M.M To Heart


<これぞギャルゲーの原点>

 おそらくギャルゲーという言葉を知っている方なら、間違いなく一度は聞いたことのあるタイトルだと思います。いわゆる「学園物」の基礎を作ったタイトルとして知られているこの「To Heart」、結果から言いますと、確かに今でも色褪せない魅力を感じました。

 正直言って、特別これが素晴らしいと言える物はありませんでした。シナリオは主人公とヒロインの恋愛を描く典型的な学園物ですし、登場するヒロインは多いですが、「世話好きな幼馴染」「おっとりとした先輩」「勝気なクラスメイト」「眼鏡の委員長」「物静かな後輩」と、まさに典型的なヒロインばかりです。それでも今になってもこの作品が評価されている理由としては、そういった典型的なスタンスを最初から最後まで書き上げたことにあると思います。

 ヒロインを区別する方法として、容姿、声、性格などがあると思います。そして、容姿や声こそはシナリオを進めていっても基本的に変化する物ではありませんが、性格はシナリオ展開によって明るくなったり暗くなったりと、様々な姿を見せる場合が多いです。しかし、この「To Heart」というゲーム、ヒロインの性格が本当に最後まで変化せずに進んでいくのです。これは、ヒロインを区別するという意味では非常に大きい物があります。

 そして、その「ヒロインを区別する」という事が本当の意味を持つのがこの「To Heart」というゲームです。その理由は、このゲームのシナリオが「典型的な学園物」だからです。学園物の基本的なシナリオの流れとして、「主人公とヒロインが出会う」→「友情を深める」→「愛情に変わる」というものがあると思いますが、この「To Heart」はこの要素のみのシナリオとなっています。そして、この基本的な要素において最も重要なところは、多種多様な性格のヒロインと恋愛が出来るという点だと思います。そういった意味で、様々なヒロインが居てその性格が最初から最後まで一貫しているということは、基本的な学園物として最も重要視される事だと思います。

 そして、「Leaf」はこのスタンスを確立し、1997年という時代で世に送り出しました。今までに前例も無く、大衆が何を求めているのかという事も分からなかった時代に、これをリリース出来たという事は本当に素晴らしいと思います。まさに「ギャルゲーの原点」と呼ぶに相応しいと思います。純粋な恋愛シュミレーションをやりたい方は、是非やってみては如何でしょうか。ただし、いかんせん1997年に発売されたゲームですので、正直言ってグラフィックはかなり荒いです。もし「To Heart」をやるのであれば、PS版かPC逆輸入版をプレイする事を強くオススメします。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<ヒロインの比重の重さ>

 私がこの「To Heart」というシナリオでちょっと気になった点は、各ヒロインごとのシナリオの差、具体的に言うと「神岸あかり」とその他のヒロインとの差についてです。プレイする前からなんとなく「神岸あかり」というヒロインがメインになるような印象がありまして、実際シナリオの流れを見ても明らかに「神岸あかり」のイベントが多いです。そして、「神岸あかり」シナリオではしっかりと主人公に「好き」という気持ちを理解させるイベントが用意されており、そのイベントは他のヒロインからの質問にしっかりと自分の意思を伝えるという意味のある物でした。

 しかし、その他のヒロインのシナリオはそのヒロインのルートに入るともはや「神岸あかり」は全く関わらなくなり、完全にそのヒロインとの独立したシナリオとなってます。私の中では、どうしてもこのヒロインの差が気になってしまいました。プレイしてみて明らかな通り、「藤田浩之」と「神岸あかり」はずっと一緒に居た幼馴染であり、主人公が「神岸あかり」以外のヒロインと恋愛をするという時に「神岸あかり」は必要不可欠な物のはずです。しかし、そういった演出は全く無く、明らかに積み重ねた時間に差のある恋愛のエンディングになってしまいました。

 これはもしかしたら、「Leaf」が「神岸あかり」シナリオに意図的に比重を置いたのかもしれませんし、その差を見せる為にわざとその他のヒロインのシナリオをあっさりとした物にしたのかもしれません。しかし、そうはいってもやはり他のヒロインとのシナリオの中に、「神岸あかり」という要素を付け加えてもらいたかったです。

 ちなみに、その他のヒロインの中でも明らかに差があるとしか言えないような物もありました。それは、ヒロインが主人公を好きになる理由が分からない物から学園時代を卒業して何年か経った後日談的なエンディングのものまで様々でしたが、その中でもやはり「神岸あかり」は別格だと思います。主人公「藤田浩之」にとって、やはり選ぶべきヒロインは「神岸あかり」であると思って疑いません。。


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