M.M 一人ぼっちの夜想曲




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
3 5 - 56 1〜2 2016/4/17
作品ページ(R-18注意) サークルページ



<純粋で真っ直ぐな気持ちは男も女も変わらないもの。そんな愛の大切さを感じることが出来ると思います。>

 この「一人ぼっちの夜想曲」は同人サークルである「えるりんご」で制作されたビジュアルノベルです。えるりんごさんの作品では過去に「夏の終わりの雨上がり」の方をプレイさせて頂き、ショタの魅力に詰まった純粋な物語だったと覚えております。水彩画のような絵柄で描かれた小学生が愛くるし表情で迫ってくるのです。私もこれまでショタに特化した作品をプレイした事が無かったのですが、この凛々しくも可愛い姿を愛でるのが私なりのショタの楽しみ方なのかなと思っております。今回プレイした「一人ぼっちの夜想曲」は小学生は登場しませんが、同様の柔らかいキャラクターは健在でありショタの魅力に詰まった内容でした。

 主人公である有栖川雄也は有栖川第一学園に通う三年生です。これまで恋愛というものを考えたこともなく、また異性にも関心がない普通のやんちゃな学生で学園生活を楽しんでおりました。そんな雄也が中庭を歩いているときにひょんな切っ掛けで出会ったのが、今後雄也の人生を大きく変える存在となる友達市ヶ谷夏向です。白い肌に線の細い体の夏向は自分とは違う雰囲気を持っており、何故か雄也はその事が気になって頭から離れませんでした。そしてその時夏向から借りた一冊の本、そこから2人の関係は深まっていき物語は動き出していきます。

 始めに断っておきますがこの作品はBLです。更に加えて対象年齢は18歳以上です。最終的にどのような結末になるかは皆さんの目で確かめて欲しいのですが、途中に男同士が絡み合うシーンがあるのは間違いないという事です。その為そういった事に嫌悪感を覚える方はプレイしない方が良いです。ですが個人的にこの作品をプレイして思ったのですが、ショタでありBLであり加えてHシーンもある作品というものは中々衝撃的と言いますか、言ってしまえばこれはこれで有りだなと思ってしまいました。いわゆるイケメンの細マッチョなキャラクターではないのです。主人公もヒーローもどちらもショタ。そのHシーンがとういうものなのか、これは是非実際に見てみて感じて欲しいと思いました。プレイする前と後でここまで印象が変わる作品も中々あるものではありません。ショタBLというものをプレイしていない方は、是非この作品で新しい世界を切り開いてみてください。

 プレイ時間ですが私で1時間程度掛かりました。この作品は攻略対象キャラが3人いるのですが、現在はメインである夏向のみ攻略出来ます。選択肢も幾つかありますが、どれもがTRUE ENDとその他のENDを振り分けるためのものであり他のキャラクターは攻略できません。基本的に一本道ですので考える事なくシナリオに集中できます。割とサクサク話が進んでいき、気が付けば2人が相思相愛になっていると思います。それでもBLという事で世の中の理解は中々得られず苦労する場面もあります。是非2人に降りかかる困難を見極め、自分だったらどうするかを考えながらプレイしてみて下さい。純粋で真っ直ぐな気持ちは男も女も変わらないもの。そんな愛の大切さを感じることが出来ると思います。


→Game Review
→Main


以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<孤独を知っていれば仮初めの関係なんて必要ない。それを知っていた2人だからこその結末でした。>

 最後までプレイして割とアブノーマルなシチュエーションもあって驚きました。初めて結ばれたのがまさか学校の中のしかも学園祭中で、雄也も夏向もどっちもメイド服姿ですからね!いや〜若いって羨ましいですね。この一直線な感じがまさにショタらしさだと思いました。

 実際のところこの作品を包んでいたのは雄也と夏向を取り巻く社会的な厳しい視線でした。雄也は始め有栖川第一学園で父親の庇護下のもと何不自由ない生活をしておりました。ですが実際は父親の権力に逆らえない一般の学生が恐れをなして雄也に接していただけであり、本当の意味で雄也に親友はいませんでした。気が付けば自分の知らないところで自分のせいで退学している、この事実はさぞ周りと雄也本人を震え上がらせたでしょうね。自分は何の為に学園に通っているのだろう。そう思っても仕方がないと思います。まさに一人ぼっちの学園生活でした。

 夏向もまた孤独を感じておりました。元から背が小さく色白で気弱にみえる外見です。その上で周りから無視されいじめられれば友達なんていらないと思うのも十分分かります。ボクに近づくと不幸になる。これは夏向が自分を守る為の精一杯の手段だったんですね。人と関わらないで一人孤独に生きる、大切なのは本だけ。こちらもまさに一人ぼっちの学園生活でした。

 そんな孤独を感じていた2人だったからでしょうか。自然と惹かれるようになっていきましたね。気が付けば本の貸し借りやメールのやり取り、そして告白ですからね。想いが溢れたらもう止まらない、そんな若さあふれる展開だと思いました。ですがここでもやはり社会的な厳しい視線に晒されました。何しろ2人は男同士です。世間的に見て男と男のカップルは非常にマイノリティです。そんなカップルがすぐそばにいれば、まだ大人になりきれていない学院生にとって面白みの対象でしかありませんでした。結果2人ともホモ野郎と虐められる事になり、引越しして転校して手に入れたい場所も無くなってしまいました。

 そしてED、2人は月島学院を離れて2人だけで生活する道を選びました。正確には夏向の兄と合わせて3人での生活ですが、もう2人に学院生活は帰ってきません。非常に勇気のある決断だったと思いますが、この決断が出来たのは2人とも孤独の気持ちを知っていたからだと思っております。「人間は誰だって孤独なんだ」「一人ぼっちのほうがいい」物語後半に雄也が思ったセリフです。かつて孤独だった雄也にとって、仮初めの友達よりも本当に愛しているたった一人のほうだ大切でした。これからも2人には社会からの厳しい視線が襲いかかると思います。大人になりお金を稼ぐ段階でどのような境遇になっているかは分かりません。それでも愛する人と永遠に一緒にいられるのならそれでいい。それも一つの答えなのかも知れませんね。ありがとうございました。


→Game Review
→Main