M.M Vary Sphere Volume1 -lost my memory-




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 7 5 75 1〜2 2019/7/5
作品ページ サークルページ



<スチームパンクとそれだけではない世界設定が、先の展開を楽しみにさせてくれました。>

 この「Vary Sphere Volume1 -lost my memory-(以下Vary Sphere Vol.1)」という作品は、同人サークルである「Project Freya」で制作されたビジュアルノベルです。Project Freyaさんの作品では、過去に「交錯エモーション」「マリオネットは箱庭で歌う」の方をプレイさせて頂きました。短いながらもまとまったシナリオとテーマが印象に残っており、丁寧に作品を作っているサークルさんというイメージを持っております。今回レビューしているVary Sphere Vol.1は、そんなProject Freyaさんが送る長編のスチームパンクとなっております。可愛らしい女の子のパッケージと詳細に練られた世界設定に、嫌が応にも期待感は高まりました。まずは雰囲気に慣れる事を目指してプレイし始めました。

 スチームパンクとは、蒸気機関の発明によって社会の仕組みが大きく変わったという転換点を取り入れた物語の事です。蒸気機関によって電気が大量に発電され、工業力が大きく前進しました。それは人々の生活感を大きく変える物であり、必然的に蒸気機関が生まれる前と後で軋轢が生まれてしまいます。そんな抗えない社会の変化とそれに付いていこうとする人々の姿の対比が、スチームパンクの醍醐味だと思っております。今作の舞台であるカルトスもまた、蒸気機関によって目覚ましい発展を遂げた街です。工場が立ち並び、物流は盛んになりました。ですがその代わりに空は灰色に染まり、何よりもカルトスは過去の大戦で多くの国を植民地にしてきました。そんなカルトスの光に対して、少しずつ闇が顔を出し始めるところから物語は始まります。

 主人公であるセレナ・オヴリヴィアは、カルトスにある街の1つマキナに住む女の子です。祖父は蒸気機関を発明したウォルト・オヴリヴィアであり、祖父の様な存在になりたいと思っておりました。セレナには友達がおります。名前はクロエ・セレスティカと言いまして、いつも2人仲良く教会での仕事に従事しております。クロエもまた、祖母の残したエネルギーについての研究を行う夢を持っておりました。2人とも可愛い少女でありながら将来の目標を持っている、思春期らしい女の子です。ある日、そんなマキナの街で奇妙な現象が始まります。それは人が突然眠りそのまま目を覚まさないという物です。クロエはとっさに昏睡者と口にしました。ですが、クロエはそんな言葉を勉強した記憶がありません。同時に、クロエは毎晩悪夢を見るようになります。いつもと違うマキナの街、流れ込んでくる誰かの記憶、そんな風景に戸惑います。そのようにして、光り輝く発展を遂げているカルトスの歯車は、少しずつ狂っていくのです。

 この作品の特徴は、丁寧なテキスト描写と詳細な世界観の設定だと思っております。テキストについては会話を中心に誰がどんな口調・性格なのか良く分かります。加えて群像劇の様相もあり、視点を変えるで様々な角度から人々の描写や街の様子を表現しております。視点が変わるタイミングもちゃんと明記しておりますので戸惑う事もないと思います。また背景やBGMはその多くがオリジナルです。カルトスという国の世界観、蒸気機関によって灰色になった空の様子などが良く伝わりました。また夢と現実の境界もBGMを中心にして雰囲気を作っており、そうした場面転換も印象的でした。

 プレイ時間は私で1時間15分でした。この作品はまだVol.1です。スタートという事でまずはカルトスの世界観の説明を丁寧にして頂き、加えて登場人物の紹介もして頂きました。そして、光輝く世界に少しずつ闇が顔を出していくシナリオも堪能させて頂きました。物語はまだ始まったばかりです。昏睡者は目を覚ましませんし、犯人の全貌も分かっておりません。何よりも、クロエが見る悪夢の正体も掴めていません。だからこそ、Vol.2に繋がる幕引きは上手いと思いました。ここから本格的にセレナとクロエの夢に向かう物語が動いていくはずです。まずは、Vol.1で世界観を感じて頂ければと思います。続きを楽しみにしております。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<スチームパンクは実質ファンタジーの様な物、ですが今作は本当のファンタジーでした。>

 ネタバレ無しでも書きましたが、世界観の説明が大変丁寧でした。始めに登場人物の紹介を行い、そこからアリア先生の授業という形でカルトスの構成を理解させるのが上手いと思いました。そしてセレナを中心として一日一日の動きを丁寧に描いており、そうした日常の中で出会う人たちの姿からより世界観を知る事が出来ました。

 スチームパンクはファンタジーではありませんが、現代社会に住む私たちにとっては十分ファンタジーなのではないかと思っております。勿論、蒸気機関の発明は史実であり現代社会も蒸気機関無くては成り立ちません。スチームパンクは決してファンタジーではありませんが、だからこそ蒸気機関が無い世界は中々想像しがたいものです。日本でも、新橋〜横浜間を陸蒸気が走った事で人々の時間に関する概念が変わったと物の本に書いております。技術の発展は、文明だけではなく文化や生活感も変えてしまうのです。もはや、それはファンタジーなのではないでしょうか。是非、蒸気機関のある無しでどこまで光と闇が生まれたのかを読んでみたいと思いました。

 ですが、この作品はどうやら本当にファンタジーの様です。何故なら、クロエが見た夢が唯の夢ではなさそうだからです。クロエが見続けている悪夢、それはここではないどこかのマキナの姿でした。そして、そこには死んだはずの母が居て、いない筈の兄が居ました。何よりも、そこにはクロエ・オルムステッドという名のもう一人のクロエが存在していたのです。スチームパンクだけではなく平行世界的な様相を見せ始めました。そして物語最後、夢だけだったと思っていた平行世界にセレナとクロエは立ち入る事になります。Vol.2ではどのような世界観を見せてくれるのか、本当に先が読めませんで。

 そして様々な伏線が散りばめられました。まずはクロエの夢の中で語り掛けてきた声の正体です。この声はクロエを夢の中に閉じ込め、二度と目を覚まさないように働きかけました。ですが、それはもう一人のクロエによって阻まれました。声の主の思惑は果たせなかったのです。そして、現実世界では昏睡させる薬を配る存在が登場しました。それでも、今回捕まったり殺されたりしたのはあくまで末端の存在です。真犯人は分かっておらず、また何故このような薬を生み出せるのかも分かっておりません。私は、どうもこの2人には繋がりがあるように思えるのです。そして、セレナもクロエも祖父や祖母との因果があって今の生活があります。セレナの祖父は蒸気機関を生み出しました、クロエの祖母が研究していたエネルギーについてはよく分かっておりません。これもまた、全てのはじまりに繋がる気がします。

 Vol.2では、セレナとクロエは平行世界を進んでいくのでしょうか。もしそうだとすれば、現実世界では暗躍するハウンスやシスカ中心の物語になるのでしょうか。それもまた、2つのシナリオが進む展開で楽しそうです。何れにしても、どこかで物語はぶつかると思っております。そのカギを握るのはクロエの研究なのでしょうね。クロエの祖母が研究していたエネルギーが解明された時、今度こそ豊かで幸せなセイラムになってくれればと思っております。続きを楽しみにしております。


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