M.M 鱗姫伝説




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
6 6 6 77 2〜3 2018/4/10
作品ページ(なし) サークルページ



<是非全てのエンディングを見て、郷土学サークルの魅力と鱗姫伝説の秘密を探ってみて下さい。>

 この「鱗姫伝説」という作品は、同人サークルである「Forest*Leaf」で制作されたビジュアルノベルです。Forest*Leafさんの作品をプレイした切っ掛けは、C90で同人ゲームの島サークルを周っている時でした。この時に手に取らせて頂いたのが今回レビューしている「鱗姫伝説」です。実は、C90が終わってから割と早い段階でプレイしようと思っておりました。ですが、当時の自分のPCと相性が良くなかったのかどうしてもCD-Rを読んでくれず、泣く泣く諦めてました。その後今のPCに切り替えて、そういえば前は読み込めなかったけど今回はどうだろうと試してみたら、ちゃんと読み込んでくれたんですね。約1年半越しのプレイという事で、ちょっと興奮して始めさせて頂きました。

 Forest*Leafさんの作品は、その全てが「郷土学サークルシリーズ」と呼ばれるシリーズ物となっております。主人公である「三石陣」は郷土学サークルと呼ばれるサークルに所属しております。名前の通り郷土学を扱っているサークルで、彼らが関わっていく出来事はそのどれもが不可思議で非科学的なものばかりです。そんなオカルトなものにサークル一同で挑んでいきます。メンバーは部長であり小さくて可愛らしいマスコット的な「森咲双葉」、双葉の自称双子の妹であり落ち着いた性格の「森咲若葉」、スポーツ万能でおっぱいが大きく中性的な雰囲気の「真城江蓮」、おっとりお嬢様で学園のアイドルとしても有名な「渚みるく」ととても個性的です。時にコミカルに、時にシリアスに、それでも本気で事件に向き合いその答えを探そうとする真剣なサークル活動を見る事が出来ます。

 そして今回の舞台は、「鱗姫」という都市伝説が残っている「鱗島」です。この島は昔から海神様との繋がりがとても強く、一度海神様が暴れれば津波や竜巻が島を襲い多くの人が亡くなるという歴史を歩んできました。そして、そんな海神様の怒りを鎮める為に離れ小島に祠を建てる事でそんな厳しい歴史も幕を下ろしたのです。ですが、そんな中で現れた鱗の肌を持つ少女の噂。これについて、島の人は多くを語ろうとしません。果たして鱗姫とはどのような存在なのでしょうか?そしてそんな鱗姫伝説に巻き込まれた郷土学サークルのメンバーは、無事に帰って来れるのでしょうか?

 この作品の魅力はとにかく個性的で可愛い郷土学サークルのメンバーですね。プレイヤーは選択肢を選びながら鱗姫伝説の真相に迫りつつ、特定のヒロインとのエンディングを目指します。ヒロインについては上でも書きましたが、4人とも属性が違っておりそれぞれ別々の可愛さを持っております。まずはあなたが一目惚れしたキャラクターから攻略するのが良いと思います。ですが、実際はそう簡単にエンディングを迎えさせてくれません。この作品、なんとエンディングが全部で17もあるのです。加えて殆どがバッドエンドとなっております。恐らく1周目で目的のヒロインとのトゥルーエンドにたどり着ける人は殆どいないと思います。是非選択肢を吟味しながら、何周もして全てのエンディングを埋めて欲しいですね。

 またシステム面でとても親切設計になっております。基本的なシステム変更は可能であり、動きもスムーズです。加えて、エンディングリストがあるのが嬉しいですね。上でも書きましたが、この作品は全部で17ものエンディングが存在します。是非全てのエンディングを埋めて欲しいのですが、その為にもエンディングリストが無いと中々全てのルートを見たのか不安になりますからね。特に、トゥルーエンドはエンディングリストでもそうである旨が書いてありますので安心です。他にもCGモードや音楽モード、ムービーモードも搭載されており十分に楽しめるコンテンツとなっております。

 プレイ時間は私で2時間50分掛かりました。物語のボリュームとしてはそれ程大きくはありません。やはり選択肢を行き来し何度もはじめからプレイした「攻略した感」が強いですね。それでも、ヒロインを攻略する事が必然的に物語を攻略する事にも繋がっておりますので、これは必要な選択肢とエンディングだったなと思っております。久しぶりに作品を隅から隅まで歩いたなという印象ですね。この作品はヒロインに声がありますし、スチルも定期的に登場しますのでそれもまたプレイヤーを盛り立ててくれます。最後のエンディングを見る頃には、あなたもすっかり郷土学サークルの虜になっていると思いますね。是非彼女らの魅力を感じて鱗姫伝説の秘密を解き明かしてみて下さい。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<登場人物全員が、しっかりと鱗姫伝説に向き合い納得のいく結末にたどり着く事が出来ました。>

 世の中に語り継がれている都市伝説や伝奇の類は、その殆どが当時明らかにされていなかった自然科学的事象の現れだと言われております。そして、それを都市伝説や伝奇にしてしまうのはそこに住む人間の心によるのです。鱗姫伝説もまたそうした人間の醜い心が作り出したものであり、これによって多くの悲劇が生まれてしまいました。最後の犠牲者である椿が成仏した事で、もう二度とこんな事が繰り返されない事を祈るばかりですね。

 ネタバレ無しでも書きましたが、この作品は1周目では必ずトゥルーエンドにたどり着けない仕様となっておりました。そしてそれは、この鱗島そのものが鱗姫伝説の呪いに支配された島でありそこに閉じ込められた人は永遠の生活を繰り返す定めだからでした。実は繰り返されている毎日、そしてそれを覚えていない郷土学サークルのメンバー、その殻を破る事が出来てからが本当のエンディングまでの道のりの始まりでした。時を遡らせるなんて、相当の恨みの強さだと思います。何しろ、流行り病だからという理由で理不尽に殺された人がきっと何百何千人もいる訳ですからね。そんな人の呪いが固められた祠のある島になんて、近づいてはいけません。

 そんな呪われた島でしたが、郷土学サークルのメンバーはちゃんと彼らの想いに寄り添ってました。決して、冷やかしだけで来た訳ではありませんでした。森咲双葉は感受性が強く、しっかりと椿の心に寄り添い同調しておりました。森咲若葉は自らが鱗病になってしまいましたが、その事実をしっかりと受け止め彼らと共になる事を選びました。真城江蓮は無数に鎮座する日本人形を見て怯えましたが、その意味をしっかり理解しようとしておりました。そして今回のメインヒロインとも言える渚みるくは、自身の経験から逃げずしっかりと鱗姫伝説の真実に迫りもう一度5人みんなで帰る道を模索し続けました。一度は失敗した彼らでしたが、その経験を次に活かして最後には幸せなエンディングにたどり着く事が出来ました。

 そして今作の裏のヒロインが女将さんである草間みどりでした。彼女もまた鱗病の当事者であり、愛する夫と生まれてくるはずだった娘の芽美を失っておりました。その失意があるにも関わらず、彼女はこの島から逃げませんでしたね。もしかしたらいるかも知れない娘の幻影を追いかけながら、来る日も来る日もよそからやって来る人たちを見守り時にアドバイスを与え続けました。罪悪感もあったのだと思います。自分がしっかりしていれば芽美は生まれていたはずだと思ったと思います。ですが芽美は決してお母さんを恨んでませんでしたね。むしろ、自分の為にこれ以上苦しんで欲しくないと思っておりました。最後、魂となった芽美と再会出来て本当に良かったと思っております。

 正直なところ後半はやや作業的になってしまった感はありました。それでも、それぞれのヒロインが本気でこの鱗姫伝説に挑んだことは間違いない事実です。それは、彼女たちの表情を見れば一目で分かりますね。この作品、スチルにおけるヒロインの魅力が本当に大きいです。特に涙を流している姿が印象に残りました。それは悔し涙、嬉し涙、恐怖に震える涙といった全ての涙共通でした。そんなヒロインを、時間を遡って助けた陣はこれからずっと彼女たちを大切にしなければいけませんね。都市伝説を追いかけるもの結構ですが、それも程ほどにしないといけませんね。いや、むしろ都市伝説を追いかける姿が魅力的なのかも知れませんね。そんな事を思いました。ありがとうございました。


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