M.M 悠久のダイアリー




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
4 8 - 71 〜1 2017/6/21
作品ページ サークルページ



<日記に書かれた思い出を懐かしみながら、主人公とリーヴァの日常を感じてみましょう。>

 この「悠久のダイアリー」という作品は、同人サークルである「Aerial Nauts(読み方はエアリアルノーツ)」で制作されたビジュアルノベルです。Aerial Nautsさんとの出会いはCOMITIA119で同人ゲームの島サークルを回っている時でした。COMITIAは元々同人ゲームの割合が少ない即売会で、COMITIA119でもおおよそ40前後のサークル数でした。その為COMITIAでは基本的にビジュアルノベルサークルは全て回っており、目に止まった作品は全て手に取らせて頂いております。今回レビューしている「悠久のダイアリー」もそんなCOMITIA119でのビジュアルノベルの1つです。シンプルなパッケージと想像力を掻き立てられるタイトル、何よりも「喪失系恋愛ADV」というジャンル名に惹かれてプレイさせて頂きました。

 主人公は喪失感を抱えておりました。ついこの前まで一緒にお話をし楽しい時間を過ごしてきた「彼女」が居なくなってしまったのです。残されたのは「彼女」と過ごした日々を記録した日記帳のみ。今日も主人公は「彼女」と過ごした日々を振り返ります。そして泣き崩れます。こんな生活、果たしていつまで続くのでしょうか。そこまでして主人公を離さない「彼女」とはどのような存在なのでしょうか。彼女の名前は「リーヴァ」。ですがこれは本当の名前ではないのです。そんなちょっと「変な子」であるリーヴァとの生活を、主人公と共に振り返りましょう。

 この作品は、主人公が一人で泣き続ける現代パートとリーヴァと共に過ごした過去パートを繰り返しながら展開していきます。そしてその中で主人公とリーヴァの馴れ初めが描かれ、同時に現代パートで置かれている主人公の状況も描かれます。物語が進んでいく中で徐々に事実関係が分かっていき、最後には哀愁と言いますかじんわりと心に残るものを感じる事が出来ると思います。非常に短い作品ですのでこれ以上はネタバレになります。あっという間に終わってしまいますが、その分一文一文をじっくりと読みシナリオを楽しんで頂ければと思います。

 一番のお気に入りはBGMです。上でも書きましたがこの作品は現代パートと過去パートを交互に繰り返します。そして現代の喪失感溢れる描写と過去のリーヴァと過ごす楽しい描写は、そのままBGMの違いとして明確に表現されております。現代パートでの哀愁漂うピアノ曲、過去パートの軽快でファンタジーの世界にいるようなオーケストラ曲、この使い分けが大変お気に入りです。特に過去パートで流れる曲はまるでドラゴンクエストの街を歩いているかのような雰囲気です。如何にリーヴァとの日常が楽しかったのかを感じる事が出来ます。勿論BGMはこの2曲のみではありません、シナリオが進んでいく中で更に哀愁漂う曲が現れてきます。

 プレイ時間は私で25分掛かりました。選択肢もなく、本当にあっという間に終わってしまうと思います。ちょっとした時間潰しに、コーヒーでも飲みながらサクッとプレイして頂ければいいと思います。本当、速読する必要は全くありませんね。BGMを聞きながら、オートプレイで読むのが調度良いです。私はCOMITIA119でパッケージ版を買いましたが、ふりーむ!でダウンロード出来ますので興味を持ったからは是非クリックしてみては如何でしょうか(ダウンロードページはこちらからどうぞ)。ダイアリーは日記の事です。日記を見返すとき、駆け足で読む事は無いと思います。日記に書かれた昔の思い出を懐かしみながら、日記に閉じ込められた悠久の時を感じてみて下さい。オススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。










































<信頼しているリーヴァが励ましてくれたから、愛理は行動してみようと思ったんですね。>

 「恋人が欲しい」「友達が欲しい」「話し相手が欲しい」、愛里が望んだものはそのどれもがありふれた物です。ですが皆さん気づいているでしょうか。その求めるものが少しずつ易しいものに変わっていってる事に。恋人になるにはお互いに尊敬し認め会う事が必要です。友達になるにはお互いの気が合う事が必要です。話し相手になるにはお互い顔を合わせるだけで大丈夫です。そんな話し相手であるリーヴァを見つける事が出来た愛里、次はリーヴァを卒業してこの世界にいる沢山の人と話し相手になる事ですね。

 イマジナリーフレンドというものは、割と幼少期には存在するものなのだそうです。おままごとやお人形遊びもまた現実ではない架空の存在を作り上げて遊ぶものですし、愛里の様にリーヴァという存在を作ってしまう事は決して珍しい事ではないのかも知れません。ですが、周りの人はそんな風に思ってはくれませんね。存在しないはずの人間と会話するのはおかしい・不気味・変、そう思うのが一般的かと思います。病気、と言われても仕方がありません。それでも本人にとってはイマジナリーフレンドこそが一番の友達です。愛里もまたリーヴァと離れ離れになる事など、望むはずがありませんでした。

 ですが、イマジナリーフレンドは自然と居なくなるのだそうです。それは本当に自然で、気がついたら居なくなるのだそうです。愛里も分かっておりました、自分が他の子とは少し違うという事に。愛里が自分の事を「変な子」と言ってリーヴァを生み出したのは、もしかしたら周りから変な子って言われてそれでも自分の事を肯定してくれる存在が欲しかったからなのかも知れません。アイデンティティーという言葉が出てきました。私は私である、その事を自覚するまで長い時間が掛かりました。

 母親から「愛里、誰とじゃべってるの?」と問いかけられ、リーヴァなんて子は居ない事に気づかされました。暫くはそのショックで引きこもり、泣き続ける日々でした。ですがそれも時間が経ち、ついにリーヴァから「もう会えない」と言われてしまいました。そしてこの時が愛里にとってリーヴァからの卒業の時、イマジナリーフレンドではなくリアルなフレンドを求めて旅立つ時でした。愛里が頑張れたのはリーヴァがいたからでした。信頼しているリーヴァが「大丈夫、愛里は強いから」と言ってくれたから、信じてみようと思いました。これで一件落着ですね。もう日記帳を読み返すことはありません。もしかしたらリーヴァの存在も自然と忘れてしまうのかも知れません。それでも、リーヴァがいたから今の愛里がいます。愛里が将来友達を作り恋人を作ったとき、きっと日記帳の中でリーヴァも笑っている事でしょう。ありがとうございました。


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