M.M トラウマーメイド




シナリオ BGM 主題歌 総合 プレイ時間 公開年月日
7 8 - 79 2〜3 2020/5/13
作品ページ サークルページ
CHARONcream△
CHARON特典版

cream△特典版

体験版

CHARON_DL版

cream△_パッケージ版

cream△_DL版



<人物の魅力に溢れ、BGM・背景描写・演出にも拘り最高のトラウマな雰囲気を作り出しております。>

 この「トラウマーメイド」は同人ゲームサークルである「CHARON」と「cream△」の2サークル合同で制作されたビジュアルノベルです。CHARONさんの作品もcream△さんの作品も、過去に2作品ずつプレイさせて頂きました。どちらのサークルさんにも共通しているのですが、とにかく人物の描き方がとても美しいです。ここで言う美しいというのは、キャラクターも見た目もどちらも美しいという事です。CHARONさんの作品で過去にプレイしたのはどちらもファンタジー要素のもので、特に女性キャラクターの書き込みが丁寧でした。人物が物語を動かしている印象です。cream△さんの作品で過去にプレイしたのはどちらもサイコなもので、男性キャラクターが印象です。こちらは人物の本性を探る事が物語の本筋になります。どちらの作品も丁寧な人物の描き方が印象的で、そんな2つのサークルさんの合作という事でどのような登場人物が現れるのか楽しみにしておりました。また、トラウマーメイドはいわゆるC98でのエアコミケで頒布された作品です。C98の日程に合わせて通信販売を行っており、同人ビジュアルノベルを元気付ける意気込みを感じました。そんなサークルさんが描くトラウマとマーメイドの物語です。美しい世界が見れる事を楽しみにプレイし始めました。

 皆さんは、人魚姫という童話を読んだ事があるでしょうか?小さい時に絵本の読み聞かせなどで読んだ事があるかも知れませんし、そうでなくても何となくどんなお話なのか知っているのではないでしょうか。人間の王子様に恋をした人魚姫、ですが人間と人魚では種族が違いお互いで合う事が出来ません。それでも諦めきれない人魚姫は、奇跡を起こす事で王子様に会いに行きます。ですが、奇跡には必ず代償が付きものです。王子様に愛されないと泡となって消えてしまう運命の人魚姫ですが、その想いは成就されず最後には王子様の幸せを願って消えてしまいます。悲しくも人魚姫の優しさが光る美しい物語だと思います。ですが、もし人魚姫の願いを叶える事が出来たらどうでしょうか?人魚姫は本当に聖人君主のような存在なのでしょうか?もしかしたら、他人を蹴散らしてでも愛する人を手に入れたいと思っていたのではないでしょうか?この作品は、そんな人魚姫と王子様とお姫様になぞらえた物語となります。結末を決める事が出来るのは、プレイヤーであるあなた自身です。

 冒頭でも書きましたが、とにかく人物の描写が美しいです。特にメインヒロインであるヒナタとツバサは格別でした。ヒナタは青色の髪が美しい女の子であり、人魚姫のポジションにあたります。ツバサは高飛車な態度が印象的な女の子であり、お姫様のポジションにあたります。性格も見た目も全然違う2人が物語の中心であり、主人公を振り回していきます。純粋に可愛いですね。この作品は主人公以外フルボイスなのですが、声色も全然違いますのでとにかく差別化を図ろうとしている事が伝わりました。また、演出で登場人物達はちゃんとまばたきをして口パクもするのです。細部にまで拘っているなと思いました。もちろん、その他の登場人物も魅力的です。担任であるホノカは何故かチャイナ服を着ているセクシーな女性ですし、ツバサの屋敷で働いているメイドのエミルは完全無欠で頼れる存在です。友達であるユキマルは、見た目の爽やかさと言動の酷さのギャップが特徴ですね。そんな登場人物を見ているだけでも楽しい気持ちになれます。

 その他の特徴としてBGMが挙げられます。BGMは一部素材を使っておりますが、メインは真島こころ氏によるピアノのサウンドになります。この作品の舞台は海が美しい夏の田舎なのですが、そんな爽やかでどこか消えてしまいそうな情景をピアノで美しく色取ってくれております。透明感のあるサウンドが、空の青さと海の青さを伝えてくれました。そして、そんな爽やかな雰囲気とは別にトラウマ要素を演出するサウンドも拘っております。一言で言えば不気味、嫌悪感すら覚えるサウンドが場の雰囲気を彩っております。そして、BGMと合わせて背景描写も拘っております。基本的に全てオリジナルであり、舞台が唯一無二である事を教えてくれます。そしてトラウマ部分は特に力が入っており、効果音なども活用して劇的な場面転換を演出しております。サークルさんの本領発揮といった感じがしましたね。BGM・背景描写・演出、それら全ての要素を統合して作品の雰囲気を作っている作り込みはお見事でした。

 プレイ時間は私で2時間20分くらいでした。この作品は選択肢の数が非常に多く、またエンディングの数もかなりあります。これだけ聞くと難易度が高そうに思えますが、重要そうな選択肢はきっと一目で分かると思います。またいわゆるハッピーエンドとバッドエンドがあるのですが、バッドエンドも何となくこれ選んだら行くんだろうなと想像出来ると思います。この作品は、全てのバッドエンドにそのルートでしか見る事が出来ないスチルが用意されております。加えて割とどれも印象的なエンディングですので、是非スチル回収も含めて全て見て欲しいですね。そして、このトラウマーメイドというタイトルと人魚姫を題材とした作品の中で、どんなハッピーエンドが待っているのかも想像しながら進めて頂ければ楽しいと思います。私は両サークルさんの過去作を知っているのである程度心構えは出来ましたが、この作品が初めて触れる方であれば斜め上の結末になるじゃないかって思っております。いずれにしても、ビジュアルノベルの醍醐味が詰まった作品ですので様々な要素を楽しんでみて下さい。オススメです。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<確かにあなたたちはハッピーエンドかも知れないけど、自分はそうは思ってないからね。>


「めでたしめでたし」


 基本的に、どの童話も絵本も物語の最後はめでたしめでたしで終わります。このトラウマーメイドも、人魚姫を題材にしているという事でもちろんめでたしめでたしで終わってくれました。しかし、これ程恣意的で自分本位なめでたしめでたしも無いなと思いましたよ。改めて、ハッピーエンドとバッドエンドという物を考えさせられました。

 プレイしていてどこかでヤンデレ要素は登場するんだろうなとは思っておりましたが、それは唐突でした。それぞれのヒロインと仲良くなって、いよいよ結ばれるというタイミングでもう片方のヒロインが手を出し始めました。結局のところ、本当にヒナタが人魚姫でツバサがお姫様なのか良く分からなくなってしまいましたね。ヒナタ篇、エミルによるリーンカーネイションは唐突で、いきなりファンタジーになったなって思いました。ツバサ篇、これも最後再び物語開始時に戻ったと思ったら、兎雛町そのものが消えていたんですもの。明確にヒナタもツバサも物語上の人魚姫なのかお姫様なのかは明示しておりませんでした。でもまあ、今更そんな事を考えるのは意味が無いのかも知れません。何故なら、少なくともヒナタにとってもツバサにとってもめでたしめでたしな終わり方を達成出来たのですから。

 私、初めてハッピーエンドを迎えてどこかハッピーエンド何だろう?ってエンディングムービーを見ながら考えてしまいました。どう考えてもハッピーではないよなぁって思っておりました。ですが、エンディングムービーが終わって、後日談を読んで納得しました。確かに、ヒロイン本人にとってはハッピーエンドでした。ヒナタ篇では、生まれ変わったコタローとツバサで木漏れ日の中仲良く絵本を読む姿がまさにツバサが目指した姿でした。ツバサ篇では、自分の思い通りにならないものを全て津波で洗い流す事が出来てまさにヒナタが目指した姿でした。一番最後のスチルの、なんと幸せそうな事か。結局のところ、ハッピーエンドとは誰かにとってのハッピーエンドなんだなと改めて思いました。もしかしたら、それはプレイヤーでも主人公でもないのかも知れません。誰かがハッピーになれたら、まあ確かにハッピーエンドだよなぁと納得してしまいました。

 それにしても、ヒナタ篇でありながらハッピーになったのはツバサ、ツバサ篇なのにハッピーになったのはヒナタなのは面白かったですね。もしかしたら、この作品そのものがヒナタやツバサが神の視点で見ている物語なのかなと思いました。ヒナタ篇を俯瞰してみているのはヒナタであり、ツバサが幸せになった物語を読んでめでたしめでたしと言っているのかも知れません。同じように、ツバサ篇を俯瞰しているのはツバサであり、ヒナタが幸せになった物語を読んでめでたしめでたしと言っているのかも知れません。だとしたら、そうとう皮肉めいためでたしめでたしですね。ヒナタ篇、本当なら生まれ変わる事無く恋人同士で結ばれるのが本当の幸せです。ツバサ篇、町を全て破壊する事無く純粋に結ばれるのが本当の幸せです。何かを犠牲にして何とかつかみ取った幸せ、それを残念だねぇとあざ笑いながらめでたしめでたしと言っている様に思えてなりません。とりあえず幸せに慣れて良かったね、でも最高の幸せじゃなくて残念だったね。そんな事を思っていそうだなと思いました。

 この作品は、最初から最後まで童話だなと思いました。作中で童話を語りながらそれを童話として俯瞰してみている、そんなメタ要素も感じました。そして、それら全てを俯瞰してみているのは私達プレイヤーです。作中ではハッピーエンドとして定義しておりますけど、それをハッピーエンドと思うかどうかは実はプレイヤーに任せられているのかも知れませんね。あなた達はハッピーエンドかも知れないけど、自分はそうは思わないからね。そんな風に思っても良いと思います。いかにこのトラウマーメイドが定義しているハッピーエンドが歪んでいるのか、それを体感できればそれがこの作品の答えなのかも知れないと思いました。まあ何れにしても、CHARONさんとcream△さんという実力派のサークルさんのコラボを楽しませて頂きました。ビジュアルノベルとして普通に楽しかったですし、達成感もありました。後は、この作品が是非トラウマになるくらい印象に残る人が増えてくれれば良いですね。ありがとうございました。


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