M.M Triagain




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
5 6 6 65 3〜5 2013/1/4
作品ページ(R-18注意) サークルページ(R-18注意)



<ヒロインの持ち味が生かされた起承転結のハッキリした作品>

 この「Triagain」という作品は同人サークル「とらいあんぐる!」で制作されたサウンドノベルです。C83で同人ゲームの島サークルを回っているときに偶然見つけたことが切っ掛けでして、線の細い顔立ちの整ったキャラクターの描写でまず目に留まりそれからあらすじを読んで読み応えのあるシナリオが待っていそうな予感を感じで興味を持ちました。雨の中1人佇む少女との出会いから物語は始まります。サウンドノベルの中では割とありがちな展開ですが、こういったあらすじはある意味王道ですのでそれだけで安定感を覚える事が出来ますね。

 OHPを見ると分かりますが、雨が降りしきる夜が印象的な作品です。この作品には3人のヒロインがいますが、それぞれのヒロインに悩みがあり最終的にそれを解決していくシナリオなのかなと思わせます。事実メインヒロインには帰る場所がないという設定です。そして唐突に主人公との同棲生活が始まります。そんな無理やりな生活が長く続くはずがありません。あらすじでは偽りの日常と称していますが、是非これからプレイされる方にはそういった日常の現実的な部分と非現実的な部分のターニングポイントを探して欲しいですね。

 そしてこの作品の登場人物ですが皆さん非常に素直なキャラクターばかりです。特にメインヒロインの深冬は天真爛漫なキャラクターで表情がコロコロと変わり、そのストレートな性格は主人公のみならずプレイヤーまでも明るくさせてくれます。ちなみにこのゲームは攻略可能なヒロイン3人の絡みが結構あります。3人別々の性格なのですが3人ともしっかりと自分らしさを主張しますので必然的に3人の持ち味が全面に出る会話になります。その部分も見るべきポイントですね。

 ですがあくまでこの作品の日常は偽りの日常です。3人のヒロインの素直な性格がそっくりそのまま最後まで継続するはずがありません。3人とも悩みを抱えておりそれが表に出る時、初めて物語が進むのかも知れません。そしてその悩みが解決するとき、偽りの日常は本物の日常になる訳ですね。ですが偽りの日常を本物の日常にするためには主人公の行動が大事になってきます。この作品は結構選択肢があるのですが、上手くやらないと結構簡単にバッドエンドに行ってしまいますのでその当たりは是非プレイヤーの努力で頑張ってほしいですね。

 あと特筆するべき点ですが、OPとEDに非常に力を入れてますね。OPもEDもボーカル曲があるのですが作曲者は何とあのBEMANI界で有名なTatshです。さらに言えばOPのアーティストは茶太です。まさかこんなところでTatsh×茶太のコラボレーションを見る事が出来るとは思ってもみませんでした。しっかりと物語のサポートをしてくれますね。後は上でも少し書きましたが、立ち絵の表情が思ったよりもコロコロ変化します。パターンの数が多くよりヒロインの魅力を引き立ててくれます。後は声もマッチしてて良かったですね。ヒロインの性格をそのまま投影したような声優さんの演技は間違いなくプラスポイントです。惜しむのはプレイ時間の短さですかね。私で約3時間かかりました。スキップ機能を使ってこの時間ですが使わなければ5時間程度だと思います。珍しく同人でありながらクオリティの高い作品でしたのでもっと長く触れたかったですね。いずれにしても良質なサウンドノベルですので手に取る機会がありましたらやってみては如何でしょうか。


→Game Review
→Main


以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<深冬が現実と向き合ったタイミングが偽りの日常の終焉でした>

 最後までプレイして思ったのですが、この作品にはファンタジー要素は1つもありませんでしたね。正直冒頭で雨に打たれ1人佇むヒロインをみて何等かの超常的な展開が待っているのかなと思ったのですがそんな事はありませんでした。久し振りに完全な現実世界のシナリオを読んだ気がしますね。

 やはりこの作品の最大の魅力はメインヒロインの深冬にあると思いますね。他のヒロインも魅力タップリなのですが、全ての始まりはやはり深冬と主人公が出会ったことが切っ掛けですし他の2人のシナリオでも深冬の関わりは非常に大事になってきてますからね。特に他のヒロインの為に自ら主人公の家を離れる場面は素直な深冬の性格を知っているからこそ一層心に響きますね。人によっては深冬本人のシナリオよりも他の2人のシナリオの中の深冬の方が魅力的に見えるかも知れません。

 というよりも、実質シナリオらしいシナリオは深冬ルートしかないと言われても過言ではないかも知れませんね。美羽ルートは深冬ルートの派生でしたし、静音ルートは深冬が家を離れて且つ深冬に助けられてから一気にEDまで行ってしまった印象がありますからね。やはり深冬との出会いが物語の起点ですので、深冬との交じり合いが無いと物語は本当の意味で終わってはくれないんですね。私にとっての偽りの日常と本当の日常のターニングポイントは、どのルートでも深冬が現実と向き合ったタイミングですね。

 あと欲を言えば深冬の過去の話や深冬と美羽の馴れ初めやいつの間に3人が仲良くなって夏祭りに行く事になったかなどについてもっと深く知りたかったですね。まあそこまで深く話さなくても深冬と主人公が納得していたようなので問題はないのですが、プレイ時間が本当に短かったのでそういったシーンがあっても全く問題がないと思いました。何が言いたいのかといいますと、もっとこの世界観に触れていたかったという事です。

 何れにしても本当に深冬の魅力を前面に出した作品だと思いました。ある意味ここまで素直で献身的な深冬を裏切る行為は全てバッドエンド扱いでも構わない位でした。まあ私が個人的に気に入っているという事ももちろん入っておりますが、客観的に見ても深冬への力の入れようは明らかだと思います。という訳で最初から最後まで深冬についてしか書いてないネタバレレビューでした。


→Game Review
→Main