勿論反日感情は無くなるに越したことはありません。ですがそこは雨宮誠二の本質ではありませんでした。雨宮冬莉と雨宮千春を自分の因果から解き放つこと、それが雨宮誠二の本質でした。途中までその本質を見失っておりました。ですが本質を自覚した時、自分の身柄がどうなってもいい事に気づきました。姑息な方法では冬莉を助けることは出来ない、そうであるのなら堂々と裁判に出て自分たちのやった事を白状するしかない、でも負けては意味がない、ならばこの国の真実を突きつけ自分たちの行動の正当性を訴えるしかない。この考えに全ての人が賛同したのです。利害が一致したと言えるかも知れません。エイリスを変えたい者、大切な人と一緒にいたい者、自分の想いを後世に伝えたい者、真実を知りたい者、時代も場所も立場も違う人達の想いが揃った時、ここまで大きな力が出せるんだなと感服しました。

 そしてこの作品では人との繋がりの大切さも訴えておりました。自分の好奇心が発端となり運命の歯車が変わってしまった雨宮誠二、ですがこの好奇心が無ければ雨宮智美と出会う事も雨宮冬莉・雨宮千春を生む事も出来ませんでした。そしてエイリスの孤児院、そこで出会った長門咲大とセレスト・ネザーブは唯の孤児ではなく雨宮誠二にとって大切な存在となりました。また直接の関わりはなくても自分を慕ってくれた大釜芸予、彼のおかげで冬莉と月彦は殺されることはありませんでした。何よりも長門正一の想いが80年もの月日を越えてようやく届いたのです。まるで見えない糸に引っ張られるように集まった人々。出会いは偶然かも知れません。ですがその偶然をその場限りで終わらせない気持ちがこの結末に繋がったのだと思います。

 エイリスの諺である「ALLiWs」には、そのような全ての意味が込められておりました。ALLiWsとはALL I WANTSの事。日本語では「私が望むすべて」という意味です。自分が望むものに全てを注ぎ込めばきっと叶う、それは本質を見失わない事と人との縁を大切にする事そのものでした。登場人物の望みはそのどれもが自分ひとりでは達成できないものでした。それでも諦める事なく勇気を持って前に進み続けた結果がこの結末に繋がったのだと思います。本当、副題の通り導かれるように集結しエイリスの歪んだ歴史に風穴を開けた彼ら。ですがそれはALLiWsを信じて行動し続けた結果の必然なのかも知れません。

 このALLiWsシリーズは本来は全3部構成の予定だったそうです。今回サークルさんの都合で全2部構成となりましたが、殆どの伏線が回収され登場人物の想いが成就されました。やや後半が駆け足だったかなという印象もありましたが、途中から明かされる伏線の数々とドラマティックな場面転換に圧倒され一気に最後までプレイしてしまいました。もっとこのALLiWsの世界に浸っていたい、彼らの後日談をずっと見続けていたい、そう思わせました。マスチャーの設定や大釜甲斐予のその後など気になる点もありますが、そこはある意味ALLiWsシリーズの本質ではないので想像に任せるとしましょう。「ALLiWs 1 奪われた未来へ」から数えて全部で13時間40分掛かりました。ですが個人的にはそれ以上このALLiWsの世界に触れている感覚でした。是非これからもこのように素敵な作品を読んでみたい、そう素直に思いました。ありがとうございました。


→Game Review
→Main