M.M Thread Colors〜さよならの向こう側〜


<テーマ性が軽く感じられてしまった>

 この「Thread Colors〜さよならの向こう側〜」というゲーム、おそらく初めて名前を聞く方が多いと思います。まあ、ハードがPS2であり、ブランドが「SIMPLE1000シリーズ」で有名な「D3 PUBLISHER」で、ほとんどギャルゲーには関わっていない企業ですから、知らないのは当然といえば当然かもしれません。実際私がこのゲームをプレイしたきっかけは、とあるゲーム専門店でたまたま目にしたのがきっかけで、原画さんが「風上旬」だったからです。実際プレイしてみて、まあ普通に良作といった感じでした。

 まず評価出来る点としては、演出の良さです。画面効果やグラフィックの移動などはスムーズで、このゲームの世界観を良く理解する事が出来ました。そして、背景などがしっかりと描かれていましたので、それもこのゲームの世界観を掴む一役を担っていたと思います。他にも、日付が変わるごとに表示される月日の表示の演出など、ゲームの面白さを引き立たせる演出が多くありました。

 そしてシナリオですが、もともとこのゲームのコンセプトとして「ちょっと悲しい、秋の物語」というものがあります。そして、プロローグは主人公が病院で目を覚ますところから始まります。この辺から勘の良い方は分かるかと思いますが、シナリオは決して明るい物ではなく、むしろ弱冠鬱になるかもしれない物になっています。しかし、そういった鬱の要素がシナリオの内容であるだけに、この作品が伝えたいテーマという物も同時に存在します。このゲームの良いところは、その伝えたいテーマという物がストレートに伝わってくるという所にあります。一人一人のシナリオを終えるたびに、このゲームが言わんとしている事がはっきりと分かるからです。この分かりやすさはシナリオの良い点だと思います。

 ただ、そんな分かりやすいシナリオだということは、ある意味ではマイナスに働いてしまったという事もあります。このゲーム、演出はあくまでゲームの雰囲気を良くするためのものであって、シナリオの雰囲気を良くするための物ではありませんでした。そのため、シナリオの雰囲気を伝えるものはまさに文章しかありません。そして、この文章が本当にストレートに内容を記述するものであって、その奥に潜むテーマを軽く見がちになってしまうのです。一般に名作とされるものは、文章から繰り出される美しさによって感動やテーマ性がより深く伝わってくるものです。このゲームは、そういった文章の持つ美しさが足りない気がしましたそこがもったいない点だと思います。

 とはいえ、内容は普通に良かったのでプレイしても良いかと思います。時間とお金に余裕のある方、もしくは「風上旬」が好きな方はやってみては如何でしょうか。


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以下はネタバレです。見たくない方は避難して下さい。








































<あくまで事実としての死>

 このゲーム、殆どのシナリオで「死」というものがちらついています。各キャラごとに設定が大幅に変わりますが、そこの点に限っては一致しています。しかし、ゲームの雰囲気のせいかどうも「死」というものが簡単に感じられてしまいました。

 その理由として第一に、各シナリオのテーマは「家族の絆」だったり「恋愛」だったりしますが、それを表現するすべとして選んだ「死」というシナリオにおいて、「死」を軽く捕らえてしまったからだと思います。テーマを表現するために「死」を選んだということは良いのですが、扱うものは「死」である以上これを軽んじてしまってはシナリオが薄いものだと思われるのは仕方のない事だと思います。そのため、どうもシナリオが軽い印象しか残らず、それに伴って各シナリオのテーマという物もいまいち軽く感じられてしまいました。

 そしてそのシナリオの内容ですが、かなり唐突な感じが多々しました。たとえば、「つばさシナリオ」ではシナリオ全体が試練だったとか、「美桜シナリオ」では真実が分かってからいきなりエンディングになったりとか、「カリスシナリオ」では自分の死を認知してからいきなりエンディングに向かったりとか、明らかに描写不足だと思われる部分が多々ありました。こういった部分をもっと深く展開していけばより良い作品になったと思います。そしてこの部分こそが、私が「死」を軽く見ていると言う原因だと思います。

 まあ、それぞれのエピソードはそれなりに興味深いものでしたし、なかなか楽しめましたからそれはそれで良かったと思います。そして、このゲームはおまけが本当に充実していました。おまけと言っても一筋縄では全てのおまけ要素は見る事が出来ず、最後の「みじゅぎ」にたどり着くまでかなり苦労した感じがします。もしかしたら、このゲームの本当のテーマは、あくまでキャラクターを好きになれるか否かという事かもしれませんね。


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