M.M 罪ノ光ランデヴー




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 8 8 83 10〜12 2016/4/12
作品ページ(R-18注意) ブランドページ



<主人公やヒロイン達が抱えている罪、それがどのように受け止められ乗り越えられるのか見届けて欲しいですね。>

 この「罪ノ光ランデヴー」は「ef - a fairy tale of the two.」や「夏空のペルセウス」などで話題となった「minori」で制作されたビジュアルノベルです。minoriも定期的に作品を発表しており、その全てにおいて美しいビジュアルと綺麗なBGMが特徴です。そしてここ最近の作品はやや短めなシナリオの傾向であり、ヒロインは基本的に全員巨乳です。美しい世界観の中で巨乳のヒロインとのHシーンを期待しつつ短めにまとめあげられたシナリオを堪能する、この流れがここ最近のminoriに対する印象ですね。実際のところ私もこの独特の世界感がとてもお気に入りであり、minoriのタイトルは基本的に予約して買っております。今回レビューしている「罪ノ光ランデヴー」もまた、現在のminoriの作風を継承した雰囲気であり楽しませて頂きました。

 主人公である野々村優人が住んでいる珠里村はとても小さな村。自然豊かですが過疎が進み、優人達が通う学園は1学年1クラスしかありません。優人には両親がいません。その理由には一言では語れない辛い過去がセットでついてきます。過去に囚われ村から外に出ることが出来ない優人。そんな彼の趣味は絵を書く事でした。幼い時の辛い思い出の中で唯一記憶に残っている女の子の姿。彼女のことを空想しながら絵を書き続けているのです。今日も村の入口にあるトンネルの前で絵を書いていましたが、そんな彼の目の前に一人の女の子がやってきました。その姿は自分が空想していた少女の姿そのもの。彼女との出会いが再び優人の過去を思い出させ、そして向き合う切っ掛けとなります。

 最近のタイトルである「夏空のペルセウス」「12の月のイヴ」「ソレヨリノ前奏詩」に引き続き、今作も「心」をテーマにしたシナリオとなっております。タイトルにあります通り今作で語られるのは「罪」。人は罪を犯した時にどのように償えばいいのか。そもそも何を持って罪と認識するのか。実は相手は気にしておらず自分だけが勝手に罪と思っているだけなのではないのか。主人公が抱えている罪、そしてメインヒロインとなる3人の女の子が抱えている罪とは何か。是非皆さんも自分だったらどうするかを考えながら読んで欲しいですね。また今作の主人公は過去3作と違い特殊能力がありません。これまでの作品の主人公は人とは違う能力を持つが故に苦しむ、もしくは特定の出来事を切っ掛けに能力を持つという設定でした。今回はそれがなく、純粋に人と人との真っ直ぐな触れ合いがシナリオを動かしていきます。誰のどの言葉や行動がターニングポイントになるのか。それを想像しながら読むのも面白いかも知れません。

 そして最近のminoriと言えばおっぱいですね。これも「夏空のペルセウス」「12の月のイヴ」「ソレヨリノ前奏詩」と共通です。短めのシナリオの中に十二分なHシーンが用意されており、そのどれもにおっぱいが絡んできます。正直なところ、シナリオとか気にしないでもう可愛いヒロインのおっぱいを堪能するだけでも十分価値が有るのではないかと思っております。全シナリオクリア後に画像モード、BGMモード、Hシーン回想、ムービー回想が解禁されるのですが、何とHシーン回想だけはクリアしなくても見る事が出来るのです。もうminoriも完全にそういう需要を分かってますね。個人的にはシナリオの中に組み込まれているHシーンですのでクリア前に見てしまうのは勿体無いと思っておりますが、メーカー側が推奨しているのであれば気にする事なく堪能してしまいましょう。これもまさにminoriの魅力です。

 プレイ時間ですが私で11時間程度掛かりました。前半の共通部分で約2時間、その後3人のヒロイン個別シナリオでそれぞれ約3時間という感じです。背景の美しさに加えて多彩なモーションでヒロイン達が動きますので、テキスト量的には時間に対してやや少なめかも知れません。一般のフルプライスのビジュアルノベルに対して充分短いですので、いっその事表示速度を最速にしてオートモードで楽しむのもありかも知れません。流れるような背景とよく動くヒロインを見ながら、映画を観るように楽しむのも面白いと思います。minoriが描く心を題材としたシナリオ、そしておっぱいを中心とした渾身のHシーン。是非楽しんでいってください。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<弱さを曝け出せるのは強さだと思います。その強さとは相手を信頼しているという事。とても素敵な関係だと思いますね。>

 罪というものは自分が想像する以上に重く心にのしかかります。なぜならそれは自分ひとりでは解決する事が出来ないからです。罪を背負うという事は背負われる相手がいるという事。そしてその相手が許さない限り罪は消えないのです。罪は心の鎖でありとても頑丈なもの。優人と3人のヒロインはそれを解くために悩み苦しみ、ぶつかり合うことでようやく自分達が目指す光へとたどり着きました。

 作中でよく言われていた言葉に「罪や悲劇はその人の心に残り続ける」というものがありました。実際のところこれは真実だと思っております。人間嫌なことは二度と繰り返したくはありません。辛い経験もしたくありません。その為に一度受けたつらく苦しい記憶は忘れないように心に刻み込まれるのだと思います。例えば小中学校でいじめを受けた人は大人になってもその出来事を忘れる事はありません。薄まる事はあっても消えることはありません。それは心が追った傷だからです。その傷はどんなに時間が経っても消えないのでしょう。人生のあらゆる選択の中でその心の傷は影響し、ネガティブな選択をしてしまうかも知れません。では一度心の傷を受けた人はもう死ぬまでその呪縛から逃れられないのでしょうか。この作品ではそれに対する1つの答えとして愛を上げておりました。

 人間生きていれば絶対に罪を犯します。誰にも迷惑をかけずに生きる事など出来ないのです。ですがこれは逆に言えば人間生きていれば誰でも理不尽な出来事に遭遇するという事です。突然降りかかってきた不幸、その時あなたはその相手に対してどのように思うのでしょうか。程度にもよりますが、怒ることもあるでしょう。気にせずにその場で終わらせる事もあるでしょう。一生忘れない傷として残り続けることもあるでしょう。何が言いたいのかといいますと、全ての罪や悲劇は相手がいる事で成立するという事です。だからこそ、その罪や悲劇を解決するにも当然相手がいるという事。言ってしまえば、相手の愛によってようやく自分は救われるのです。口先だけの言葉では心の傷は消えません。本音でぶつかり合い、時に行動を起こす事で初めてその愛は伝わるのです。それが作中最後の言葉である「どんな些細な罪でも分かち合い、心から信じ合える仲になったとき、本当の愛を手に入れる。」の意味なのだと思いました。

 真澄あいは優人の気持ちを推し量り、罪でしか人と人は繋がれないと思い込んでおりました。そこに優人との語り合いはなく、全て自分1人で閉じられた考えでした。ですがそれば優人も同様でした。こちらもあいの気持ちを推し量り、こうすれば良いんだろうと思い込んで行動しておりました。どちらもお互いの罪を分かち合っていなかったのです。罪を分かちあわず表面上の付き合いで済まそうとし、結果プロローグの最後に別れを切り出すことになりました。だからこそ解決の方法は簡単でした。お互いの本音をぶつければ良かったのです。不安な気持ち、愛しい気持ち、それらを全て相手にぶつければ、後はなるようになりました。これこそが本当の愛。随分と遠回りとして、やっと2人は結ばれました。

 そしてそのような会話不足による誤解はこの作中の至る所で見受けられました。円来も父親も村の事を大切に思っておりました。ですがどこか遠慮して本音をぶつけられずにいました。お互いの本音が分かった時、それが物語の終わりの時でした。真澄も家族と恋人の狭間で揺れ動いておりました。どっちが正しいのだろうとずっと一人で悩んでおりました。結果は両方でした。家族としてそして恋人として2人だけの世界で過ごす、それが結末でした。後は優人の家族や村人たちとのわだかまりもありました。結果として父親は自殺し最悪の形で全員の心に刻み込まれました。人に本音を話すことは自分の全てを曝け出すこと。時としてそれは弱さの現れになるかも知れません。ですが弱さを曝け出せるのは強さだと思います。その強さとは相手を信頼しているという事。とても素敵な関係だと思いますね。

 振り返れば様々な要素が垣間見れた作品でした。家族の大切さ、田舎の村らしい閉鎖的な空気、それらもまた罪の鎖を強くも弱くもする要素でした。人との繋がりは目に見えないもの。そしてそれを確かめるのは怖い事。だからこそ周りに流され環境に甘えてしまいがちです。でも言うべきところで言わないのは何も解決になりません。優人と3人のヒロイン達、彼ら彼女らはそれが出来たのだと思っております。心に刻み込まれた傷を癒せるのは愛と信頼関係。私も日々の生活の中でどこまで相手を信頼できるのか、それを少し想像しながら生きてみようと思いました。ありがとうございました。


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