M.M 純情セックスフレンド




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 4 - 74 2〜3 2013/8/26
作品ページ(R-18注意) サークルページ(R-18注意)



<まるで心を雁字搦めにされるような文章で引き込む抜きゲー>

 この「純情セックスフレンド」という作品は同人サークル「夜のひつじ」で制作されたサウンドノベルです。夜のひつじというサークルについては前々から知ってはいましたが、私がこの「純情セックスフレンド」をプレイするきっかけになったのは「おすすめ同人紹介」というHPで行われた「同人ゲーム・オブ・ザ・イヤー2012(以下どげざ2012)」という企画でノミネートされていた事でした。前から「絡め取るような偏愛」で比較的話題になっていた作品でありましたが、どげざ2012での紹介を見て絶対プレイしようと思い今回のレビューに至りました。感想ですが、本当に心を雁字搦めにされるような心の動きを表現した傑作だと思いました。

 OHPを見ればわかりますが、この作品のジャンルは「逆レイプ浮気ADV」となっております。簡単に言えば主人公がヒロインに寝取られるという事であり、そんなインモラルな関係に溺れてしまう物語です。そしてヒロインは2人であり、そのうちの1人が主人公を寝取る存在でありもう1人は主人公の彼女であると同時に主人公を寝取られる存在であります。この対比はありそうでなかった構成であり、純粋に性欲と純愛のぶつかり合いのシナリオという事で主人公が最終的にどのような決断を下してどのようなEDになるのか楽しみでした。

 この作品はいわゆる「抜きゲー」と呼ばれるジャンルではありますが、一般的なHシーンでの視覚及び聴覚で訴えてくるようなHシーンではありません。上でも書きましたがこの作品は主人公がインモラルな関係に溺れる物語ですので、直接的なHシーンというよりもそれを含め前後の文章で抜かせてきます。弱みを握られた主人公、そしてその交換条件としてHを迫るヒロイン、そして関係を持ってしまい彼女を裏切っている後ろめたさを持ちながらも快楽に期待してしまう心の揺れ動き、これらの心理描写が大変リアルに書かれており主人公の気持ちに寄り添えば寄り添う程抜きゲーとして真価を発揮する事になると思いますね。

 ちなみに視覚及び聴覚に訴えてくるHシーンではないとは書きましたが、これは文章による引き込みの印象が強くて決して絵やボイスが悪いという意味ではありません。絵については商業作品の様な繊細な絵柄では決してありませんが、寧ろ荒削りだからこそ直接間脳に訴えてくるような絵柄ですので逆にこういう絵の方が好みの人もいるかも知れません。ボイスはその時その時のヒロインの心情をよく反映しておりますので、いわゆる喘ぎ声に期待せず普通のテキストの中でのボイスをイメージすれば調度良いと思います。

 という訳で一般的な抜きゲーには中々見られない文章で引き込むタイプの作品でした。私はサウンドノベルでは基本的にシナリオと音楽を重視して楽しんでいるのですが、そういう意味ではこの作品はシナリオ重視(と言いますかテキスト重視)の作品と呼べるのかも知れません。プレイ時間も私で2時間40分程度で終わりましたので忙しい方にもおススメです。良質な抜きゲーを求めている方や心を雁字搦めにされたい方にはなおの事オススメですね。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<登場人物全員の気持ちを満足させる方法、それがあの4Pでした>

 とにかく主人公を始めヒロインたちの心の動きが丁寧に描かれた作品でした。完全に心が壊れていてただ快楽を求めるように見えてましたがその実は自分と同質の性癖を持っている主人公を求めていた透、主人公の1番になれない悔しさを抱えていてその思いが行き過ぎてHする事すら主人公の心を振り向かせる道具と考えてしまった未弥、心を揺さぶられたのは主人公だけではなく実は全ての登場人物だったんですね。

 正直純愛ENDは一時の快楽に流されず自分の気持ちにけじめをつけた主人公とそんな主人公に自分の真実を語ってお互いを許そうとした未弥という余りにも正当なシナリオだっただけに、ドロドロな心の揺れ動きが無く逆に物足りな思ってしまいました。いや、いわゆる純愛ゲーだったらこのシナリオは間違いなく100点満点だと思いますしこういう真っ直ぐなシナリオが嫌いという訳ではありません。やはりこの純愛セックスフレンドの真骨頂は結実ENDだと思うのですよ。

 最後に未弥が何故援交オヤジとのHに臨んだのか。それは最後の4Pに全ての答えが集約されているように思えました。主人公が透とのHにどうしようもなくのめり込んでしまい、主人公はその罪悪感から未弥と別れようとします。ですが実は未弥はそんな主人公でも許してむしろ透以上に自分が主人公の一番になれればいいと思っていました。ですが意を決して主人公に迫ってもそれを拒否されてしまいます。それならば、自分も処女ではなくなって本当の意味で透と対等な立場になればいいのです。だから援交オヤジとのHなんて本当は望んでなかったわけですけど、そうしないと主人公を取り戻せなかったと考えた訳ですね。

 ですが既にその段階で主人公も未弥も汚れた身です。そんな2人が結ばれることはもちろん許されません。ならばどうするか、それがあの最後の4Pだった訳です。主人公にとって透は唯の性欲のはけ口であり、透と援交オヤジは気持ちよければそれでいい訳です。そして未弥もただ主人公と同じ立場になれればそれでよかった訳です。この瞬間、4人の利害が完全に一致してしまいました。傍から見れば異常な光景ですが、当人にしてみればあれが理想的な姿な訳ですね。いやいや末恐ろしいシナリオだと思いました。よくもまああんな結末を思い付くなぁと思いました。ですが元からどこかズレていた登場人物たちの気持ちを全て丸く収めるにはあれしかなかったんですね。末恐ろしいと思いつつ完全に納得している自分がいました。

 よくよく考えて見れば、なるほど実はあれこそが純愛なのかも知れませんね。確かに主人公と未弥は身体ではなく心でつながっております。どう考えても歪んでおりますがそれは第三者の視点であり本人たちが満足していればそれで十分です。なるほど確かに透とはセックスフレンドの関係であり未弥とは純情な関係です。純情セックスフレンドというタイトルも実は巧妙に隠されたこのシナリオのEDを予兆していた伏線だったのかも知れません。何れにしても一般的な抜きゲーには程遠い異端な作品である事は間違いなさそうです。ですがこういう生々しくリアルなシナリオはむしろ私が待ち焦がれたものですので出会えて感謝ですね。そんな作品でした。


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