M.M 由るは未完の新たなページ




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
5 6 - 71 1〜2 2018/10/18
作品ページ(なし) サークルページ



<素直で頭が良いちょっと変わった主人公と、魅力的な双子のヒロインが送る王道な学園ものです。>

 この「由るは未完の新たなページ」という作品は同人サークルである「スクイズ工房」で制作されたビジュアルノベルです。スクイズ工房さんの作品をプレイしたのは今作が初めてで、C94にて同人ビジュアルノベルの島サークルを周っている時に手に取らせて頂きました。まず目を引いたのはパッケージに佇む双子の白髪の女の子の姿ですね。正直これだけで十分なインパクトでした。そしてそんな可愛い2人の女の子とラブコメ出来るみたいです。久しぶりに王道な学園ものをプレイできそうだとワクワクしてプレイ開始しました。

 主人公である黒野新夜には野望がありました。それはテストで学年1位を取って、学校推薦を取っていい大学に行って、そのままいい会社に入って、お金を稼ぎまくるという野望です。とても分かり易い野望ですね。ですが、そんな新夜の前にはいつも2人の壁が立ちふさがっておりました。それが双子の姉妹である白咲未玲衣と白咲由宇音の2人です。彼女たちはいつもテストで1位と2位を独占、お互いがお互いをライバル視しているだけで他は眼中にないという感じでした。この2人よりいい点数を取らないと新夜は野望を達成できません。そこで新夜が取った作戦は、この2人の女の子に勉強を教えてもらうという事でした。こんな感じで、非常に王道で分かり易く物語の幕は切って落とされました。

 この作品の魅力は主人公にあると思っております。この主人公、大変な直球で行動に裏表がありません。テストで1位を取るという純粋な目標の為に、恥も外聞も関係なく行動します。何しろ、テストで3位だから1位と2位の目の前で「僕に勉強を教えてください!!!!!」って土下座するんですからね。それでも、普段から勉強しているだけあって博識で教養があります。ヒロインと一緒にウィンドウショッピングを楽しむシーンがあるのですが、この時は好きな本を語り合ったりと知的な一面も見せてくれました。基本的に頭が良くて、それでいて素直な性格です。とても好感が持てると思いました。

 そして双子のヒロインは勿論この作品の主役です。この2人はいつも一緒に行動していて、とても仲良しです。ですが、そこに新夜が加わった事で少しずつ2人の性格の違いが見えてきてそれぞれが持ち合わせている魅力が見えてきます。始めは同じに見える2人ですが、あなたはどちらのヒロインに惹かれるでしょうか。それとも、どちらも選べないとなるかも知れませんね。普段は勉強が得意で高根の花に位置している2人の、ありのままの内面を探してみて下さい。

 その他の点としまして、BGMがクラシック風で独特の雰囲気を作っております。やはり登場人物皆が基本勉強が出来るという事で、優雅な雰囲気を演出しているのかも知れません。後は、立ち絵のパターンが多いと感じました。表情差分は勿論、ポージングも結構大振りです。それがコロコロと変化しますので、ヒロインの姿を印象付けてくれます。気になる点としましては、既読スキップが上手く機能していないみたいです。まだ読んでいないテキストでもスキップされてしまいましたので、繰り返しプレイされる際は注意ですね。まあ、この辺はティラノスクリプトらしさなのかも知れません。

 プレイ時間は私で1時間40分程度でした。この作品には選択肢があり、幾つかのエンディングが用意されております。基本的には、主人公の行動をプレイヤーが選ぶものです。つまり、どのヒロインを攻略するかという事ですね。まずは、何も考えないで思った通りに選んでみて下さい。そして2周3周して全てのルートを確認して頂ければと思います。割と共通ルートが多いので、全てのテキストを読むのはそこまで時間掛からない印象でした。パッケージのヒロインの姿を見て気になった方であれば是非満足いただけると思います。是非王道の学園ものを、清々しい主人公の姿に照らし合わせて楽しんでみて下さい。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<自分の目標を目指しながらも相手をリスペクトする事を忘れない。その気持ちにお互い惹かれ合ったんですね。>

 ネタバレ無しでも書きましたが、本当に主人公である新夜が良い性格していました。未玲衣と由宇音が「一見真面目なようでズレた人、普通なようで変な人」と言ってましたが、まさにこの言葉通りで新夜の素直さが滲み出ておりました。そしてそんな裏表がない新夜だからこそ、2人は惹かれたのだと思います。

 この3人の好きなところ、それはお互いがお互いに依存せずに高め合っている点でした。未玲衣と由宇音はお互いを尊敬し同時にライバルだと思っております。それは自身がクォーターの容姿を持っており且つ双子である事から小学校時代にからかわれる事が発端かも知れません。それでもそのままふさぎ込む事なく、その時であった小学校の先生に励まされる事で負けん気を持つ事が出来ました。そんな自分の恩師と呼べる存在になりたいと思うのはとても自然な事だと思います。小学校の先生になりたいという目標を小さい時から持ち、そこに向かって真っすぐ進んでいる姿が印象的でした。

 そして新夜もまた自分の目標に向かって真っすぐ向かう性格でした。基本的に無鉄砲でどこかズレた点があり、周囲にはどうじてもそれが目立っている印象です。ですが、根は大変真面目で恐らく学校中でも一番の家庭学習時間を誇っていると思います。そんな新夜ですら万年3位、そうであるのなら、1位と2位に勉強を訊くのは自然な流れだと思います。そしてここが新夜の凄いところだと思うのですが、単純に勉強を訊くのではなく自然体の2人を観察するという点に惹かれました。ちゃんと2人をリスペクトしつつ普段的な勉強の仕方を盗む、相手を尊敬し配慮している様子が伝わりました。勿論実際はライバル視している事も関係しているのだと思いますが、根本的に良い奴なんだなと思っております。

 そして、少しずつ3人の目標とするものが変化していきました。具体的には、今目の前にいる人と一緒に人生を歩みたいという目標が追加されたのです。未玲衣も由宇音も小学校の先生になりたいという目標が変わった訳ではありません。新夜もいい会社に入ってお金を稼ぎまくるという野望は変わっていないのでしょう。そこに「隣にいるだけではダメ、対等な立場でいられるように」という気持ちが追加されました。相手の将来の夢を応援すると同時に、自分自身も将来の夢を目指して頑張る、そのようにお互いを尊敬して高め合うからこそ、彼ら3人何だろうなと思いました。

 正直、ハーレムエンドはあるんだろうなと思いました。この真っ直ぐな主人公ですので、「どっちも好き!」とか言い出しかねないなと思いました。そしたら、本当にありましたからね。これもまた、新夜が持つ魅力のなせる技だと思いました。何と言いますか、世の中の常識とか世間体というものを気にするのが本当にバカバカしく思えてきます。元々クォーターで色目に晒されてきた2人だからこそ、自分の為に人生を歩もうという気持ちがあったのかも知れませんね。何れにしても、この3人であれば迷うことなく自分の人生を歩んでくれると信じております。

 久しぶりに、王道の学園ものをプレイする事が出来ました。勉強という物、将来という物、そういった普遍的な悩みにフォーカスを当てて、それをどうやって解決していくかというシナリオにリアルさを感じました。実際は、こんなに可愛くて頭が良くて胸が大きいヒロインなんていません。勉強を教えて欲しくて土下座する主人公もいないでしょう。ですけど、その辺りが学園ものらしさであり素直に楽しめました。彼らの姿勢は、間違いなく今を生きる私たちにとって励みになるものだと思っております。自分がなりたいものに向かって、多少変だと言われても真っ直ぐ進める信念の強さを持ちたいと、素直に思いました。ありがとうございました。


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