M.M Trif




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
4 7 7 63 2〜3 2013/5/24
作品ページ サークルページ(R-18注意)



<等身大の主人公が魅力のリアルなボーイミーツガール>

 この「Trif(読み方がトライフ)」という作品は同人サークル「とらいあんぐる!」で制作されたビジュアルノベルです。「とらいあんぐる!」さんに初めて出会ったのはC83で同人ゲームの島サークルを回っているときでして、その時の新作である「Triagain」が初めてプレイしたビジュアルノベルでした。その後他の即売会などでも何度もお会いする機会があり、その時に入手できたのがこの「Trif」です。「とらいあんぐる!」さん初のビジュアルノベルという事で是非プレイしてみようと思い今回のレビューとなった訳ですが、主人公の等身大のキャラクターが魅力的なボーイミーツガールという印象でした。

 OHPを見ると分かりますが、主人公がふとした切っ掛けで女の子と出会うところから物語が始まります。この作品には3人のヒロインがいますが、主人公と過去の面識はなく3人とも偶然の出会いで主人公と知り合う事となります。ビジュアルノベルではある意味王道の設定ではありますが、現実世界ではまずありえないシチュエーションです。ですがこの作品ではそんな現実世界ではありえない一期一会の機会を非常に大切にしており、ボーイミーツガールの醍醐味というものを再認識させてくれます。偶然である事を偶然であると認知する事、それが少なからずこの作品が唯の王道なビジュアルノベルと差別化を図っている点であると思いました。

 そしてこの作品の最大の魅力は主人公のキャラクターであると思いました。主人公はどこにでもいる普通の10代の若者です。この「どこにでもいる普通の」というフレーズ自体がもはやビジュアルノベル界ではネタになりつつあり、現実世界ではまずありえないコミニケーション能力を発揮できる人材であったりする事が殆どです。ですがこの作品の主人公は割と現実世界でありがちな「どこにでもいる普通の」主人公だったりします。女の子と対面しても何を言えばいいか分からず言葉が詰まり、後で家に帰ってからその事を後悔してふさぎ込むような主人公です。それでいて自分の気持ちに非常に素直であり、女の子と会話をしても常に押されっぱなしで中々自分のペースで会話を広げる事が出来ません。ビジュアルノベル界では逆に珍しいタイプの主人公であると思いますし、その等身大のキャラクターが魅力として発揮されているシナリオになっております。

 そんな等身大の主人公が偶然女の子と出会うところから物語は動き出します。時にはシナリオが進まず鈍くさい主人公だなと思うかも知れませんが、素直な主人公ですので遅くとも確実に物語は進んでいきます。まあ全体のプレイ時間は結構短く、私で大よそ2時間で終わりました。どこかこそばゆいような感覚で物語を読み進めていくといつの間にか終わっていたという印象になるかも知れません。そういう意味で何か短めの小説1冊を読む感覚でプレイして頂くのが一番いいと思います。ビジュアルノベルでありながら様々な部分にリアルを感じさせてくれる作品です。決して大作ではありませんが心の隅に印象に残る作品だと思いますので、手に取る機会がありましたら是非プレイしてみては如何でしょうか。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<偶然の切っ掛けで出会った2人が共に協力して前に進むためのプロローグでした>

 とても綺麗なシナリオだと思いました。将来に特に夢もビジョンもない主人公が女の子と出会う事で視野を広げる切っ掛けになり、最終的には主人公とヒロインで一歩前に進んでエンディングという流れでした。この物語は主人公とヒロインにとってはプロローグですね。ここから様々な葛藤や社会の荒波に揉まれる人生が待っているとは思いますが、偶然の切っ掛けで出会った2人がお互いを支え合いながら前に進む信頼関係を得る事が出来ましたので2人で協力しながら歩んでいけるのかなと思います。

 やはりこの作品の最大の魅力は主人公の等身大のキャラクターにあると思いました。素直な気持ちの持ち主であり他人を大切にしたい優しい気持ちを持っておりますのでヒロインが主人公に惚れる事は納得できると思います。ですが他人を大切にしたい優しい気持ちだけでは1人のヒロインを選ぶことは出来ません。不幸にも3人のヒロインが主人公に好意を持ってしまったので、主人公は誰かを傷つける事を選択せざるを得ない状況になってしまいました。それは優しい主人公にとっては身を割くような決断をする事だと思います。それでもお互いの関係を一歩前に進めるために、自分の気持ちに素直になる為にも主人公が葛藤し決断する事は必要でした。

 そしてそんな主人公の事を理解し歩み寄って一緒に歩いて行こうとするヒロインにも好感が持てました。どのヒロインも自分の気持ちを後回しにして他人の為に動いてくれる健気な子ばかりでしたからね。それでもあふれ出る本心を隠しきる事が出来ず、その本心すらも他のヒロインに悟られて最後には自分の気持ちに素直になるしかありませんでした。本当に不器用で真っ直ぐな主人公とヒロイン達ですね。プレイヤーにしてみたらこそばゆくて叫びたくなるようなシチュエーションばかりだったのではないかと思います。まあそれこそがこの「Trif」という作品の魅力だったのではないかと思っております。

 この作品は終わりましたが2人にとってはまだ始まったばかりです。偶然の出会いで知り合ってからようやく恋人として関係を進める事が出来ただけにすぎません。こんなにも不器用で素直なキャラクターなので時には相手の事を思うが故にすれ違い、そしてそのすれ違いがいつの間にか無くなってといった関係を繰り返していくのかなと思います。そして最終的には幸せな人生になる事を願ってやみませんね。そんな作品でした。


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